C05犬種・猫種別ケア

アイリッシュセッターの長毛|毛のパサつきを毎日のケアで防ぐ

公開日 2024年8月13日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の入る部屋で、赤みのある長い毛の犬が床にくつろいでいる
同じ一頭でも、毛が入れ替わる速さは場所ごとに違います。長く外に出ている毛のほうから、手ざわりが変わります。

アイリッシュセッターの胸に垂れている毛を一房つかんでから、同じ手で背中の毛をなでてみてください。指のあいだを流れていく感触が、二か所で違います。背中はさらりと抜けていくのに、胸の一房は途中で指に引っかかり、毛先のあたりで音が立つように乾いています。アイリッシュセッターの毛のパサつきは、たいていこの引っかかるほうの場所から始まります。同じ日に同じものを食べて、同じ部屋で寝ている一頭なのに、なぜ場所によって差が出るのか。答えは毛の量ではなく、毛が入れ替わる速さが、体の場所ごとに違うことにあります。この記事では、短い周期で入れ替わっていく体の毛と、伸び続けて残り続ける飾り毛を並べて、どっちに手を入れる日なのかを決める条件を書きます。

体の毛と飾り毛で、入れ替わる速さが違う|アイリッシュセッターの毛がパサつく条件

アイリッシュセッターの被毛は、赤褐色で、細く、まっすぐで、絹のような光を返します。ただ、全身が同じ長さで生えているわけではありません。背中・胴・顔まわりの毛は短く体に沿っていて、耳・胸・前脚の後ろ・後ろ脚の裏・尾の下側には、長い飾り毛が垂れています。この長短の差は、伸びるのを止めるかどうかで決まっています。

毛には、伸びている期間と、伸びるのを止めて抜け落ちるまでの期間があります。その期間の長さは、体の場所ごとにおおよそ決まっています。背中の毛は一定の長さまで伸びると止まり、抜けて、次の毛に入れ替わります。飾り毛は伸びている期間そのものが長く、切らずにおけば床に触れるほど伸び続けます。つまり同じ一頭の中に、入れ替わる毛と、入れ替わらない毛が同居しています。

ここがアイリッシュセッターの毛のパサつきを考えるときの出発点です。背中の毛は、乾いても、すり切れても、数か月のうちに新しい毛と交代します。飾り毛は交代の順番が回ってこないので、外に出たまま何年も日ざしと空気と床にさらされ続けます。手ざわりの差は、手入れをさぼった差ではなく、外に出ている時間の差から出ています。

この長短の分かれ方は、アイリッシュセッターが背負っていた野の仕事の名残です。アイルランドの野で、草や低い茂みの中を走って鳥を探す。体の毛は短く保って走りやすく、胸から脚の裏、尾の下といった、草が最初に当たる面にだけ長い毛を垂らして受け止める。飾り毛が伸び続けるのは、その面を覆い続けるためです。余分に伸びているのではなく、伸び続けることが役割です。

Note毛が長いからパサつく、という話ではありません

長さそのものが問題なら、答えは「短く切る」で終わってしまいます。アイリッシュセッターで見たいのは長さではなく、その毛が何か月、何年、体の外に出たままなのかという時間のほうです。時間の話にすると、答えは「入れ替わらない場所に、入れ替わりの代わりになる手を入れる」に変わります。飾り毛を短くしなくても、手の入れ方だけで変えられる範囲があります。

入れ替わる毛と、伸び続ける毛|アイリッシュセッターの毛のパサつきを比較する

二つの毛を、同じ項目で並べます。比べるのは長さでも量でもなく、入れ替わる速さと、そこから何が起きるかです。アイリッシュセッターの毛のパサつきに手を入れるとき、この二つはまったく別の相手になります。片方に効く手をもう片方に当てても、変化が出ないか、出るまでに時間がかかりすぎます。

