C09シーン別・暮らし
保護犬・保護猫を迎えたを楽にする、はじめて犬を迎えた人の毎日の習慣
初めて犬を迎えて3日目の夜、ノートの見開きに2ページぶんの助言が並んでいました。左のページには「毎日体に触って、ブラシと足拭きを早いうちに日課にする」。右のページには「最初の数週間はこちらから触りに行かない」。うちに来たのは保護犬で、犬と暮らすのはこれが初めてでした。どちらの助言も、信頼できる出どころから同じ日に書き写したものです。ところが並べてみると、逆のことを言っています。初めて犬を迎える人が保護犬を迎えると、この食い違いが最初につまずくところになります。犬と暮らした経験がないので、どちらが自分の家に当てはまるのかを決める材料がありません。その夜にやったのは折衷でした。少しだけ触って、少しだけ待つ。いま思うと、いちばん選んではいけない形でした。この記事は、2つの助言のどちらも正しくて、書かれていなかったのは順番のほうだった、という8週間の話です。
同じ日にノートへ書き写した2つの助言が、逆を向いていました|初めて保護犬を迎える人の経験
初めて犬を迎えると決めてから、読むものが一気に増えました。飼い方の本、動物病院で渡された紙、譲渡のときに聞いた話、同じように犬と暮らしている人の書いたもの。読んだそばからノートに書き写していたのですが、迎えて3日目に見返して、内容が2つの向きに分かれていることに気づきました。片方は「早く始めなさい」と言い、もう片方は「まだ何もしなくていい」と言っています。
困ったのは、どちらも間違っているように見えなかったことです。早いうちに体に触っておくほうがいい、という話には理由が書いてあります。あとから始めるほど、触られること自体を受け入れにくくなる。一方で、迎えてすぐは待つほうがいい、という話にも理由が書いてあります。場所も人も音も全部が変わった直後に手を出すと、そのぶん落ち着くのが遅くなる。初めて犬を迎える人には、この2つの理由を比べる物差しがありません。どちらも、読めばそのとおりだと思ってしまいます。
- 触る頻度:毎日決まった時間に触る/こちらからは触らない
- 名前を呼ぶ回数:たくさん呼んで覚えさせる/呼びすぎない
- ブラシを始める時期:初日から短く始める/受け入れるまで出さない
- 散歩を始める時期:早く外に出して慣らす/家の中が落ち着いてから
- 来客:いろいろな人に会わせる/しばらく人を呼ばない
- 体を見るタイミング:毎日全身を確かめる/必要なとき以外は触らない
6項目とも、真ん中がありません。片方をとれば、もう片方は0になります。それで、その夜は折衷を選びました。1日に1回だけ、10秒だけ触る。名前は必要なときだけ呼ぶ。ブラシはまだ出さない。自分では慎重にやっているつもりでした。ただ、その子の側から見ると、来る日と来ない日がある人になっていました。10秒だけ触られて、そのあと放っておかれる。翌日は触られない。次の日はまた触られる。予測がつきません。
| 項目 | 早く始める側の言い分 | まず待つ側の言い分 | 初めての人が困るところ |
|---|---|---|---|
| 体に触る | 受け入れる幅は早いほど広がる | 変化が重なっている時期に足さない | どちらも理由が具体的で選べません |
| 日課にする | 毎日同じ形にすると覚える | こちらの都合で形を決めない | 毎日やるかやらないかが逆です |
| 外へ出す | 外の音と人に早く触れておく | 家の中に居場所ができてから | 何日目からなのかが書いてありません |
| 人に会わせる | 会う人が多いほど幅が広がる | 人が増えるほど落ち着きが遅れる | 来客の予定を入れられません |
| 道具を出す | 早く見せておくほど驚かない | 道具は最後でいい | 買ったものを使えないままになります |
この時点でいちばんやりたくなるのは、片方を「古い」「合わない」と決めて捨てることです。実際にやってみると、捨てたほうの助言が必要になる日が必ず来ます。初めて犬を迎える家では、捨てた側をもう一度拾い直す手間のほうが大きくつきます。この記事では、どちらも捨てません。2つとも残したまま、置く場所を分けます。ノートの見開きが2ページに分かれていたのは、実は正しい形でした。足りなかったのは、どちらを先にめくるかという指示だけです。
2つの助言は、別々の読み手を想定しています|初めて犬を迎えるのと保護犬を迎えるのが重なる背景
食い違いの理由は、しばらくたってから分かりました。2つの助言は、それぞれ違う人に向けて書かれています。そして、どちらの文章にも「誰に向けて書いたか」は書かれていません。だから、自分が宛先から外れていることに気づけないまま、両方を自分あてのものとして読んでしまいます。初めて犬を迎える人が保護犬と暮らしはじめたとき、この二重の外れ方が起きます。
