C04悩み解決
シニア期の毛のパサつき|若い頃と同じケアでは追いつかない
背中をなでた手を離したあと、毛が立ったまま、10秒たっても戻りませんでした。13歳の犬です。シニア期に入ってから、毛のパサつきが気になるようになりました。若い頃は、なでた瞬間に毛が寝て、手を離せばすぐ元の向きに返っていました。毛の芯が細くなると、一度立った毛は立ったまま残ります。だから、シニアの毛でパサついて見える範囲は、その日その子が触れた場所の記録になっています。
毛が戻らないという変化に、最初に気づく場所
若い犬の背中をなでても、手のあとは残りません。指が通った線は、手を離した瞬間に消えています。ところがシニア期に入ると、なでた線がそのまま数分残る日が出てきます。毛が立ったまま、戻ってこない。これがシニアの毛のパサつきで、飼い主が最初に気づく変化です。
気づく場所は、たいてい決まっています。背中の真ん中より後ろ、腰からしっぽの付け根にかけての帯です。ここは自分では届きにくく、寝るときに体重がかかり、なでるときにも手が通ります。触れられる回数がいちばん多い場所から、変化が見えはじめます。
もうひとつ、朝の見え方でも分かります。夜のあいだ下になっていた側の脇腹は、毛が寝てべたりと平らになっている。上になっていた側は、毛が起きたままばらばらの向きを向いている。左右で毛の向きが違う朝が続いたら、その毛はもう自分の力で向きを戻していません。抱き上げたあとに、腕が当たっていた場所だけ毛の向きが変わって残ることもあります。
ブラッシングをすれば、その場では整います。被毛が一方向にそろって、光の返り方も戻る。ただ、数時間たってもう一度見ると、また同じ帯が立っています。若い頃は、朝にブラッシングした形が夕方まで持っていました。持たなくなったこと自体が、シニア期の毛に起きている変化です。
冬に静電気で立つ毛とは、戻り方が違います。静電気で立った毛は、部屋の湿度が上がれば寝ます。加湿をして30分もすれば、毛先の向きがそろってきます。シニアの立ち毛は、湿度が上がっても寝ません。この差は、家で確かめられます。加湿器をつけた前後で同じ場所を見て、変わらなければ静電気の話ではありません。
パサつきとは、毛が1本ずつ別の向きを向いて、当たった光がそろって返らなくなった状態のことです。うるおいが足りない状態と、向きがそろっていない状態は、見た目がよく似ています。シニア期に増えるのは後者のほうです。1本1本はしっとりしていても、向きがばらばらなら、離れて見たときにはパサついて見えます。
シニアの毛が立ったまま残る理由は、芯の太さにあります
毛は、皮膚の中にある毛包で作られて、根元から押し出されるように伸びていきます。外側にキューティクルという鱗状の層があり、その内側に毛の芯があります。毛が曲げられても元の向きに返るのは、この芯に弾力があるからです。若い毛の芯は太く、なでて倒しても、手を離せばばねのように起き上がって元の向きに戻ります。
年齢とともに、1本あたりの毛は細くなります。細くなるのは外側の層だけではなく、芯も同じです。芯が細くなると、曲げられた形がそのまま残ります。針金を思い浮かべると分かりやすい話で、太い針金は曲げても戻ろうとしますが、細い針金は曲げたところで折れ目のように形が決まってしまいます。シニアの毛に起きているのは、これに近いことです。
| 若い頃 | シニア期 | |
|---|---|---|
| 1本あたりの太さ | 太く、指ではさむと張りを感じる | 細く、指のあいだをすべる |
| なでたあとの戻り | 手を離した瞬間に元の向きへ戻る | 立ったまま残り、数時間たっても向きが変わらない |
| 寝ぐせの残り方 | 起き上がって動けば消える | 下になっていた側の跡が、その日じゅう残る |
| 換毛期の入れ替わり | 立った毛も数週間で抜け、新しい毛に置き換わる | 入れ替わる本数が減り、立った毛が長く居座る |
| ブラッシング後の持ち | 朝に整えれば夕方まで持つ | 数時間で同じ帯が立ってくる |
| 静電気で立ったとき | 湿度が戻れば寝る | 湿度が戻っても寝ない |
