C09シーン別・暮らし

多頭で暮らす、シニア猫と暮らす人はどうしている?

公開日 2024年8月10日|文=mofuwa編集部

明るく静かな部屋で、床のマットの上に落ち着いてすわっている淡い色の年をとった猫
動かすのは頭数ぶんの手ではなく、家の一日がどの子の速さで回っているかのほうです。写真:Osman İçli/Pexels

多頭飼いの家で、夜に3つの器を下げる時刻が、いつのまにかいちばん若い子の食べ終わる速さで決まっていました。その子が食べ終えて水を飲みに行くと、残りの2頭も器から離れます。ある日、下げた器のうち老猫のぶんにだけ、ふやかしたごはんが3割ほど残っているのに気づきました。何年も同じやり方で下げてきて、疑ったことがありませんでした。多頭飼いの家では、一日の時間割をいちばん速い子が決めています。老猫は、その時間割から少しずつ後ろへ落ちていきます。先に食べ終わらない。他の子が来ても場所を空けない。帰宅後に人のところへ来るのが最後になる。どれも年齢のせいだと片づけていましたが、実際に合わなくなっていたのは家の側の時刻のほうでした。この記事では、多頭飼いの毎日を、いちばん遅い子に合わせて組み直す5つの手順を書きます。

家の一日は、いちばん若い子の速さで回っています|多頭飼いで老猫が毎日どこから落ちるか

多頭で暮らす家には、誰も決めていない時間割があります。朝のごはんを出す時刻、器を下げる時刻、水を替える時刻、寝床の場所が入れ替わる時刻、帰宅後に人が手を出す順番。そのどれもが、いちばん先に来た子と、いちばん速く終わった子を基準にできあがっています。多頭飼いの家では、これはほぼ自然に起きます。3頭いれば3頭ぶん待つよりも、先に終わった1頭の速さで次へ進むほうが、一日が回るからです。

その基準になるのは、たいていいちばん若い子です。動きが速く、器へ来るのが早く、食べ終わるのも早い。人が帰ってきた瞬間に玄関へ出てくるのもその子です。若い子は、家の中でいちばん先に手が届く場所に、いつも立っています。悪いことをしているわけではありません。ただ、その速さが家の標準になると、そこから遅れる子が1頭だけ出てきます。

老猫です。老猫は、自分でできる量が減っています。毛づくろいで口が届く範囲が狭くなり、届かない場所は人の手に置き換わっている。つまり老猫は、多頭飼いの室内でいちばん人の手を必要としている側です。ところが時間割のほうは先着順でできているので、人の手はいちばん動きの速い子から順に配られます。必要としている量と、いちばん遠い順番に並んでいることになります。

5つとも、年齢のせいに見えます。実際、体の側の変化はあります。ただ、毎日の中で動かせるのは体のほうではなく、家の時刻のほうです。器を下げる時刻を10分だけ後ろへずらすと、残っていたごはんの量は変わります。老猫の食べる速さは変わっていません。多頭飼いの家でできることは、この差のところに集まっています。

多頭飼いの家の時間割は、何を基準に決まっているか
時間割の項目いま基準になっているもの老猫の側で起きていること
器を下げる時刻いちばん速い子が食べ終わる時刻ふやかしたぶんが残ったまま下げられます
水を替える時刻人の家事のついで飲む場所まで歩く時刻とずれています
寝床が入れ替わる時刻先に来た子空いた場所へ移るころには、また別の子が来ています
帰宅後に触る順番玄関へ来た順いちばん手が要る子が、いちばん最後になります
ブラシを出す時刻人が思い立った時刻その子が寝入っている時間に当たりやすくなります
室内が静かになる時刻若い子が遊びをやめた時刻動きはじめる時刻が、そのあとに来ます
同じ室内で、一日の進み方が2つに分かれる 多頭飼いの家では、若い子と老猫が同じ部屋で同じ時刻を過ごしています。ただ、1つのことにかかる時間が違うので、家の時間割に合っているのは片方だけです。 同じ一日を、2つの速さで過ごしています いちばん若い子 呼ばれてすぐ器へ来る 食べ終わるのが先 場所を移るのが速い 帰宅後すぐ玄関に立つ 待つことができる 老猫 器へ着くまでに間がある 食べ終わるのがあと 移るのに時間がかかる 人の手が終わったころ着く 待つと機会が消える 待てるほうに合わせると、待てないほうだけが落ちます
遅れているのではなく、家の時刻のほうが片方に合わせて作られています。
Note頭数を減らす、時間を増やす、という話ではありません

