C05犬種・猫種別ケア

スタンダードプードルはなぜ耳の汚れが起きやすいのか。巻毛から考える

公開日 2024年8月20日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色のラグの上で、大きな巻毛の犬が静かに横になっている
耳のふたは外から乗っているのではなく、内側から生えています。開ける時間をつくれるかどうかが分かれ目です。写真:3194556/Pixabay

スタンダードプードルの耳を手のひらでめくって、耳の穴のふちを明るいところで見てみてください。ふちの内側から、細い毛が何本も、穴のほうへ向かって生えています。指で軽く触れると、その毛が奥へ続いているのが分かります。スタンダードプードルの耳の汚れを考えるとき、最初に置いておきたいのはこの一点です。この犬種は、耳の穴の中にも毛が生えます。だから耳を開いたときに見える茶色いものは、外から入ってきた汚れというより、毛がふたをした内側で、出られなくなったものが溜まった結果です。掃除する対象を「汚れ」だと思っているうちは、拭いても拭いても同じところに戻ってきます。この記事は手順書ではありません。耳の中で何が起きているのかを、いったん見方から組み直す話です。

耳の穴の中にも毛が生える|スタンダードプードルで耳の汚れが起きやすい理由

犬の耳の穴は、まっすぐ奥へ続いているわけではありません。入り口からいったん下へ降りて、途中で曲がって奥へ向かいます。曲がった先は外から見えません。スタンダードプードルの場合、この見えない入り口の部分に毛が生えています。体を覆っているのと同じ巻毛が、耳の穴のふちから内側へ向かって生え、奥のほうまで続いています。

毛が生えていること自体は、この犬種のつくりであって、異常ではありません。ただ、そこに二つめの条件が重なります。プードルの被毛は巻いていて、はっきりした換毛期がありません。抜けるべき毛が、抜けたあとも隣の毛の巻きに引っかかって、その場に残ります。体の表面なら、それはもつれとして手で触れます。耳の穴の中では、触れないまま溜まっていきます。

三つめが垂れ耳です。スタンダードプードルの耳は、頭の横から下へ大きく垂れて、耳の穴を上から覆っています。しかもこの犬種は体格が大きいので、耳そのものにも長さと重さがあります。上からは耳のひらが、内側からは巻毛が、同じ穴に二重のふたをしている状態です。ここまでが、スタンダードプードルの耳の汚れが起きやすい理由のほぼすべてです。

もともとこの犬種は、水に入って撃ち落とされた鳥を回収する仕事をしていました。水辺で働く犬にとって、耳の穴を覆う作りには意味があります。水が直接入り込みにくくなるからです。ふたがあることは欠点として備わったのではなく、仕事のための作りです。ただ、その仕事をしない暮らしの中では、ふたは水と同じくらい空気も止めます。

Note外から入ってきたものだと考えると、手が合いません

散歩で砂が入った、シャンプーのときに水が入った。そう考えると、対策は「入れないようにする」になります。ところがスタンダードプードルの耳では、入ってくる量より、出ていけない構造のほうが効いています。入り口を塞ぐ方向へ手を伸ばすと、かえってふたが厚くなります。見るべきは入口ではなく、内側から外へ向かう道のほうです。

取るのは汚れではなく、ふたをしている状態|スタンダードプードルの耳をめぐる考え方

ここで、言葉をひとつ入れ替えてみてください。耳を開いて茶色いものが見えたとき、私たちはそれを「耳の汚れ」と呼びます。呼んだ瞬間に、次の行動は「拭く」に決まってしまいます。けれど拭き取れるのは、いちばん外側の、たまたま手の届いたところにあるぶんだけです。翌週には同じところに同じものが見えます。これを何度かくり返して、うちの子は耳が汚れやすい、という結論に落ち着く。よくある道すじです。

考え方を変えると、見えるものが変わります。茶色いものは原因ではなく、ふたがされていることの結果です。耳の中では、外へ向かってゆっくりと古いものを押し出す働きが、もともと備わっています。その道の途中に毛があり、抜けた毛が引っかかって留まり、上から耳のひらが覆っている。押し出す働きが止まったわけではなく、押し出した先で行き止まりになっているだけです。