入れ替わる毛のほうから見ていきます。背中の毛は、伸びるのを止めたあと抜け落ち、下から新しい毛が上がってきます。だから、この場所の毛が乾いて見えるときは、その毛が入れ替わりを待っている段階だということが多く、ブラッシングで抜けかけの毛を外へ出せば、手ざわりはわりと早く戻ります。季節でまとまって動くので、換毛期に手数を増やせば追いつきます。

伸び続ける毛のほうは、待っていても交代が来ません。胸や耳の飾り毛は、去年の夏の日ざしを受けた毛と、今日ブラシを通した毛が同じ一本の中に並んでいます。入れ替わりで元に戻る仕組みがない場所なので、うるおいが減っていく一方向にしか進みません。ここに、ブラッシングの回数を増やすだけでは追いつかない理由があります。

アイリッシュセッターの毛を、入れ替わる速さで二つに分けて比較する
入れ替わる毛(体の毛)伸び続ける毛(飾り毛)
生えている場所背中・胴・顔まわり耳・胸・脚の裏・尾の下側
伸びる期間一定の長さで止まる止まらず伸び続ける
同じ毛が外にある時間数か月ほど年単位で残ります
換毛期の動きまとまって抜けて入れ替わる抜ける量が少なく、残ります
パサつきの出かた全体がうっすら。季節で動く毛先の側から。季節と関係なく進む
静電気の起きかた面で起きて、すぐ落ち着く一房ごとに広がり、絡みに変わる
手を入れる目的抜けかけの毛を外へ出すうるおいを足して、こすれを減らす
変化が出るまで換毛期のうちに戻ります数週間かけて、ゆっくり
アイリッシュセッターの毛は、入れ替わる速さで二つに分かれる 背中の毛は伸びるのを止めて入れ替わります。耳や胸の飾り毛は止まらずに伸び続けるので、同じ毛が長く外に残ります。 同じ一頭の中に、周期の違う二つの毛があります 体の毛(入れ替わる) 背中・胴・顔まわりの短い毛 伸びる期間が短く、止まる 換毛期にまとめて入れ替わる 乾いても数か月で戻ります 飾り毛(伸び続ける) 耳・胸・脚の裏・尾の長い毛 伸びる期間が長く、止まらない 季節と関係なく残り続ける パサつきはここから出ます 同じ手を両方に当てても、変化の速さが揃いません
パサつきが先に出るのは、交代の順番が回ってこない側です。

この比較から言えることが一つあります。アイリッシュセッターの毛のパサつきが気になり始めたとき、まず疑う場所は背中ではありません。背中は自分で入れ替わる力を持っています。飾り毛にはそれがない。手をかける順番も、変化を待つ長さも、二つで分けて考えたほうが、同じ時間でも結果が違ってきます。

もうひとつ、量の話ではないと分かる根拠があります。飾り毛を短く整えている子でも、同じ場所からパサつきが出ます。短くしても、その毛が伸び続ける場所であることは変わらないからです。長さを変えるのは見た目と絡みの話で、入れ替わる速さのほうは変わりません。ここを混ぜないでください。

今日はどっちに手を入れる日か|アイリッシュセッターの毛を指で送って決める

二つに分かれると決まったら、次はその日にどっちへ手を入れるかです。毎日どちらもやろうとすると続きません。見分けるのは目ではなく、手のひらと、指で毛を送るときの感触です。立たせたまま、片手を脇の下に添えて体を支え、確かめるのは反対の手だけにします。二分で終わります。

  1. 手のひらを背中に当てて、毛の流れに沿って肩から腰まで滑らせる

    入れ替わる毛の側から見ます。手のひらがすっと抜けるなら、この面は今日は手を入れなくて構いません。途中で毛が起き上がる、指のあいだに抜け毛がまとまってつくときは、換毛期の入り口です。その日は背中側の日にしてください。

  2. 胸の飾り毛を根元でつまみ、そのまま毛先まで指を送る

    伸び続ける毛の側です。根元のあたりは指が滑るのに、途中から先で細かく引っかかるなら、そこがアイリッシュセッターの毛のパサつきが出ている一房です。引っかかった場所を覚えておいてください。翌週、同じ一房で確かめると進み方が分かります。