多頭飼いで時間が足りないと感じるとき、思いつくのは「1頭あたりの時間を増やす」ことです。ただ、増やせる時間があるならとっくに増やしています。それに、老猫にとっては触られている時間そのものが体力を使います。総量を増やすと、いちばん先に負担がかかるのはその子です。ここで組み直すのは量ではなく、時刻の並びのほうです。並びを変えるだけなら、毎日の総時間は今日と同じで足ります。

いちばん遅い子に合わせて時間割を組み直す5つの手順|多頭飼いの家でできること

ここからが手順です。5つありますが、1週間に1つだけ進めてください。多頭飼いの家では、変えたことの影響が他の子にも回ります。2つ同時に動かすと、どの子のどの変化が何のせいなのか、あとから読めなくなります。5週間かけると、老猫の側も、若い子の側も、1つずつしか受け取りません。

  1. 1週目:老猫が自分から動く時刻を、1日3回だけ書く

    何も変えない週です。その子が自分から立ち上がって歩いた時刻を、1日に3回だけ紙に書きます。朝・昼・夜のどこかで足ります。1週間ぶんたまると、思っていたよりはっきり時間帯が偏っているのが見えます。多頭飼いの家では、人の記憶はいちばん目立つ子のほうに残るので、書かないと分かりません。ここで書いたものが、以降4週間の土台になります。

  2. 2週目:その時刻に、他の子を別室へ15分だけ移す

    1週目で見えた時間帯のうち、いちばん多かった1つを選びます。その時刻に、他の子だけを別の部屋へ移して、扉を15分だけ閉めます。おやつでも、遊びでも、誘導のしかたは何でも構いません。老猫の側は何も変えません。移動もさせず、呼びもしません。その15分のあいだ、室内でその子が使える場所が広がる、というだけの週です。

  3. 3週目:老猫のための3つを、動かさない場所に固定する

    器・水・寝床の3つを、その子が2週目に歩いた経路の上に置き直して、そこから動かさないと決めます。多頭飼いの家では、物の位置は若い子の遊びと掃除の都合でよく動きます。動くこと自体は問題ありませんが、老猫のぶんの3つだけは固定します。歩く距離が短くなるのではなく、毎日同じ場所にある、という点が効きます。探す時間が要らなくなります。

  4. 4週目:人が触る時刻を、その15分の中へ入れる

    ここまで来て、初めて手を出します。触る回数は増やしません。いま帰宅後にやっている手入れを、そのまま2週目に決めた15分の中へ移すだけです。他の子は別室にいるので、順番待ちが起きません。触るのはあごの下、背中の真ん中、尾のつけ根の3か所。毛の流れに沿って一往復ずつで足ります。水は使いません。布を手のひらで温めてから当てると、驚かせずに済みます。

  5. 5週目:若い子には、離れた時刻を割り当てる

    最後に、若い子のぶんを別の時刻へ切り出します。老猫の15分の直前や直後ではなく、できるだけ離れた時刻にしてください。近いと、扉が開いた勢いのまま老猫の場所へ入っていきます。若い子は待てます。老猫は待つと、その日の機会がそのまま消えます。多頭飼いの毎日で、時刻の遠さがそのまま手当てになるのはここです。

5週間で、家の時間割はどう動くか 1週に1つだけ動かします。老猫の側で先に変わるのは触られる量ではなく、待たなくてよくなる場面の数です。 週の区切りはおおよそです。前の週が落ち着いていなければ、そのまま延ばしてください 1週目 書くだけの週 自分から動いた時刻を1日3回書く 2週目 他の子を15分だけ移す 老猫の側は何も変えないままにする 3週目 器・水・寝床を固定する 経路の上に置き、そこから動かさない 4週目 触る時刻を15分の中へ 回数は増やさず、時刻だけ移す 5週目 若い子に別の時刻を割る 老猫の15分から離れた時刻にする
動かしているのは手の量ではなく、時刻の並びです。
5週間で、老猫の側から何が減るか
いつやること老猫の側で減るもの
1週目動いた時刻を1日3回書く何も変えない週。基準ができます
2週目他の子を15分だけ別室へ他の子を避けるために止まる回数
3週目器・水・寝床を固定する毎回どこにあるかを探す時間
4週目触る時刻を15分の中へ移す順番待ちのあいだに寝入ってしまう回数
5週目若い子に別の時刻を割る扉が開いた直後に場所を明け渡す回数

