C05犬種・猫種別ケア
ワイマラナーはなぜかゆがるしぐさが起きやすいのか。短毛から考える
夜、ソファに座っていると、足元のワイマラナーが後ろ足で首の横をかく音が鳴りました。とん、とん、とん、と3回。それから体を伸ばして、また目を閉じます。この音を今週だけで何度聞いたかを思い出そうとして、答えられませんでした。ワイマラナーのかゆみは、そのほとんどが飼い主の目の前で起きています。この犬種は人が部屋を移ると必ずついてくるので、その子が体をかく場面を、飼い主はたいてい実際に見ています。見落としようがないはずです。それなのに、いつから増えたのかは答えられない。かゆみの話でいちばん近い場所にいるはずの人が、いちばん基準を持てなくなる。この記事は、そういう距離の話です。
足元で鳴る音を、いつからか答えられない|ワイマラナーのかゆみで見落とされる変化
テレビを見ているときは、ソファの足元で鳴ります。台所に立てば、足元の床で鳴ります。洗面所でも、玄関でも、同じ音がします。後ろ足の爪が首の横に当たる、あの短い音です。ワイマラナーと暮らしていると、この音はほとんど生活音のひとつになります。鳴った瞬間には、ちゃんと目を向けています。かいている場所も見ています。そして数秒後には、また画面のほうへ視線を戻しています。
問題は、そのあとです。「先月と比べて、かく回数は増えましたか」と聞かれて、答えられる人はほとんどいません。見ていなかったからではありません。見すぎていたからです。1回ずつは確かに視界に入っているのに、1回ずつが記憶に残らない。ワイマラナーのかゆみは、見つけるのが難しい変化ではなく、すでに全部見ているのに輪郭が出てこない変化です。
実際に目の前で起きているのは、次のようなしぐさです。どれも一瞬で終わるので、そのつど記憶に残す必要を感じません。けれど、並べて書き出してみると、1日のうちに何度も繰り返されていることに気づきます。
- 後ろ足で首の横や耳のうしろをかく:音が出るので、いちばん気づきやすい形です
- 口で前脚の先をかじる、あるいは長く舐める:音が出ないので、見ていても素通りしがちです
- 床やソファの角に、あごや脇腹をこすりつける:遊んでいるように見えることがあります
- 寝ている途中で急に体を起こし、一か所だけかいてまた伏せる:夜のあいだに何度も起きています
- 体をぶるぶると震わせる回数が増える:濡れていないのに震わせるときは、かゆみの側の合図であることがあります
- なでている手を、特定の場所へ持っていこうとする:その子の側から場所を教えていることがあります
ここに挙げた6つのうち、音が出るのは1つだけです。残りの5つは静かに起きます。ワイマラナーは人のすぐそばにいる犬なので、静かなしぐさも視界の中で起きています。それでも「見た」という記録が頭に残らないのは、視界に入ることと、注意を向けることが別の動きだからです。かゆみの話をするときに、この2つを混ぜないでください。
ワイマラナーと暮らしていると、その子の1日をほとんど全部見ています。だからこそ、「毎日見ているから、変わったらすぐ分かるはず」と考えてしまいます。ところが、あとから思い出せるのは印象の強い1回だけで、数のほうは残りません。かゆみのように毎日少しずつ動くものは、見ている量ではなく、書き残したかどうかで差がつきます。
部屋を移るたびに、同じ床にいる|犬としてのワイマラナーの背景と、かゆみが見える距離
ワイマラナーは、ドイツで大型の獣を追うために作られた猟犬です。人と一緒に一日じゅう森を歩き、離れずに動くことが仕事の一部でした。人のそばにいる時間の長さが、そのままこの犬種の背景になっています。いまは森を歩かなくても、その性質は残ります。家の中で人が立ち上がれば立ち上がり、部屋を移れば一緒に移ります。飼い主とその子の距離が、1日を通してほとんど開きません。
被毛の作りも、この話に効いてきます。ワイマラナーの毛は短く、体にぴたりと寝ていて、下毛のない1層です。長毛の犬種なら、かくしぐさは毛の動きに紛れます。下毛のある犬種なら、地肌は毛の内側に隠れています。ワイマラナーは、体の輪郭も、地肌の色も、そのまま外から見えます。だから、かいている場所まで正確に見えます。
| 条件 | ワイマラナーの場合 | その結果 |
|---|---|---|
| 人との距離 | 部屋を移るたびについてくるので、数メートル以上は開きにくい | しぐさが起きた瞬間に、視界へ入る |
| 被毛の長さ | 短く、体に寝ている | かく動きが毛に隠れない |
| 被毛の層 | 下毛のない1層 | 地肌までの距離が短く、皮膚の側も見える |
| 体格 | 体高があり、伏せていても目線の高さに背中が来る | 座ったまま様子が分かる |
| 起きる時間帯 | 人が家にいる時間と大きく重なる | 留守中のぶんだけが、記録から抜ける |
| 音 | 後ろ足のかき方だけ音が出る | 音の出ないしぐさが、数から抜け落ちる |