  3. 耳の飾り毛を、耳の付け根から下へ一度だけ通す

    耳は頭を振るたびに毛先どうしがこすれる場所です。通したときに毛が束のまま動くなら、絡みが始まっています。ここは力を入れずに、一度で抜けなければその日はやめてください。強く引くと、飾り毛は根元から抜けます。

  4. 後ろ脚の裏と、尾の下側に指を入れる

    座ったときに体の下へ入る面です。飾り毛の中でいちばん押しつぶされている場所なので、ほかがきれいでもここだけ手ざわりが違うことがあります。床に接している時間が長い一頭ほど、ここから変わります。

指で確かめた結果と、その日に入れる手
確かめたことその日に入れる手
背中で手のひらが起き上がる/抜け毛がつく入れ替わる毛の日。抜けかけを外へ出す
背中は滑るが、胸の毛先が引っかかる伸び続ける毛の日。うるおいを足す
両方とも滑るその日は何もしなくて構いません
耳の飾り毛が束のまま動く飾り毛の日。ただし力を入れず一度だけ
尾の下側だけ手ざわりが違う床に接している時間を先に見直す
Pointアイリッシュセッターは、見た目ではどっちか分かりません

赤褐色の毛は光をよく返すので、飾り毛の内側でうるおいが減っていても、離れて見ると艶があるように見えます。光っていることは、その毛が乾いていない証明にはなりません。抱き寄せたついでに胸の一房を根元から毛先へ送る、と決めてしまえば、思い出さなくても回ります。引っかかる位置が先週より根元へ寄っていたら、その一房は進んでいます。

換毛期と、飾り毛が伸び続ける時期|アイリッシュセッターの毛で毎日のケアを分ける

ここからが毎日のケアの話です。二つの毛は、手を入れる時期の考え方まで違います。入れ替わる毛には季節があり、伸び続ける毛には季節がありません。春と秋にだけ手数が増える側と、一年じゅう同じ手数が要る側。この二本立てで組むと、忙しい週でも片方は止まりません。

入れ替わる毛の側は、換毛期に合わせます。春と秋、背中の毛がまとまって動く二〜三週間だけ、ブラッシングの回数を増やしてください。やることは、抜けかけて浮いている毛を外へ運び出すことだけです。この時期を越えれば、手数はもとに戻して構いません。換毛期のあとに背中の手ざわりが戻らないなら、それは入れ替わりの話ではなくなっています。

伸び続ける毛の側には、区切りがありません。だから回数ではなく、当てる場所を決めます。耳・胸・前脚の後ろ・後ろ脚の裏・尾の下側の五か所を、一日一か所ずつ回す。五日で一周します。一日に全部やろうとするより、五日かけて一周するほうが、飾り毛には合っています。

時期の考え方が、二つの毛で違います
入れ替わる毛(体の毛)伸び続ける毛(飾り毛)
手数が増える時期春と秋の換毛期だけ増える時期がありません
一回にかける範囲背中から腰まで、面で五か所のうち一か所だけ
ブラッシングの向き毛の流れに沿って、長く根元を押さえて、毛先へ短く
結果が出るまで換毛期のうちに三〜四週間かけて
やめどき抜け毛が減ったら戻すやめどきはありません

ブラッシングそのものにも、飾り毛では一つ条件がつきます。乾いたまま根元から強く通さないでください。細くまっすぐな毛は、乾いた状態で引かれると裂けます。裂けた毛はそこから先が広がって、静電気を集めやすくなり、隣の毛と絡みます。パサついて見える一房の何割かは、この裂けた毛が混ざったものです。根元を指で押さえ、毛先の側から少しずつほどいて、最後に根元から一度通す。この順番だけで、引く力はかなり減ります。

