C05犬種・猫種別ケア

ケアーンテリアはなぜ毛のもつれが起きやすいのか。ワイヤーコートから考える

公開日 2024年12月17日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の中で、淡い色の地面にごわついた毛の小型犬が立っている
擦れても切れないように作られた毛は、絡んだあとも同じ丈夫さで残ります。

ケアーンテリアの毛を1本つまんで、親指と人差し指で毛先まで送ってみると、途中で折れずに、指の先まで通っていきます。途中でぷつりと切れることがありません。硬く、太く、毛先まで張りが残ったままです。この犬種のもつれの話は、毛が弱いからではなく、毛が丈夫だからという側から始まります。もつれは、絡むところまでは他の犬種と同じように起こります。違うのはそのあとです。多くの被毛では、絡んだ毛の一部が日々の動きの中で切れ、切れたぶんだけもつれが小さくなったり、床へ落ちたりします。ケアーンテリアの毛は切れません。一度絡んだら、人がほどくか、根元から抜けるまで、そこに残り続けます。この記事は、ケアーンテリアのもつれがなぜ消えないのかを、この犬種の被毛が背負ってきた仕事のほうからたどる読みものです。

岩のすきまを通るために作られた毛|ケアーンテリアのもつれの背景にあるもの

ケアーンというのは、スコットランドの野に積まれた石塚のことです。ケアーンテリアという名前は、そこから来ています。この犬種の仕事は、積み石のすきまや岩の割れ目に体ごと入り込んで、中にいる相手を外へ追い出すことでした。すきまは、その子の体の幅とほとんど変わりません。入って、進んで、出てくる。そのあいだ、体の側面はずっと岩に触れたままです。

岩に擦れ続ける被毛が、擦れたところから切れていったらどうなるか。ひと冬のうちに、体を覆うものがなくなります。スコットランドの丘は、風があり、雨があり、冬が長い。毛が切れないことは、この犬種にとって体を保つための条件でした。だから外側の毛は太く、硬く、簡単には折れないように作られました。触ると指を押し返してくる、あの手ざわりです。

その硬い外側の毛の下には、短くて柔らかい下毛が密に生えています。外側が風と雨を受け止め、内側が空気をためて体温を保つ。役割が分かれているので、二層になっています。ケアーンテリアの被毛を語るとき、この二層と、外側の毛の折れにくさの2つを押さえておくと、もつれの話が最後まで一本につながります。

毛の丈夫さは、毛先まで続いています。ふつう、毛先というのは根元より細く、傷んで、擦れて減っていく場所です。ケアーンテリアの上毛は、毛先の側にも硬さが残っています。指ではさんで送っても、途中でしなって折れることなく、最後まで張りが返ってきます。この張りが、岩場では体を守る側に働きました。家の中では、別の働き方をします。

ここまでは、被毛の背景です。ケアーンテリアのもつれを、手入れの回数が足りないという話にしないために、まずこの丈夫さから見てください。もつれが起きるのは、毛が弱っているからではありません。この犬種の毛は、絡んだあとも絡む前と同じ強さのまま、そこにあり続けます。次の節は、その「あり続ける」ということが何を意味するかの話です。

切れない毛は、ほどくまでそこに残る|ケアーンテリアのもつれが消えない理由

多くの犬種では、もつれは静かに減っていく部分を持っています。絡んだ毛の一部が、体の動きや床とのこすれで途中から切れて、そのぶんだけ塊が小さくなる。あるいは、切れた毛が塊ごと外れて床に落ちる。飼い主が何もしなくても、もつれの一部は勝手にいなくなります。ケアーンテリアには、この道がありません。

岩に擦れても切れない毛は、毛どうしが絡み合ったときにも切れません。引っぱられても、ねじられても、折れずに耐えます。結果として、一度できたもつれは、人の手でほどくか、根元から抜け落ちるまで、同じ場所に残り続けます。ケアーンテリアと暮らしていて「もつれが増えていく」と感じるとき、実際に起きているのは、増えることよりも、前のぶんが消えていないことのほうです。

そこに、換毛期の下毛が加わります。季節の変わり目に下毛が入れ替わりますが、抜けた柔らかい毛は、外側の硬い上毛のあいだをうまく通り抜けられません。抜けたのに外へ出られない毛が、被毛の中に留まります。留まった下毛は、そのまま絡みの芯になります。芯があるところへ上毛が寄っていくので、もつれは根元の側から組み上がっていきます。表面をとかしても手ごたえがないのは、始まっている場所が上ではなく下だからです。

