C05犬種・猫種別ケア

イングリッシュセッターと暮らすなら知っておきたい、耳の汚れの話

公開日 2024年8月6日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの草地に、白い斑の長い毛の犬が落ち着いて立っている
頭を下げたとき、地面にいちばん近いのは耳ではなく、耳より下に垂れた毛の先です。

イングリッシュセッターの耳を手のひらに乗せて、いちばん下の位置を指でたどると、耳そのものの先で終わりません。そこからさらに数センチ下に、細い絹のような毛の先があります。この犬種の耳には、耳の輪郭を超えて垂れる長い毛が付いています。ここで一度、汚れの出どころを考え直してみてください。草、土、床、水。外にあるものに先に触れているのは、耳ではなく毛の先のほうです。毛の先に付いた汚れは、そこに留まりません。毛を伝って上へ移り、耳の縁や内側に触れる位置まで戻ってきます。つまり、耳の汚れには「耳が触れてその場で汚れた」ものと、「毛の先が汚れて、あとから耳へ戻ってきた」ものの2種類があります。この記事では、その2つを並べて比べます。

耳の先より下に、毛の先が来る|イングリッシュセッターの耳の汚れが始まる条件

イングリッシュセッターは、背の高い中型から大型の犬種です。立っているとき、その子の耳は地面からかなり離れたところにあります。この体格のままなら、耳が外のものに触れる機会はそれほど多くありません。ところが、この犬種は鼻を低く保って野を歩き、においをたどる仕事をしてきました。頭を下げている時間が長い犬です。頭が下がると、地面までの距離は一気に縮みます。

そのとき、地面にいちばん近いのは何かを考えてみてください。耳は頬に沿って垂れています。その耳の外側から下端にかけて、細く長い絹のような毛が生えています。この毛は、耳の先端よりさらに下まで伸びています。だから、高さの順序はこうなります。地面がいちばん下で、その次が毛の先、そのうえに耳の先、いちばん上が耳の付け根。外にあるものに最初に触れるのは、いつも毛の先です。

この順序は、家の中でも変わりません。床のにおいを取るとき、水を飲むとき、体を伸ばして伏せるとき。頭が下がるたびに、毛の先だけが先に何かへ届いています。耳のほうは、そのすぐ上で止まっています。イングリッシュセッターの耳の汚れを考えるときは、まずこの高さの関係を頭に入れてください。

最後の2つが、この記事の中心です。毛は耳の付け根から下へ向かって生えているので、毛の先に付いたものは、毛を伝って上へ移動できます。移動しなくても、その子が体をぶるぶると振れば、毛の先は勢いよく跳ね上がって耳の内側に当たります。毛の先で受け止めた汚れが、耳へ戻ってくる。イングリッシュセッターの耳の汚れの多くは、この道すじで起きています。

Note「耳が汚れた」は、耳が触れたことを意味しません

汚れは見つけた場所に付いているので、そこで起きたことのように見えます。けれどイングリッシュセッターの場合、汚れが見える場所と、外のものに触れた場所は同じではありません。耳の内側に土が付いていても、その土が土に触れたのは毛の先です。ここを分けて考えないと、耳ばかり拭いて、拾ってくる側には一度も手を入れないままになります。

その場で汚れるのか、あとから戻るのか|イングリッシュセッターの耳の汚れを比較する

2つの経路を、同じ項目で並べます。片方は、耳そのものが何かに当たって、当たった面がその場で汚れるもの。もう片方は、毛の先が当たって、その汚れが遅れて耳へ戻るものです。比べるのは「どちらが多いか」ではなく、拭いたあとに戻ってくるかどうかです。戻ってくる側に手を入れないかぎり、拭く回数を増やしても同じところに戻ります。