5つ全部をやりきる必要はありません。多頭飼いの家では、途中で誰かの通院や来客が入って、週が飛ぶこともあります。1つだけ選ぶなら2週目です。他の子を15分だけ別室へ移すのは、老猫の側に何も足さずに、その子が使える室内を広げられる唯一の手だからです。逆にいちばん後回しでよいのが4週目です。触る時刻を移すのは、場所と順番が落ち着いてからで間に合います。

上げるのは触る頻度ではなく、時刻の数のほう|多頭飼いで老猫の頻度がずれるところ

手順を読んで最初に起きるのは、たいてい「老猫のぶんを増やそう」という動きです。多頭飼いでは1頭あたりの時間が頭数で割られているので、割を食っている子に足したくなる。ここが、この組み直しでいちばんつまずくところです。頻度を上げると、老猫の側では手当てが増えるのではなく、触られている時間が増えます。年齢が上がるほど、その時間そのものが体力を使います。

多頭飼いの毎日で、上げていい頻度と上げないほうがいい頻度
内容そう決める理由
上げないブラシを当てる回数同じ姿勢でいられる長さのほうが先に尽きます
上げない拭き取りの回数皮膚に触れる回数そのものが条件になります
上げない新しいやり方を試す回数受け入れるかどうかを確かめる余裕がありません
上げない呼んで来させる回数呼ばれて動くのは、その子の時刻ではありません
上げる別室にする時刻の数1日1回を、朝と夜の2回に増やすほうが効きます
上げる動いた時刻を書く頻度月に1回、1週間ぶんだけ取り直します
上げる器の残りを見る頻度毎日。下げる時刻を決める材料になります
上げる水の減り方を見る頻度毎日。いちばん早く出る変化です

上げるのは、手の頻度ではなく時刻の数です。15分の枠を1日1回から2回にするほうが、1回の中で触る量を倍にするよりずっと軽く済みます。枠が2つあれば、片方でその子が寝ていても、もう片方が残ります。多頭飼いの家では、老猫がいちばん確実に起きている時刻を狙うより、枠を2つ置いて外れを許すほうが、結果として届く回数が増えます。

別室の15分を延ばしたくなる日もあります。30分を超えると、今度は別室にいる子の側が崩れます。扉の前で鳴く、戻った瞬間に走る、老猫の場所へまっすぐ入る。そうなると、せっかく空けた15分の意味が、そのあとの5分で消えます。延ばすのではなく、枠の数を増やす。多頭飼いのコツは、どの子にも同じ長さを配ることではなく、ぶつからない時刻を用意することのほうにあります。

もう1つ、時期によるずれがあります。1週目に書いた時刻は、その週のものです。暑い時期と涼しい時期では、老猫が動く時間帯は前後します。室内の空気の流れが変わる日や、家族の生活時間が変わった月も同じです。月に1回、1週間だけ書き直してください。手順をやり直す必要はありません。2週目に決めた15分の位置を、書いたものに合わせて動かすだけです。

Point多頭飼いの記録は、頭数ぶん書かない

全頭ぶんの記録を毎日つけようとすると、3日で止まります。書くのは老猫の1頭ぶんだけで足ります。他の子は、その子の時刻とぶつかったときだけメモに残す。多頭飼いの家で記録が続かないのは、書くことが多いからではなく、全部を同じ密度で書こうとするからです。基準にする1頭を決めると、紙は1週間で1枚に収まります。

若い子の時間を、離れた時刻へ切り出すコツ|多頭飼いと老猫が同じ室内で暮らす

最後に、若い子の側の話をします。ここまで読むと、若い子のぶんを削っているように見えるかもしれません。実際には逆で、若い子にはっきりした時刻を渡すのが、この組み直しのいちばん確実な部分です。いまの時間割では、若い子は「先に来たから触ってもらえる」という形で手を受け取っています。それは毎日成り立つ保証がありません。時刻で渡せば、先着でなくても届きます。