できる場所も、この犬種の作りで決まってきます。毛と毛が動くたびに擦れ合うところ、そして下毛が外へ出にくいところ。耳のうしろ、前脚のつけ根の内側、後ろ脚の内側、首輪の下。この4か所は、ケアーンテリアのもつれがくり返し戻ってくる場所です。岩場で体の側面が擦れる前提の被毛なので、家の中でも同じ面がいちばんよく擦れます。

もつれが「減る」道があるかどうかで、手の意味が変わります
毛が途中で切れる被毛ケアーンテリアの被毛
絡んだあと一部が切れて、塊が小さくなる切れないまま、大きさを保つ
放っておくと床に落ちることがある根元から抜けるまで残る
もつれの終わり方自然に終わることがあるほどく手が入るまで終わらない
ブラッシングの役目できたものを減らす残っている時間を短くする
見落としたとき翌週には小さくなっていることがある翌週も同じ場所に同じだけある

この表のいちばん下の行が、ケアーンテリアと暮らすうえでいちばん効いてきます。見落としが、そのまま積み残しになります。今日見つけられなかったもつれは、来週も同じ場所で待っています。だからこの犬種では、ブラッシングの回数より、探す場所を毎回同じにしておくことのほうが結果を変えます。次の節では、その残っているあいだに何が起きているかを見ます。

1週間で、もつれは大きくならずに固くなる|ケアーンテリアで起きる変化

もつれを見つけたときに、多くの方が「まだ小さいから」と後回しにします。ケアーンテリアでは、この判断がうまく当たりません。この犬種のもつれは、日がたっても横に広がっていかないからです。大きさはほとんど変わりません。かわりに、中身が詰まって、固くなります。1週間のあいだに、手ざわりだけが段階を追って変わっていきます。

最初の1日か2日は、毛先どうしが寄っているだけです。指を差し込めば、ほとんど力を入れずに分かれます。硬い上毛が数本、たまたま同じ向きに引っかかっている状態で、まだ芯がありません。この段階で気づけるかどうかが、その週の作業量を決めます。ここでは道具も要りません。指2本で足ります。

3日目から4日目にかけて、抜けた下毛が中へ入り込みます。柔らかい毛が硬い毛のあいだで押しつぶされ、綿のような芯ができます。指を入れると、途中で止まるようになります。この時点で、もつれは外から見ても分かりません。表面の上毛はいつもどおり立っているからです。気づく手がかりは、指を根元まで下ろしたときに止まる、という一点だけになります。

5日目を過ぎると、皮脂が回ります。芯になっていた下毛と、まわりの上毛が皮脂でまとまり、面ごと締まります。ここまで来ると、指はもう入りません。そして根元の側が引っぱられはじめます。その子がその場所を気にしてかいたり、体をひねったりするのは、たいていこの段階です。もつれ自体の大きさは、1日目とほとんど変わっていません。

もつれを見つけてからの1週間 ケアーンテリアのもつれは、大きさではなく手ざわりのほうが日ごとに変わります。見た目で判断すると、変化に気づかないまま固くなります。 大きさではなく、日数で判断してください 1〜2日目 毛先どうしが寄っているだけ 指2本で分かれます。道具は要りません 3〜4日目 抜けた下毛が芯になる 指を下ろすと途中で止まります 5〜7日目 皮脂が回り、面が締まる 指が入らず、根元が引っぱられます 2週目以降 根元の側から動かなくなる その子が気にしはじめる段階です
同じ大きさのまま、指の入り方だけが変わっていきます。

冬になると、この時計が早く進みます。空気が乾くと静電気が起きて、毛先どうしが引き合うようになるからです。硬い毛は、静電気で寄ったあとも、その姿勢のまま戻りません。やわらかい毛なら自重で落ちるところが、張りがあるぶん引っかかったままになります。加えて、乾いた時期の毛先はうるおいが抜けてざらつきます。表面がざらつけば、擦れ合ったときの引っかかりも増えます。

日数ごとの手ざわりと、その日にできること
経過指を入れたときの手ざわりその日の手
1〜2日目抵抗なく分かれる指2本で開くだけ。数秒で終わります
3〜4日目途中で止まり、芯を感じる毛先の側から少しずつ。根元は引かない
5〜7日目指が入らず、面が締まっている一度で終わらせない。日を分けます
2週目以降根元の側が引っぱられている無理に動かさず、相談する場面です

