C09シーン別・暮らし

動物病院に行く日を楽にする、保護犬・保護猫を迎えた人の毎日の習慣

公開日 2024年10月19日|文=mofuwa編集部

明るく静かな部屋で、淡い色の毛布の上にひとりで落ち着いて休んでいる淡い色の猫
病院から帰った日にいちばん役に立つのは、手を出さずに空けておく場所と時間のほうです。写真:Betül Şengel/Pexels

迎えて9日目の午前、はじめての動物病院で、その子は10分ほどのあいだに知らない人の手で体じゅうを触られました。耳を持ち上げられ、口のまわりを見られ、腹を触られ、足を1本ずつ持ち上げられました。こちらは横で名前を呼んでいただけです。帰りの車の中で気づいたのは、その日まで家では、背中に手を置くところまでしかできていなかったということでした。保護犬・保護猫を迎えると、体の確認が先に来ます。だから、家で触れるようになるより先に、病院で触られる日が来ます。順番が入れ替わるのは、迎えた側の落ち度ではありません。ただ、入れ替わっていることを知っているかどうかで、帰ってきた日の過ごし方が変わります。この記事は、ペットとの最初の数週間で、動物病院に行った日だけを別扱いにするという話です。

家ではまだ背中までなのに、病院では10分で体じゅうを触られた|迎えて9日目の動物病院

その日までに家でできていたことを、正直に書きます。名前を呼ぶと顔を上げる。ごはんの器を置くと出てくる。背中に手を置くと、3秒くらいはそのままでいる。できていたのはここまでです。腹も、足も、耳も、まだ一度も触っていません。触ろうとすると体を引くので、こちらから伸ばすのをやめていました。迎えて9日目の家としては、たぶんふつうの進み方だったと思います。

動物病院の診察室では、その進み方は関係ありません。体を見てもらうために来ているので、家で9日かけて背中までしか進んでいない距離を、10分で通過します。台の上に乗せられ、耳を持ち上げられ、口のまわりを見られ、腹を触られ、足を1本ずつ持ち上げられる。どれも必要なことで、順番を変えられるものでもありません。ただ、その子の側から見ると、この日が「知らない人に体じゅうを触られた日」になります。

帰ってからのことも書いておきます。キャリーを床に置いて扉を開けると、その子はすぐには出てきませんでした。出てきたのは40分ほどたってからで、部屋のいちばん奥の家具の裏に入って、そこから4時間出てきませんでした。こちらは心配になって、何度も名前を呼び、様子を見に行き、水の器を近くへ運びました。いま振り返ると、この日のこちらの動きが、いちばんよくなかったところです。

Note何をされたかではなく、どこを触られたかだけを持ち帰る

診察の中身は、動物病院で説明を受けたとおりに受け止めれば足ります。家に持ち帰るのは、その子の体のどこに人の手が当たったか、それだけで構いません。耳、口のまわり、腹、四肢。この4つを覚えておくと、翌日から家でどこを避けるかが決まります。保護犬・保護猫を迎えたばかりの家では、ペットの側の判断材料をこのくらい少なくしておいたほうが動けます。

迎えた側の事情で、触られる順番が先に来る|保護犬・保護猫とペットの通院が重なる理由

順番が入れ替わるのには、はっきりした理由があります。保護犬・保護猫を迎えたら、体の状態をなるべく早く確認しておきたい。これは迎えた側として当然の判断で、実際そうしたほうがいい場面がほとんどです。予定は人の都合で決まり、多くの家では迎えて1週間から2週間のうちに1回目が入ります。その子の側に、慣れるための時間は入っていません。

一方で、家のほうの進み方は、その子が決めています。こちらが早く進めることはできず、触れる場所は1週間に1か所ずつくらいしか増えません。だから、迎えて9日目の家の手は、背中1か所です。動物病院で当たる手は、耳・口のまわり・腹・四肢の4か所以上です。同じ時期に、この2つが並びます。順番の入れ替わりというのは、この差のことです。

迎えて2週間のあいだに、家の手と病院の手が届く範囲
家で触れている場所動物病院で当たる場所その子から見た違い
1日目〜3日目触っていない—人がいる、というだけの段階です
4日目〜9日目背中に手を置く(数秒)—終わりを自分で決められます
9日目(通院)背中のまま耳・口のまわり・腹・四肢終わりを人が決めます
帰宅した日の夜触らない—空いている時間ができます
10日目〜14日目背中に手を置く(数秒)—前の日と同じに戻ります
2回目の通院まで1週間に1か所ずつ—家の側だけが少しずつ進みます