この表の意味は、ひとつです。ワイマラナーのかゆみについて、飼い主はすでに大量の目撃をしています。他の犬種なら「気づかないうちに進んでいた」という言い方が成り立つ場面でも、この犬種では成り立ちません。見ていなかった時間が、そもそも少ないからです。
ところが、目撃の量が多いことは、判断の材料が多いことと同じではありません。むしろ逆に働くことがあります。同じ場面を1日に何度も見ていると、その場面は「起きたこと」ではなく「いつもの背景」になります。ワイマラナーのかゆみが見落とされるのは、距離が遠いからではなく、近すぎて背景に溶けるからです。ここが、この犬種でいちばん押さえておきたいところだと考えています。
もうひとつ、背景として書いておきたいことがあります。ワイマラナーは人のそばで過ごすので、人が使っている部屋の条件が、その子の皮膚の条件とほとんど同じになります。暖房を入れれば同じ空気を吸い、湿度が下がれば同じ乾いた空気の中にいます。人が「今日は乾いているな」と感じた日は、その子の地肌でも同じことが起きています。かゆみの背景を探すとき、外の環境より先に、いま自分がいる部屋を見てください。
見た回数が多いほど、増えたかどうかが分からなくなる|ワイマラナーのかゆみと飼い主の経験
月に1回しか起きないことが3回に増えたら、たいていの人は気づきます。もとが1回なので、2回増えただけで景色が変わるからです。ところが、1日に20回起きていることが25回に増えても、まず気づけません。1回あたりの重みが小さすぎて、5回の差が印象に残らないからです。ワイマラナーのかゆみが置かれているのは、後者の側です。
ここに、暮らしの経験が重なります。ワイマラナーと半年、1年と暮らすうちに、飼い主の中には「この子はこのくらいかく子だ」という基準ができます。その基準そのものが、少しずつ上へずれていきます。先月より少し多い日は「そういう日もある」で流れ、その少し多い日が新しい基準になる。半年たって振り返ったときには、最初の状態がもう思い出せません。経験は役に立つ場面が多いのですが、数を比べる場面では働きません。
| 何が変わったか | 気づけるか | 理由 |
|---|---|---|
| 月に1回が3回になった | 気づける | もとの回数が少なく、比が大きい |
| 1日20回が25回になった | 気づきにくい | もとの回数が多く、1回ずつの重みが小さい |
| かく場所が首から腰へ移った | 気づける | 数ではなく、位置が変わっている |
| かく時間帯が夜だけに寄った | 気づける | 数ではなく、いつかが変わっている |
| 1回あたりが3秒から10秒に伸びた | 気づきにくい | 秒を測っていないと比べられない |
| かいたあとに地肌が赤く残るようになった | 気づける | 数ではなく、あとに残るものが変わっている |
この表には、はっきりした傾向があります。気づけるのは、数以外が変わったときです。場所が移った、時間帯が寄った、あとに残るものが増えた。どれも回数ではありません。逆に、気づきにくいのは全部が数の話です。ワイマラナーのかゆみで飼い主が置かれている状況を考えると、数を追いかける記録のしかたは、最初から相性が悪いということになります。
念のために書いておきますが、見慣れること自体は悪いことではありません。毎日その子の様子を見ているから、歩き方が違う日や、ごはんの食べ方がいつもと違う日には気づけます。見慣れが弱いのは、少しずつ増えるものに対してだけです。かゆみは、まさにその形で動きます。だから、見慣れを疑うのではなく、見慣れの外側に置ける材料を1つだけ用意する、という考え方になります。
家族の誰かに「最近かゆがってない?」と聞かれて、「いつものことだよ」と答えた場面を思い出してください。その一言は、比べた結果ではなく、比べずに済ませた結果であることが多いはずです。ワイマラナーは目の前にいるので、確かめようと思えばその場で確かめられます。いつものこと、で片づけそうになった日は、かいた場所だけでもメモに残してください。
数えるのをやめて、場所と時刻だけを書く|ワイマラナーのかゆみとの向き合い方の考え方
ここからは、毎日どうするかの話です。結論から書くと、回数を数えるのはやめてください。ワイマラナーのかゆみは1日に何度も起きるので、正確に数えようとすると3日で続かなくなります。続かない記録は、記録がないのと同じです。代わりに、数以外のものを書きます。前の章で見たとおり、気づけるのは数以外が変わったときでした。だったら、最初から数以外を書けばいい、という順番です。
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その日いちばん多くかいた場所を、1つだけ書く
首の横、耳のうしろ、脇、腰、前脚の先、しっぽの付け根。1日1行、場所の名前だけで足ります。正確でなくて構いません。同じ場所が1週間続くのか、日によって移るのかが分かれば、それだけで比べる材料になります。数を数えるより、はるかに続きます。