イングリッシュセッターの耳の汚れ|2つの経路を並べる
耳が触れて、その場で汚れる毛の先が触れて、耳へ戻る
最初に触れるもの耳の外側の面そのもの耳の先より下に垂れた毛の先
起きる場面耳が人の手・家具・床に直接当たったとき頭を下げて歩いたとき、体を振ったとき
汚れが付く場所触れた面と同じ耳からいちばん遠い、毛の先
汚れが見える場所触れた場所と同じ耳の縁や内側。触れた場所とは違う
見えるまでの時間その場で見える毛を伝う、あるいは跳ね上がるぶん遅れる
拭く場所触れた面を拭けば終わる耳を拭いても、毛の先が残れば戻る
拭いた翌日戻らない毛の先が汚れたままなら、また戻る
起きる頻度少ない。体格があるぶん機会が限られる頭を下げるたび。1日に何度も
換毛期の動き大きく変わらない抜けかけた毛が絡み、汚れを抱えたままになる
その場で終わる汚れと、戻ってくる汚れ 耳そのものが触れた汚れは、触れた面に留まります。毛の先が触れた汚れは、毛を伝って耳へ移り、拭いたあとにもう一度戻ってきます。イングリッシュセッターの耳では、後者のほうが起きる回数が多くなります。 同じ「耳の汚れ」でも、始まった場所が違います 耳が触れて、その場で汚れる 触れた面がそのまま汚れる 見える場所=触れた場所 拭けばその場で終わる 起きる回数は少ない 毛の先が触れて、耳へ戻る 毛の先が先に触れる 見える場所と触れた場所がずれる 耳だけ拭くと、また戻る 頭を下げるたびに起きる 戻ってくる側は、耳ではなく毛の先で止められます
拭く場所を決めているのは、汚れが見える場所ではなく、最初に触れた場所です。

表を見ていくと、2つの経路は「拭いた翌日」の行ではっきり分かれます。その場で汚れたものは、拭けば終わります。戻ってくるものは、拭いた場所がきれいになっても、汚れを持っている側がそのまま残っているので、時間がたてば同じところへ現れます。イングリッシュセッターの耳の汚れで「毎日拭いているのに変わらない」と感じるときは、たいてい右側の経路が動いています。

もうひとつ、頻度の行も見ておいてください。耳そのものが何かに触れる機会は、この体格ではそれほど多くありません。床に頭をつけて眠るとき、人の手が当たるとき、狭い場所を抜けるとき。数えられる程度です。一方で、毛の先が何かに触れる機会は、頭を下げるたびにあります。散歩の1時間で何十回にもなります。回数の差がそのまま、どちらの経路が主役かを決めています。

皮脂についても触れておきます。耳の付け根の側には皮脂が出るので、そこにたまるものは外から来た汚れとは別のものです。外から来た汚れは毛の先の側に、皮脂は付け根の側にたまります。同じ耳の中で、上と下では性質の違うものが集まっているということです。この2つを混ぜて「耳の汚れ」とまとめてしまうと、手を入れる場所が決まりません。

触れた場所と汚れた場所がずれる|イングリッシュセッターの耳の汚れの見分け方

どちらの経路が動いているかは、家で確かめられます。手がかりは、触れた場所と汚れた場所がそろっているかどうかです。そろっていれば、その場で汚れたもの。ずれていれば、毛の先から戻ってきたものです。次の4つを順にやってみてください。全部で2〜3分です。

  1. 耳を持ち上げて、外側の面と内側の面を分けて見る

    外側は、耳が直接何かに当たる面です。内側は、ふだんは頬に向いていて外のものに当たりません。内側だけが汚れているなら、耳が直接触れて付いたものではありません。イングリッシュセッターでこの見え方をしているときは、毛の先から戻ってきたと考えて先へ進みます。

  2. 毛の先を10本ほど束にして、白い布ではさんで下へ引く

    布に何が残るかを見ます。土、細かい草、乾いた泥、うっすらとした色。耳の内側の汚れと同じものが布に付いたら、出どころは毛の先です。何も付かないのに耳だけが汚れているなら、別の経路を考えます。布は白か淡い色のものを使ってください。

  3. 耳の内側だけを拭いて、24時間後にもう一度見る

    毛の先には手を入れずに、耳だけを拭きます。翌日に同じ場所が同じように汚れていたら、供給側が残っているということです。戻ってこなければ、その場で付いた汚れだったことになります。この1回のテストが、いちばんはっきりします。