ここで書いておきたいことが1つあります。この記事では、その子が前にどこで、どう暮らしていたかは推測しません。触られるのを避けるのは、それまでの経験のせいかもしれないし、ただ知らない場所と知らない人が続いたからかもしれません。分からないことを想像して当てはめると、家でやることが増えるばかりで、その子の側は何も変わりません。分かっているのは、この家で何をしたかと、そのあとその子がどうしたか、この2つだけです。保護犬・保護猫を迎えた人にとって、判断に使えるのはこの2つで足ります。

もう1つ、迎えた側の気持ちの動き方も入れておきます。通院のあと、多くの人は「もっと家で触れるようにしておけばよかった」と思います。ただ、それは順番の話であって、間に合わせられる種類のものではありません。9日で全身に触れる家はほとんどありません。間に合わせようとして家の手を急に増やすと、病院で触られた日と家で触られた日が続くことになって、その子の側では区別がつかなくなります。ペットの側から見ると、家と病院が同じ場所になってしまいます。

帰った日は、家でペットに触らないと決める|触られた記憶を家の記憶にしないための考え方

1回目の通院のあと、2回目から変えたのはここです。動物病院から帰った日は、家では一切触りません。拭かない、ブラシを入れない、抱き上げない、のぞき込まない。名前を呼ぶのも、その日は3回までと決めました。触らないことを「何もしていない」と感じるかもしれませんが、この日にかぎっては、これが手当てそのものになります。

理由は単純です。病院で体じゅうを触られた数時間後に、家でも人の手が伸びてくると、その2つは同じ出来事として並びます。その子には、片方が診察でもう片方が毎日のケアだという区別がつきません。触られた記憶を家の記憶にしないためには、その日だけ家の手を止めるのがいちばん確実です。翌日にはまた、いつもの背中に戻せます。

  1. キャリーの扉を開けたら、人がその場から離れる

    扉を開けたまま、こちらは部屋を出ます。出てくるところを見なくて構いません。のぞき込む姿勢は、その子から見ると上から近づいてくる形になります。40分でも4時間でも、出てくる時刻はその子が決めます。

  2. その子が入った場所を、その日は動かさない

    家具の裏でも、キャリーの中でも、そこがその日の場所です。水の器も、寝床も、動かさないでください。良かれと思って近くへ移すと、その子から見れば「また何かが変わった」になります。動かさないことが、いちばん静かな手当てです。

  3. 声をかける回数を、あらかじめ決めておく

    3回と決めました。帰った直後、夕方、寝る前。回数を決めておかないと、心配なぶんだけ増えます。呼ばれるたびに、その子は動くか動かないかを判断することになります。判断の回数を減らすのが目的です。

  4. その日の家事を、その子のいる部屋から外す

    掃除機、洗濯物をたたむ、荷物を運ぶ。音と動きが出るものは、別の部屋に寄せます。時間を空けるというのは、こちらが何もしない時間を作るという意味です。人が動かない部屋が1つあれば足ります。

  5. 翌朝から、前の日と同じ手に戻す

    特別なことをして埋め合わせません。背中に手を置いて、3秒で離す。通院の前とまったく同じ形に戻すのが、その子にとっていちばん分かりやすい合図になります。

「帰った日こそ、体を拭いたほうがいいのでは」と思われるかもしれません。よその場所へ行った日なので、その気持ちは分かります。ただ、迎えて間もない保護犬・保護猫では、拭くこと自体がまだ触られることの一種です。家の手が背中までしか進んでいない段階で、足や腹を拭こうとすれば、その日2回目の全身の接触になります。ペットの体をきれいにする話と、その子が家をどう覚えるかの話は、この時期にかぎっては後者を優先していい場面です。

Point床とキャリーの側なら、その日でも手を入れられます

触らないと決めても、こちらが何もできないわけではありません。その子が入っていない側、つまり床・敷いている布・キャリーの外側は、いつ手を入れても構いません。その子が別の部屋にいるあいだに、玄関からその子の場所までの床を拭いておく。においが気になるなら、消臭のスプレーは人の動線側だけに使う。手を入れる先を体からものへ移すと、その日を「何もしなかった日」にしなくて済みます。

翌日から、家の手と病院の手を別物に戻す|保護犬・保護猫のペットケアを毎日の側に置き直す

翌日からやることは、増やしません。家の手が病院の手と違うということが、その子の側で分かる形にしておくだけです。違いは3つあります。長さが短いこと、場所が毎回同じであること、終わりをその子が決められること。この3つを守っているかぎり、家の手は病院の手と混ざりません。