においについても、多頭飼いでは順番が効きます。室内でにおいが変わったとき、原因を頭数に求めたくなりますが、実際には、いちばん毛づくろいが届いていない子の周りから変わります。老猫の背中の真ん中や尾のつけ根は、そこが最初に出る場所です。体を洗う回数を増やす前に、その3か所だけを毎日の15分の中で確かめてください。多頭飼いの家では、全頭に手を広げるほど、どこから変わったのかが読めなくなります。

毎日の15分の中で手を入れるのは、布を当てる範囲で足ります。あごの下と背中の真ん中を、毛の流れに沿って一往復。汚れを落としきるためではなく、その子の毛の向きを起こしておくためのものと考えてください。老猫は、触られている時間そのものが負担になります。1か所あたり20秒で切り上げるほうが、翌日も同じ時刻に受け入れてもらえます。

洗う日は、別に考えます。老猫が毛づくろいで口の届く範囲は、年々狭くなっています。背中の真ん中と尾のつけ根は、その子の側ではもうどうにもなりません。ここは人が代わるしかない場所です。うちで使っているのは mofuwa 入浴シャンプー です。お湯に溶かして使うので、被毛をかき分けて泡を届かせる工程がなく、擦らずに地肌までむらなく届きます。この記事でずっと数えてきたのは、老猫が触られている時間の長さでした。擦る手が要らないぶん、その時間はいちばん短く済みます。全身が難しい子なら、桶にお湯を張って、尾のつけ根とおしりのまわりだけでも構いません。多頭飼いの家では、洗う日も他の子を別室へ移してから始めると、扉の外で待たせる時間が生まれません。

Caution時刻を変えても戻らない変化は、動物病院にご相談ください

時間割を組み直して2週間たっても、器に残る量が増え続けている、水を飲む量が明らかに増えた、体重が落ちている、トイレの回数が変わったまま、同じ場所をなめ続けている、触ると声を出す、若い子から離れて隠れる時間が長くなった。こうした変化があるときは、手入れの頻度を上げる前に動物病院にご相談ください。多頭飼いの家では、1頭の変化が他の子の行動に紛れて見えにくくなります。書きためた時刻の紙と、器の残り方のメモを持っていくと、その場で切り分けてもらえます。迷ったときは早いほうを選んでください。

多頭飼いの家で老猫と暮らすというのは、頭数ぶんの手を用意することではありませんでした。用意するのは、いちばん遅い子が間に合う時刻を1つ確保して、そこを他の子と重ねないことです。1週目に時刻を書き、2週目に他の子を15分だけ移し、3週目に3つを固定し、4週目に触る時刻をその中へ入れ、5週目に若い子へ別の枠を渡す。毎日の総時間は、始める前と変わりません。変わったのは、老猫が待たなくてよくなった場面の数のほうです。

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よくある質問

多頭飼いで、老猫が動く時刻がどうしても読めません。どうすればいいですか。
1週目の記録を、朝・昼・夜の3回にしぼって、時刻ではなく「起きていたかどうか」だけを書いてみてください。多頭飼いの家では、他の子の動きに紛れて老猫の動きが見えにくくなります。1週間ぶんたまると、少なくとも起きている確率の高い時間帯が2つか3つに絞れます。そのうち、家族が家にいる時間と重なるほうを選べば足ります。
他の子を別室にすると鳴いてしまいます。続けても大丈夫でしょうか。
15分を超えないこと、扉を閉める前に何か1つ渡すこと、この2つで多くは落ち着きます。それでも鳴くようなら、扉を閉めずに、人が若い子の側についているだけでも構いません。目的は隔てることではなく、老猫のいる場所に他の子が入ってこない15分をつくることです。多頭飼いでは、扉より人の位置のほうが効くこともあります。
触る時刻を移したら、老猫が寝ていて触れない日が増えました。
枠を1日2回に増やしてください。1回の中で無理に起こすより、外れる日があることを前提に枠を2つ置くほうが、老猫には楽です。寝ているなら、その日はそのままにして構いません。多頭飼いの毎日では、毎日必ず届くことより、無理に起こさない日があることのほうが、長い目で見て続きます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。