  4. その子が頭を下げる場面を、横から1回だけ見る

    散歩中でも、家で床のにおいを取っているときでも構いません。毛の先が地面や床に届いているか、耳の先は届いていないかを、目で確かめてください。イングリッシュセッターの体格だと、この2つがはっきり分かれます。届いている側が、汚れを受け取っている側です。

見分けの結果と、そこから分かること
確かめたことそろっている(その場で汚れた)ずれている(毛の先から戻った)
汚れている面耳の外側耳の内側や縁
白い布に付くものほとんど付かない耳の汚れと同じものが付く
拭いた24時間後戻ってこない同じ場所に同じように出ている
頭を下げたとき耳の先も何かに触れている毛の先だけが届いている
その日にすること触れた面を拭くところまで毛の先の側に手を入れる
Point見分けは、週に1回で足ります

毎日やる必要はありません。白い布ではさんで引く、というのを週に1回だけ決めておけば十分です。布に付くものは季節で変わります。春から夏は草の細かいかけら、雨の多い時期は乾いた泥、換毛期は抜けかけた自分の毛。イングリッシュセッターの耳の汚れは、この布の上に先に現れます。耳の中を毎日のぞき込むより、こちらのほうが早く分かります。

耳を拭くのが先か、毛の先を止めるのが先か|イングリッシュセッターでどっちを選ぶか

見分けがついたら、手を入れる場所を決めます。戻ってくる経路が動いているなら、先に触るのは耳ではなく毛の先です。順番が逆になると、拭いた直後の耳に、汚れたままの毛の先が当たります。せっかく拭いた面に、その場でもう一度戻すことになる。イングリッシュセッターの毎日のケアで、いちばん結果が変わるのはこの順番です。

  1. 帰ってきたら、毛の先だけを下へ向かって滑らせる

    湿らせた布で、耳の付け根の側から毛の先へ向かって、握らずに滑らせます。向きは必ず上から下です。下から上へ動かすと、汚れを耳の側へ運ぶことになります。細く絹のような毛なので、力はほとんど要りません。左右で30秒ずつ。この段階では耳には触りません。

  2. 毛の先が乾いてから、耳の内側の見える範囲を拭く

    毛の先が濡れているうちに耳を拭くと、そのあと体を振ったときに水と一緒に戻ります。乾くまで待ってから、耳の内側の目で見える範囲だけを拭いてください。奥は家で触る場所ではありません。見えないところまで指や綿棒を入れないでください。

  3. 週に1回、目の粗いコームで毛の先からとかす

    耳の飾り毛は細くて絡みやすいので、根元から入れずに毛先から少しずつ上がります。絡んだままの毛は、汚れを抱えたままになります。ブラッシングは毛を整えるためだけでなく、汚れを抱える場所をなくすためでもあります。この犬種の被毛は全体に絹のような手ざわりなので、耳だけ特別な道具は要りません。

  4. 換毛期は、毛の先を見る回数だけ増やす

    抜けかけた毛が飾り毛の中に留まると、そこが汚れの受け皿になります。換毛期に増やすのは、拭く強さではなく、見る回数のほうです。1日1回だった確認を、朝と帰宅後の2回にする。時期が終わったら回数も戻します。この期間だけ、毛の先の絡みが早く進みます。

どっちに手を入れるかは、見分けの結果で決まります
起きている経路先に触る場所耳をどうするか
その場で汚れる(耳が触れた)耳の外側の、触れた面拭けば終わり。毛の先は触らなくてよい
毛の先から戻る毛の先。上から下へ滑らせる毛の先が乾いてから、内側の見える範囲だけ
両方が同時に起きている毛の先が先。耳はあと順番を守れば、拭く回数は増やさなくてよい
どちらでも説明がつかない手を止める動物病院に相談する
Caution拭く回数を増やす前に、順番を確かめてください