家の手と、動物病院での手の、その子から見た違い
家でやる手動物病院で当たる手分けておく意味
長さ3〜5秒10分ほど続く短さそのものが合図になります
場所毎回同じ1か所耳・口のまわり・腹・四肢次に何が来るか分かります
終わり方その子が動いたら終わり人が決める自分で終われる経験が残ります
姿勢横か、少し後ろから台の上で正面から覆いかぶさる形になりません
回数1日1回その日だけ毎日あるものになります
水を使うか使わない—乾かす時間が要らず、短く終われます

「その子が動いたら終わり」は、いちばん大事な行です。こちらが終わりを決めていると、家の手はいつまでも病院の手と同じ構造のままです。3秒たっていなくても、体をひねったらそこで離す。物足りなく感じても、そこで終わります。この積み重ねで、家の手は「自分で終われるもの」に変わっていきます。保護犬・保護猫を迎えた家で、最初の1か月にペットとのあいだで作っておきたいのはこの1点です。

触れる場所が1か所から2か所へ増えるのは、早くて2週間後、遅ければ2か月後です。増やす順番は、背中から胸の下、次に肩、そのあとで足の先。耳と口のまわりと腹は最後に回します。動物病院で当たった場所と同じところを家で早めに触りにいくと、その子の中でつながってしまいます。あえて遠いところから広げてください。

水を使わない形にしておく理由も書いておきます。迎えて間もない時期は、洗う手順を一式やりきるだけの下地がまだありません。洗えば濡れて、濡れれば乾かす時間が要り、そのあいだずっと押さえていることになります。いまその子に手を置けるのは背中の1か所だけで、そこも3秒で離すと決めています。触れる場所が1か所しかない家では、そこで使うものも1つに決めておいたほうが迷いません。使っているのは mofuwa スキンケアミストです。耳のまわりでも口のまわりでも肉球でも、置く場所を選ばずに使えます。選ばずに済むのは、中身が電解水100%で、口に入ってしまう場所を最初から想定してつくられているからです。乾いた布に少し吹きつけて、背中を毛の流れに沿って一往復。3秒で終わります。皮膚や被毛のためというより、短く終われる形を毎日そこに置いておくための使い方です。触れる場所が背中から胸の下、肩、足の先へ広がっていっても、持ち替えるものも、増える手順もありません。

3回目の通院までに変わったこと|動物病院に行く日を、ペットの暮らしの中へ戻していく

記録は2行だけ取りました。通院した日付と、帰宅してからその子が出てくるまでの時間です。体重や食べた量ではありません。ペットの記録というと体重や食事量を思い浮かべますが、保護犬・保護猫を迎えた最初の数か月で、こちらが動かせるのは家の側の条件だけです。だから、見るのもその1つに絞りました。

3回の通院で、帰宅後にその子が出てくるまでの時間
帰った日にやったこと出てくるまでその日の夜のようす
1回目名前を呼ぶ・のぞき込む・器を動かす4時間夜のあいだも出てこず
2回目触らない・場所を動かさない・声は3回1時間20分寝る前に水を飲みに出てきた
3回目同じ25分夕方には自分の場所へ戻った

2回目と3回目でやったことは同じです。変えたのは1回目とのあいだだけで、そこから先は何も足していません。足さなかったから短くなった、と言い切るつもりはありませんが、少なくとも、こちらが動かなかった日のほうがその子は早く出てきました。ペットの側に何かをするより、家の側で何をやめるかのほうが効いた、というのがこの3回で分かったことです。

副産物もありました。3回目のころには、家で触れる場所が背中と胸の下の2か所になっていました。通院の日に家の手を止めたぶん、家の手が「毎日あって、短くて、必ず終わるもの」に固まったからだと思っています。回数を増やしたわけでも、時間を長くしたわけでもありません。動物病院に行く日だけを別扱いにしたことが、結果として毎日の側を安定させました。

最後に、この記事の範囲の外にあることを書いておきます。触られるのを避ける、隠れて出てこない時間が回を追って長くなる、食べる量が戻らない、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた。こうした変化が続いているときは、家での触れ方を工夫する前に動物病院にご相談ください。迎えて間もない時期は、その子にとってのふつうがまだ決まっていないので、こちらの側でも判断がつきません。通院の日付と、帰宅後に出てくるまでの時間を書いたメモを持っていくと、そのまま材料になります。

保護犬・保護猫を迎えた家では、最初の通院がどうしても家の手より先に来ます。先に来ること自体は変えられませんが、その日を家の記憶と混ぜないことは、こちらの側で決められます。帰った日に手を止める。翌日から前と同じ形に戻す。動物病院に行く日を、ペットの暮らしの中の特別な1日として置いておくと、残りの29日が静かになります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。