「初めて犬を飼う人へ」と書かれた情報の多くは、迎えることが前から決まっていた犬を前提にしています。生後数か月で、人の手のそばで育ってきた途中にいる犬。その前提なら、早いうちに触ることを日課にする、という助言はそのまま通ります。人に触られる経験を積んでいる最中なので、続きを引き受ける形になるからです。前提が書かれていないのは、書き手にとってそれが当たり前だからです。
もう一方、「保護犬を迎えるときは」と書かれた情報は、犬と暮らした経験のある人が読むことを前提にしています。よく見ると、その多くが比較の形をしています。ふだんより待つ、いつもより静かに、これまでの犬と同じようにはいかない。比較の相手を持っている人にしか使えない書き方です。初めて犬を迎える人には、比べる相手がそもそもありません。「ふだんより待つ」と言われても、ふだんを知らないので、どのくらい待てばいいのかが決まりません。
| 想定している読み手 | 書かれていない前提 | 初めて保護犬を迎える家での外れ方 | |
|---|---|---|---|
| 早く始める側 | 初めて犬を迎える人 | その犬が、人の手のそばで育ってきた途中にいること | 手を出す時期だけが早く来ます |
| まず待つ側 | 犬と暮らした経験のある人 | 読み手が比較の相手を持っていること | どこまで待つのかが決まりません |
| どちらにも共通 | ― | 2つを同時に読む人がいること | 同じ日に、逆向きの指示として届きます |
ここで大事なのは、うちの子が特別だからうまくいかない、と考えないことです。外れているのは犬のほうではなく、読んでいる文章の宛先のほうでした。初めて犬を迎えることと、保護犬を迎えることが重なった家は、どちらの前提にも収まりません。それだけです。うまくいかない理由をその子の側に探しはじめると、次に起きるのは、以前この子がどうしていたのかを想像することです。
そこは、はっきり止めておいたほうがいいところです。以前どうしていたかは分かりません。分からないものを埋めようとすると、想像した話に合わせて手当てを決めることになります。手当ての根拠が想像になると、うまくいかなかったときに何を変えればいいのかも分からなくなります。初めて犬を迎える人ほど、ここで足場を失います。分からないことは、分からないまま置いておく。手元にあるのは、いま目の前にいるこの子が今日どう動いたか、それだけで足ります。
待つのが先で、慣らすのは後|初めて保護犬を迎える家で、順番が入れ替わる理由
結論を書きます。2つの助言は、どちらも正しいです。並べる順番だけが抜けていました。待つのが先で、慣らすのは後です。順番がある、と分かった時点で、6つの食い違いは全部消えます。どちらを採るかの問題ではなくなって、いつ切り替えるかの問題に変わるからです。
なぜこの順番になるのか。慣らすという作業は、こちらの手が来ることをその子が先に予測できていないと、そもそも成り立ちません。予測できない手が毎日来ると、慣らしているつもりで、驚かせる回数を増やしていることになります。予測がつくようになるまでにかかる時間が、待つという工程です。人の手のそばで育ってきた途中にいる犬なら、この工程はすでに進んでいます。だから「初めて犬を飼う人へ」の情報では省略されています。省略されているだけで、なくなってはいません。
そこで、ノートの2ページをそのまま使うことにしました。紙を1枚、縦線で2つに割ります。左が「いま」、右が「あとで」。集めた助言を、どちらかに書き写していきます。仕分けの基準は1つだけにしました。こちらが手を出す必要があるかどうか。出す必要がないものは左、手を出すものは右です。迷ったら右に置きます。
| 左の箱(いま) | 右の箱(あとで) | |
|---|---|---|
| 中身 | 寝る場所を1か所に決める | ブラシを当てる |
| 中身 | ごはんの時刻を固定する | 足を拭く |
| 中身 | 出す人をいつも同じにする | 体をひととおり触る |
| 中身 | その子の通り道をふさがない | 抱き上げる |
| 中身 | 声の大きさを一日じゅう一定にする | 来客に会わせる |
| 中身 | 毎日、触らずに見るだけの10秒 | 水を使うケアを始める |
| 共通点 | こちらが手を出さなくてできる | こちらが手を出す必要がある |
| 日付欄 | なし。今日から全部やる | あり。空欄のまま置いておく |
右の箱の項目には、日付を書く欄を空けておきます。埋めるのは、条件を満たした日です。条件も1つだけに決めました。その子のほうから、人のいる部屋へ入ってきた回数が、2週続けて前の週より多いこと。数え方は、一日の終わりに紙の隅へ正の字を1画足すだけ。10秒で終わります。距離や時間ではなく回数にしたのは、そこにこちらの働きかけが混ざらないからです。呼んだら来た回数は数えません。自分で決めて動いた回数だけを数えます。
右の箱を開けるときも、一度に全部は開けません。1週間に1つずつです。足を拭くのを開けた週は、ブラシはまだ閉じたまま。初めて犬を迎える人ほど、条件を満たした嬉しさで一気に進めたくなりますが、同じ週に2つ開けると、うまくいかなかったときにどちらのせいか分かりません。1つずつなら、合わなければその1つを閉じ直すだけで戻せます。