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時刻は、朝・日中・夜・寝ているあいだの4つに丸める
分単位では書きません。夜だけに寄っているのか、1日じゅう散らばっているのかが分かれば十分です。ワイマラナーは人と同じ部屋にいるので、夜に寄っているなら、その時間の部屋の条件(暖房、湿度、寝床の素材)を先に見られます。
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週に1回、同じ場所を同じ明るさで写真に撮る
短く、下毛のない被毛なので、地肌の色や毛の流れが写真によく写ります。撮る場所は、前の週に書いた場所にしてください。毎週撮っていれば、記憶に頼らずに先週と比べられます。撮った日付が残るのも利点です。
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手のひらを当てたときの手ざわりを、ひとことで書く
さらさら、少し引っかかる、粉っぽい、脂っぽい。この4つのどれかで構いません。被毛の状態とうるおいの目安が、指先から返ってきます。かく回数が同じでも、手ざわりが先に変わっていることがあります。
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書いたものを、2週間分だけ見返す
1か月も遡る必要はありません。2週間で、場所が移ったか、時間帯が寄ったか、手ざわりが変わったかを見ます。この3つのどれかが動いていたら、経験や印象ではなく、書いたものが根拠になります。動物病院に相談するときも、そのまま持っていけます。
この5つに共通しているのは、どれも増減を書いていないということです。場所は移動、時刻は分布、写真は見た目、手ざわりは質。全部、数以外のものを見ています。ワイマラナーのように目撃の量が多い犬種では、この形のほうが結果として正確になります。数えられないものを数えようとして、続かないまま何も残らないより、ずっといい。
毎日のケアの側で動かせる条件にも触れておきます。まず、洗う回数を上げないでください。かゆがっているとつい洗いたくなりますが、ワイマラナーの被毛は短く1層なので、洗いすぎると地肌のうるおいのほうが先に減ります。次に、短毛でもブラッシングには意味があります。抜けた毛を外へ出すことに加えて、皮脂を毛の全体へ広げる役割があるからです。獣毛やラバーの柔らかいブラシで、毛の流れに沿って軽く。最後に、湿度です。人が乾燥を感じる部屋は、その子にとっても同じ条件です。
暖房の効いた部屋で、人が「今日は乾いているな」と感じた日。同じ空気の中にいるその子は、地肌が乾いていることを自分から言えません。ワイマラナーは下毛のない1層なので、部屋の空気と地肌のあいだに、はさまるものがほとんどありません。置くものは、そこに残る時間で選べます。mofuwa スキンケアミストは、一般的な化粧水が約2分とされるのに対して、40分間うるおいが続いたという結果が出ています(調査機関:株式会社きれいテストラボ)。使うのは、週に1回の写真を撮る日なら、撮る前ではなく撮ったあとにしてください。濡れた地肌は色が変わって見えるので、先に使うと、先週の1枚と比べられなくなります。布に含ませて、背中と脇を毛の流れに沿ってなでる。かいて赤くなっている場所には直接あてず、そこは触らずに残します。
かいたあとに地肌が赤く残る、じくじくしている、においが出てきた、同じ場所を舐め続けて毛が薄くなってきた、夜に何度も起きてかく、触ると痛がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、記録を2週間ためる前に動物病院にご相談ください。ワイマラナーは地肌が見えやすい犬種なので、皮膚の側の変化はスマートフォンで撮っておくと、そのまま伝えられます。半年ぶんの記録を待つより、今日の1回の診察のほうが早いことがあります。
相談に行くときは、かいた場所、時間帯の偏り、いつからかの3つをメモにして持っていってください。この3つがそろっていると、その場で見える皮膚の状態と、家での様子を突き合わせてもらえます。前の晩に念入りに拭いたり洗ったりすると、もとの状態が分からなくなるので、そのままの状態で連れて行くほうが役に立ちます。
ワイマラナーと暮らすかぎり、その子は部屋を移るたびについてきます。かゆみのしぐさは、これからも飼い主の目の前で起き続けます。変えられるのは、見る回数ではありません。見た内容のうち1行だけを、頭の外に置くこと。場所と時刻を書いておけば、半年後の自分が、半年前の自分と比べられます。いちばん近くで見ているという条件を、そのまま材料に変えられるのが、この犬種のかゆみとの向き合い方だと考えています。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