この見方に立つと、家庭の手が向かう先が変わります。目標は、見えている茶色いものをきれいに取り去ることではなくなります。取ることを目標にすると、綿棒や指を奥へ入れたくなる。奥へ入れた道具は、留まっているものを外へ運ぶのではなく、曲がった先へ押し込む方向に働きます。届かない場所を目標にすると、手はだんだん乱暴になります。

同じものを、どちらの言葉で呼ぶかで手が変わります
「汚れ」と呼ぶと「ふたをしている状態」と呼ぶと
見ているもの茶色く見えているもの空気と皮脂の通り道
次の行動拭く。奥まで取りに行くふたを開けている時間をつくる
道具綿棒。指。奥へ届くもの道具は使いません。手で耳を持ち上げます
うまくいかないとき回数を増やす開いている時間の長さを見直す
家庭の役割取りきること変化を記録して、預ける先を決めること
結果の見え方翌週また同じところに戻る戻るまでの間隔が延びていく

皮脂の話をもう少しします。皮脂は毎日つくられていて、量そのものはふつうのことです。問題になるのは、つくられた場所から外へ出るまでの時間が、ふたのぶんだけ長くなることのほうです。留まる時間が長いほど、色も、においも、手ざわりも変わっていきます。スタンダードプードルの耳の汚れが季節を問わず話題になるのは、この時間の長さが季節に左右されないからです。

そしてもうひとつ。耳の中の毛は、体の毛と同じようにブラッシングで整理できません。ブラッシングは、抜けた毛を外へ運び出す作業です。手とブラシが届く面でしか成立しません。耳の穴の中は、その面の外側にあります。全身をていねいにブラッシングしている家庭でも、この一か所だけは手つかずのまま残る。手抜きではなく、届かないからです。

ふたを開けている時間を数える|スタンダードプードルの耳で追える変化と毎日のケア

では家庭で何ができるのか。動かせるのは、耳の中ではなく耳のまわりと、ふたが開いている時間の長さです。ここは毎日のケアの範囲に入っています。数えられる形にしておくと、変化を追えるようになります。

いちばん単純なのは、耳を持ち上げる時間をつくることです。ソファに並んで座っているあいだ、耳のひらを手の甲で頭の上へ返しておく。それだけで、穴の真上のふたが一枚外れます。一日に何分、耳が開いていたか。この数字は家庭で決められます。撫でるついでに三分、寝る前に三分。合計十分でも、開いていない日とは条件が違います。

次に、耳のまわりの毛です。耳の穴の中は触れませんが、耳の付け根の外側と、耳のひらの内側の面は、手が届きます。ここが毛でふさがっていると、耳を持ち上げても空気の入り口が残りません。トリミングのときに、耳の付け根の外周を短めにしてもらうかどうかは、担当のトリマーと相談して決められる範囲です。家庭で鋏を入れる話ではありません。

濡れたあとの扱いにも触れておきます。水に入ったあと、シャンプーのあと、雨の日の散歩のあと。スタンダードプードルは体格が大きく、体を拭き終わるころには耳が後回しになりがちです。順番を変えて、いちばん先に耳のひらを返して、内側の面を上に向けておく。乾かす時間の長さを競う話ではなく、閉じたまま置かない、というだけの話です。

  1. 毎日、耳を持ち上げる時間を決める

    撫でるついでに、耳のひらを頭の上へ返して手で押さえます。一日十分を目安に、時間で決めてください。回数で決めると、片方だけになりがちです。左右を同じ長さにするのがコツです。

  2. 開いたときに、見えるところだけを見る

    見るのは色とにおいの二つだけ。奥をのぞき込もうとしないでください。入り口のふちで色がついているか、においが前と違うか。それ以上は家庭の情報ではありません。手前で止めるのが、この段階の正しさです。

  3. 拭くなら、耳のひらの内側の面だけにする

    指の届く範囲、目で見えている範囲までです。穴の中へ向かって指や綿棒を進めないでください。曲がった先へ押し込む向きに力が働きます。手前の面を拭くだけでも、においの出どころは減ります。

  4. 濡れた日は、耳を最初に開ける

    体より先に、耳のひらを返して内側を上に向けます。体を拭き終わってから耳に手をつけると、その間ずっとふたが閉じたままです。順番を入れ替えるだけで、閉じている時間が短くなります。