皮膚と被毛のケアも、右の箱に入っています。ただし、右の箱に入れたまま何もしないわけではありません。触らずに見るだけの10秒は、左の箱に入れて初日からやります。毛の向きが寝ている面があるか、地肌の色が変わっている場所があるか、耳を振る回数が増えていないか、足の裏をなめていないか。見るだけなら、その子に近づかなくてもできます。手を出すのは右、目で見るのは左。この線引きが、初めて犬を迎える家でいちばん役に立ちました。
8週間で変わったのは犬のほうではなく、こちらの基準でした|初めて保護犬を迎える家に起きた変化
紙を作ったのは、迎えて1週目の終わりでした。そこから8週間、右の箱の日付欄がどう埋まっていったかを書きます。数字はうちの1頭のものなので、そのまま当てはまるとは限りません。ただ、埋まっていく形そのものは、たぶんどの家でも似ています。
| 週 | 自分から部屋へ来た回数 | その週にやったこと | 右の箱 |
|---|---|---|---|
| 1〜2週 | 12回 → 14回 | 左の箱だけ。見るだけの10秒を毎日 | 全部空欄のまま |
| 3週 | 14回 → 19回 | 同じ。2週続けて増えました | 空欄。翌週まで待ちます |
| 4週 | 19回 → 21回 | 足を拭くを1つだけ開けました | 1つ目に日付が入りました |
| 5〜6週 | 21回 → 24回 | 足拭きを続けたまま、ブラシを開けました | 2つ目に日付 |
| 7週 | 24回 → 23回 | 減ったので、新しくは開けませんでした | そのまま |
| 8週 | 23回 → 27回 | 体をひととおり触るを開けました | 3つ目に日付 |
7週目で回数が減っています。ここで開けなかったのが、いま振り返るといちばん効きました。減った週に進めなかったのは、こちらの判断ではなく、紙に書いた条件がそう決めていたからです。初めて犬を迎える人が持っていないのは、まさにこの判断の部分でした。他人の助言では埋まりません。自分の家の紙の上でしか作れないものでした。
毎日のケアを始めたのも、4週目に足拭きの欄が埋まってからです。それも、水を使うところからは始めませんでした。足を拭くのは、汚れを落としきるためというより、こちらの手が伸びている時間を毎日同じ長さに切りそろえるためでした。迎えたばかりの家では、床の感触も、人の動く速さも、部屋のにおいも、その子にとっては全部が新しいものです。そこへ道具のにおいをもう1つ足すと、覚えることが1つ増えます。mofuwa スキンケアミストは、香料・アルコール・着色料など8つを入れていない電解水100%のミストなので、布に移しても、その日の部屋のにおいが変わりません。1本の足につき10秒、四つ足で40秒。布に含ませて足の先から一往復、始める時刻は毎日そろえました。長くやるほど、その子にとっては予測しにくい時間が延びます。水を使って洗ったのは、8週目の欄が埋まったあとでした。
ここまでが順番の話で、順番と関係なく最初からやることも1つあります。体の変化を待たない、ということです。皮膚が赤い、同じ場所をなめ続けている、被毛が抜けた面がある、耳を振る回数が増えた、食欲が落ちている、下痢が続いている。こうしたときは、待つ期間の途中でも動物病院にご相談ください。待つのは慣らす工程についての話であって、体に出ている変化を待つという意味ではありません。初めて犬を迎える人ほど、どこまでが普通なのか分かりません。迷ったときは、早いほうを選んでかまいません。
右の箱を開ける条件は、慣らす工程を進める順番を決めるためだけに置いたものです。体の側に変化があるときは、条件を満たしていなくても動物病院が先になります。受診のときは、迎えてから何週目か、その週に自分から部屋へ来た回数、右の箱で何を開けたかの3つをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらいやすくなります。以前どうしていたかは分からないままで構いません。分からないと伝えることも、立派な情報です。
8週間たって、いちばん変わったのは犬のほうではありませんでした。回数は12回から27回になりましたが、その子は8週間ずっとその子のままです。変わったのは、こちらの側にできた基準のほうでした。初めて犬を迎えたときに持っていなかった「どこまでが普通か」の物差しが、他人の助言ではなく、自分の家の紙の上に1本できていました。
最初のノートに戻ります。左のページと右のページは、どちらも正しいことを書いていました。抜けていたのは、左をいつめくって、右をいつめくるかという一行だけです。初めて犬を迎える人が保護犬と暮らしはじめたとき、いちばん迷うのはそこでした。待つのが先で、慣らすのは後。切り替える日は、他の誰でもなく、その家の1頭が決めます。紙と正の字だけあれば、その日は自分で分かります。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