毛先から入る、というのはこの犬種ではとくに大事です。硬い毛は、根元から一気に引くと、絡んでいる部分ではなく皮膚のほうが動きます。切れない毛は、力を逃がしてくれません。かけた力がそのまま根元まで届きます。毛先の側から数本ずつ外して、まとまりを小さくしてから根元へ近づいてください。1日で終わらなくて構いません。

残ることを前提に組み直す|ケアーンテリアのもつれとつきあう考え方

ここまでの話をまとめると、ケアーンテリアのもつれには「勝手に減る」という部分がありません。だから、なくすことを目標にすると、いつまでも終わりません。置き換える目標は、もつれが体の上に残っている時間のほうです。できてから見つかるまでの日数を短くする。それだけで、1週間かかっていたほどく作業が、数秒で終わるようになります。組み直すのは、次の3つです。

1つ目は、探す場所を固定することです。全身を毎日見る必要はありません。耳のうしろ、前脚のつけ根の内側、後ろ脚の内側、首輪の下。この4か所だけを、毎日同じ順番で指でなぞってください。ブラッシングではなく、指です。ケアーンテリアのもつれは表面から見えないので、目より指のほうが早く気づきます。4か所で30秒かかりません。

2つ目は、判断の基準を大きさから日数に変えることです。この犬種のもつれは大きくならないので、「まだ小さい」は情報になりません。見つけた日にやる、を決めてしまうほうが単純です。その日にできなければ、翌日には芯ができていると思っておく。指が止まった場所を覚えておいて、次の日にそこから入ってください。日をまたぐほど、必要な時間が増えます。

3つ目は、道具を持つ順番です。指で開けるものは指で終わらせる。指で止まったところだけ、目の粗いコームを毛先の側から入れる。細かい歯のブラシを最初から当てると、硬い上毛に歯が引っかかって、もつれより先に毛のほうが引かれます。ブラッシングを1日の終わりの習慣にしている場合も、その前に指で4か所を確かめる時間を数十秒だけ足してください。順番が変わるだけで、道具そのものは増えません。

冬のあいだは、静電気の側に手を打つ余地もあります。乾いた部屋では毛先どうしが引き合うので、部屋の湿度を上げる、寝床の敷きものの素材を変える、といったところが先に動かせる条件です。被毛のうるおいが抜けているときは、毛先がざらついて引っかかりが増えます。ここで洗う回数を増やすほうへは動かさないでください。皮脂まで落ちると、毛先はさらに乾きます。

ケアーンテリアのもつれで最後に残る選択肢は、はさみで切ることです。切れば、そこだけ毛の長さが変わりますし、硬い毛のあいだで皮膚まで切ってしまうこともあります。はさみを持たなくて済むようにつくられたのが、mofuwa 毛玉予防ジェルです。ふだんから毛に塗っておくと、トリートメント成分が毛1本1本をコーティングして、毛先どうしが引き合いにくい状態が続きます。ブラッシングの前に、毛先の側から薄くなじませてください。すでに固まってしまった塊には、毛玉予防ジェルをそこへもみこみます。潤滑剤として働くので、ゆるんだところから毛先の側へ少しずつ外していけます。ゆるんでこない日は、そこで日を分けてください。

Caution根元が引っぱられているときは、そこで手を止めてください

指が入らないほど締まったもつれを、力でほどこうとしないでください。ケアーンテリアの毛は切れないので、かけた力は皮膚のほうへ届きます。その場所を気にして舐める、かく、触ると声を出す。地肌が赤い、においがある。毛が根元から抜けて地肌が見えている。元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、家でほどこうとせず、動物病院にご相談ください。前の晩に無理に手を入れると、もとの状態が分からなくなります。気づいたままの状態で連れて行ってください。

相談やトリミングの前には、指が止まった場所、気づいた日、その週に変えたことの3つを書き留めておくと役に立ちます。ケアーンテリアのもつれは同じ4か所に戻ってくるので、記録が数週ぶん並ぶと、その子の生活のどこで擦れているのかが見えてきます。首輪の下ばかりに戻るなら、外している時間を作れないかという話になります。

岩のすきまを通っても切れない毛は、この犬種が仕事をするためにそなえた作りです。それは変えられませんし、変える必要もありません。変えられるのは、絡んだ毛がそこに残っている日数のほうです。丈夫だから残る、残るから固くなる、固くなるから時間がかかる。この順番のいちばん前で止めれば、ケアーンテリアのもつれは毎日30秒の話に収まります。

Product

mofuwa 毛玉予防ジェル

mofuwa 毛玉予防ジェル

50g / 2,970円(税込)

被毛をコーティングして、もつれと静電気を起きにくくするジェル。香料無添加です。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。