伸び続ける毛には、外からうるおいと滑りを足す手が要ります。mofuwa 毛玉予防ジェルは、被毛を一本ずつコーティングして、毛どうしが絡まりにくい状態を続けておくためのジェルです。手のひらに少量を伸ばして、胸や耳の飾り毛を根元から毛先へなでるようになじませてください。ブラシを入れる前にこれをやっておくと、乾いた毛を引かずに、静電気の起きにくい状態で梳かせます。全身に広げる必要はありません。指が引っかかった一房だけで足ります。すでに束になっている一房には、同じ毛玉予防ジェルを直接もみこんでください。潤滑剤として働くので、はさみを入れずにほぐせることがあります。

Caution飾り毛は、洗った回数より乾かしきった時間で変わります

飾り毛が乾いて見えると、洗って整えたくなります。ただ、アイリッシュセッターは飾り毛の量があるぶん、乾かしきるまでの時間が長くなります。半乾きのまま置いた時間が長いほど、細い毛どうしが寄って束になります。洗う回数を増やしても、乾かす時間が足りなければ、翌日の手ざわりはかえって落ちます。まず動かすのは回数ではなく、五か所を一日一か所ずつ回せているかどうかのほうです。

飾り毛ではない場所がパサついてきたら、入れ替わる速さの話ではありません

ここまでは、毛が入れ替わる速さの違いで説明のつくパサつきの話でした。手を入れているのに、飾り毛ではない場所まで同じように変わってきたときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、アイリッシュセッターの被毛の条件では説明がつきません。

Caution飾り毛の下で、毛ではなく地肌が変わっているとき

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。この中に一つでも当てはまるものがあれば、五か所を回す手を止めて、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。アイリッシュセッターは飾り毛が長く垂れていて、その下が外から見えません。かき分けてからでないと気づけない場所なので、判断がつかないうちに一度見てもらうほうが早く済みます。

相談やトリミングの前には、手ざわりが変わった場所、指が引っかかる位置が根元へ寄っているかどうか、いつからかの三つをメモしてください。この三つがあると、伸び続ける毛の側で起きていることなのか、そうでないのかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に頑張ってほどこうとすると、もとの状態が分からなくなります。触らずにそのまま連れて行ってください。

アイリッシュセッターと暮らすうえで、飾り毛が伸び続けること自体は変えられません。草の中を走る仕事のためにそなえた作りだからです。動かせるのは、伸び続ける場所に、入れ替わりの代わりになる手が届いているかどうかのほうです。入れ替わる毛は換毛期に、伸び続ける毛は五か所を一日一か所ずつ。二つを別の相手として扱うと、同じ時間でも、毛のパサつきは違うところに落ち着きます。

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よくある質問

アイリッシュセッターの飾り毛は、短く切ったほうがパサつきませんか?
短くしても、その場所が伸び続ける場所であることは変わりません。長さを変えると絡みは減りますが、毛が入れ替わる速さは変わらないので、同じ場所から同じように手ざわりが変わります。切るかどうかは見た目と生活の話として決めて、パサつきのほうは五か所を回す手のほうで扱ってください。
背中の毛はきれいなのに、胸だけ乾いて見えます。栄養の問題でしょうか。
食べているものが同じで場所だけ差が出ているなら、まず毛が入れ替わる速さの違いを疑ってください。背中は数か月で入れ替わり、胸の飾り毛は入れ替わりません。同じ体の中で、片方だけが交代を待てる状態です。それでも全身が同時に変わってきたときや、抜けたあとに新しい毛が上がってこないときは、動物病院にご相談ください。
ブラッシングは毎日やったほうがいいですか?
毎日やる必要はありません。背中側は換毛期だけ手数を増やせば足ります。飾り毛は、五か所を一日一か所ずつ回して五日で一周する形にすると続きます。毎日全身に手を入れると、乾いた毛を引く回数が増えて、細い毛が裂ける側に働きます。回数より、当てる場所を決めるほうを優先してください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。