  5. 週に一度、同じ曜日に記録する

    色、におい、耳を触られたときの反応。三つを短く書き留めます。スタンダードプードルの耳の汚れは、日々の差より、戻ってくるまでの間隔のほうに変化が出ます。先月は五日で戻ったものが、十日に延びているか。そこが家庭で追える変化です。

皮膚の乾燥は、そのままにしておくと様々な皮膚トラブルの原因になります。従来のクリームやローションなどの保湿剤だとべたつきや気にして舐めてしまう子もいるため、電解水100%で舐めても安全なmofuwaスキンケアミストは日々のケアとしておすすめです。

近藤 竜太 先生/白金高輪動物病院 院長・獣医師(麻布大学卒/比較眼科学会所属)
東京都港区白金1-2-2 白金ザ・スカイ西棟1階
※実際にお使いいただいている獣医師のご感想です。本記事の監修を受けたものではありません。

開いている時間に何を足すかも、決めておけます。耳のひらは、返してもらっているあいだしか開きません。その子が自分で返して、そのまま止めておくことはできない。だから足すものは、返している数分のうちに置き終わって、戻したあとに居座らないものになります。耳のまわりに何かを塗るやり方が続かないのは、たいていここです。後ろ足で掻かれ、頭を振られ、隣の面にこすられて、朝置いたものが昼には別の場所へ動いています。mofuwa スキンケアミストは、その動き方が問題にならない側にあります。中身が電解水だけなので、掻いたときにずれるような膜を残しません。使う場所は、耳の付け根の外側と、耳のひらの内側の面まで。必ず布に含ませてから当ててください。耳の穴へ向けて吹きつけないでください。持ち上げたついでに一往復、という置き方なら、開ける時間を数える手順の中にそのまま収まります。

Caution耳の中の毛は、家庭で抜かないでください

耳の穴の中の毛について、抜くという処置が話題になることがあります。ただ、どの子にどこまで必要かは、耳の中の状態を見たうえで判断されるものです。家庭で見えるのは入り口までで、曲がった先は見えません。見えない場所に力を加えると、毛だけでなく、その下の面まで一緒に引くことになります。必要かどうかを含めて、獣医師とトリマーに預ける領域だと考えてください。ここは、この記事が手順を書かない一点です。

うちの子はこうだった、という経験で線を引かないほうがよい場所

スタンダードプードルと長く暮らしていると、その子の耳のくせが分かってきます。夏に増える、水に入った週は色が濃くなる、右のほうがいつも先。この経験はとても役に立ちますが、ひとつだけ、経験で線を引かないほうがよい場所があります。それは、様子を見てよいかどうかの判断です。

耳の中は、家庭からいちばん見えにくい場所です。しかもスタンダードプードルの場合、ふたが二重にかかっているので、外から見える変化はいつも遅れて出ます。見えたときには、その状態がしばらく続いていた、ということが起こりえます。だから「前も同じくらいで落ち着いたから」という経験の使い方が、いちばん効きにくい場所でもあります。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

耳を痛がる、においが強くなった、耳のふちが赤い、頭を振り続けている、片側だけ様子が違う、耳から液体が出ている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、拭く回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。耳の中は家庭から見えない場所です。迷った時点で相談したほうが、結果として手数は少なくなります。

相談に行くときは、色とにおいの記録、戻ってくるまでの日数、その週に水に入ったかどうかの三つを持って行ってください。前の晩に念入りに拭いていくと、見てもらいたかったものが手前から消えてしまいます。そのままの状態で連れて行くほうが、判断の材料が残ります。きれいにしてから行きたくなる気持ちは分かりますが、ここは我慢しておくところです。

スタンダードプードルと暮らすうえで、耳の穴の中に毛が生えることも、耳が上から覆っていることも、変えられません。水辺で働くための作りだからです。変えられるのは、そのふたが一日のうちどれだけ開いていたかという時間と、変化に気づくまでの遅れの長さです。耳の汚れを取りきろうとするのをやめて、開ける時間を数える。毎日のケアとして家庭が持てるのは、そちら側です。そして、見えない場所の判断は預ける。この二つを分けておけば、スタンダードプードルの耳とは長く付き合えます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。