同じ場所が戻ってくると、つい1日2回、3回と拭く回数を増やしたくなります。けれど、汚れを持っている側が残っているかぎり、回数を増やしても戻る間隔が短くなるだけです。そのうえ、耳の内側をくり返しこすると、必要な皮脂まで取ってしまいます。イングリッシュセッターの耳では、拭く回数より、毛の先を先にするという順番のほうが効いてきます。

毛の先に手を入れるとき、何を含ませるかも決めておけます。その日、毛の先がどこまで届いたかは、白い布ではさんで引いた人にしか分かりません。飼い主が確かめに行くまで、飾り毛は誰にも見られていない場所です。そこへ何かを足すなら、翌週の布を読めなくしないものであることが先に来ます。mofuwa スキンケアミストは無香料です。この記事はにおいを手がかりのひとつに数えているので、ここは外せません。香りのあるものを飾り毛に足すと、次に布へ付いたにおいが、こちらが足したものなのか、毛の先が拾ってきたものなのかを分けられなくなります。使い方は、布に含ませてから、耳の飾り毛を付け根から先へ一方向に滑らせるところまで。往復させると、いま滑らせた先の汚れを付け根側へ戻します。耳の内側や、その子が気にしている場所には直接吹きかけないでください。

2つの経路のどちらでも説明がつかない耳の汚れ|イングリッシュセッターで手を止める線

ここまでは、毛の先と耳の高さの関係で説明のつく汚れの話でした。毛の先を先に触る順番にしても、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、飾り毛の条件だけでは説明がつきません。家での手順を増やす前に、いったん手を止めます。

Caution早めに動物病院へ相談したい様子

耳のにおいが強くなった、耳の中が赤い、頭を振る回数が増えた、耳を持ち上げると痛がる、耳の中が湿ったままになっている、片側だけ様子が違う、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、拭く回数を増やす前に動物病院にご相談ください。イングリッシュセッターは耳が垂れていて中が見えにくいので、外から分かる変化に気づいた時点で相談するほうが確実です。迷ったら早いほうを選んでください。

相談に行くときは、いつからか、どちら側か、その週に毛の先へ手を入れたかどうかの3つを伝えられるようにしておいてください。前の晩に念入りに拭いてしまうと、もとの状態が分からなくなります。毛の先も耳も、そのままの状態で連れて行くほうが役に立ちます。白い布に付いたものが残っていれば、それも持っていくと話が早くなります。

最後にもう一度整理します。イングリッシュセッターの耳には、耳の先より下まで垂れた毛があります。頭を下げたとき、外のものに先に触れるのはその毛の先で、耳ではありません。だから耳の汚れは、その場で付いたものと、毛の先から遅れて戻ってきたものに分かれます。拭いた翌日に戻るかどうかで、どちらかが分かります。戻る側なら、先に触るのは毛の先。この順番ひとつで、毎日のケアの手数は増えないまま、耳の汚れの戻り方が変わります。

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よくある質問

イングリッシュセッターの耳の飾り毛は、短く切ってしまってもいいですか?
切る前に、その毛が何をしているかを一度考えてみてください。飾り毛はもともと、草や地面から体を守るために付いている毛です。短くすれば汚れを拾う量は減りますが、耳そのものが直接触れる機会は増えます。切るかどうかを決める前に、まず毛の先を上から下へ拭く順番を1〜2週間続けて、それでも戻るかどうかを見てから判断するほうが確実です。
耳の中まで洗ってしまったほうが、汚れは減りませんか?
家で耳の奥まで触るのはおすすめできません。見える範囲を拭くところまでが家でできることで、その先は動物病院やトリミングサロンの領域です。イングリッシュセッターの場合、外から来る汚れの入り口は耳の奥ではなく毛の先なので、奥へ手を伸ばすより、毛の先を止めるほうが結果につながります。
換毛期以外でも、耳の毛だけがよく絡むのはなぜですか?
耳の飾り毛は細くて長く、頭を振るたびに大きく動きます。動いた毛どうしがこすれると、そこから絡みが始まります。首輪やハーネスの縁に当たっている場合も、同じ場所で絡みが繰り返されます。週に1回、目の粗いコームで毛先から上がっていくだけで、絡みが汚れを抱え込む前にほどけます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。