この表でいちばん見落とされやすいのは、換毛期の行です。若い頃は、一度立ってしまった毛も、換毛期のたびに抜けて新しい毛と入れ替わっていました。つまり時間が経てば勝手にリセットされていたわけです。シニア期は毛の入れ替わりそのものがゆるやかになるので、立った毛が居座る期間が延びます。同じ帯がいつまでも残るのは、このためです。
ここまで来ると、うるおいを足すだけでは説明がつかないことも分かります。毛の表面をなめらかにすれば、指ざわりは変わります。それでも、芯が曲がった形で決まってしまった毛は、うるおいを足しても向きが戻りません。向きの話と、しっとり感の話は、別に考えたほうが手が決まります。
もうひとつ、根元の側でも変化が起きています。年齢とともに皮膚がうすくなり、毛穴から毛が出る角度が寝てきます。根元の角度が寝ると、隣り合った毛どうしが支え合わなくなります。若い被毛は、密に生えた毛が互いを押さえ合って向きをそろえていました。支えが減れば、1本が立ったときに引きずられて周りも立ちます。帯になって見えるのは、そのせいです。
パサつきの範囲が、その日触れた場所と重なる背景
立った毛が戻らないということは、体の上に残っているのが今日1日ぶんの、触れた記録だということです。どこがパサついて見えるかは、毛の状態の話であると同時に、その子が今日どう過ごしたかの話でもあります。この見方に切り替えると、探す場所が体から生活の側へ移ります。
- 寝ていた側:床や寝床に押しつけられていた面。長い時間、一方向に倒れたまま固定されます。起きたときには、その向きのまま残ります
- なでた向き:飼い主がいつも同じ位置に座って、同じ手で、同じ向きになでていると、その線が毎日同じ場所に重なります
- 当たっていたもの:抱き上げたときの腕、ハーネスの縁、服の袖ぐり、キャリーの壁。毛が押し戻される向きに当たる面が、いちばん帯になりやすい場所です
この3つは、どれも家の中で変えられます。だから、パサつきの範囲を先に確かめる意味があります。範囲が分かれば、当たっているものが分かる。毛を見ているようで、実際には家具と姿勢を見ていることになります。
-
朝いちばん、なでる前に見る
手を触れた時点で、記録は上書きされます。起きてすぐ、まだ誰も触っていない状態で見てください。下になっていた側と上になっていた側を、順番に見比べます。左右で毛の向きがそろっているか、片側だけ帯になっているかだけを見ます。
-
帯の形を、言葉で3つに分けて書く
「腰の右、手のひら1枚ぶん」「肩から前、細い線が2本」。場所・広さ・向きの3つだけ書きます。写真を撮ろうとすると光の当て方で見え方が変わってしまうので、まずは言葉のほうが確実です。
-
寝床のどの面と重なるかを、その場で合わせる
書いたあとに、その子が寝ていた場所へ行って、帯の位置と寝床のどこが当たっていたかを合わせます。縁の立ち上がり、たたんだ毛布の折り目、床とマットの段差。帯は、たいていこうした境目に沿って出ます。
-
3日つづけて、同じ帯が出るかを見る
毎日ちがう場所に帯が出るなら、その日ごとの過ごし方の差です。3日とも同じ場所なら、そこに当たり続けているものがあります。変えるのは、その1つだけで足ります。
見ているのは毛の質ではなく、範囲の形です。同じ「パサついている」でも、体じゅうにまんべんなく散っているのか、帯になって1か所に寄っているのかで、その後の手がまったく変わります。散っている場合は毛そのものの変化、帯になっている場合は当たっているものの話。この2つを最初に分けておくと、あとの手当てが短く済みます。
毎朝のブラッシングを習慣にしているなら、ブラシを入れる前の10秒だけ、見る時間を足してください。ブラッシングは向きをそろえる作業なので、そのあとでは帯が消えています。順番を「見る→とかす」にするだけで、記録が残せます。とかす向きは、頭から尾へ、根元から毛先へ。逆毛に入れると、そのぶん毛が起きます。
戻す手を置いて、立てない考え方へ
戻らない毛を戻そうとすると、手はひとつの方向にしか向かいません。ブラッシングの回数を増やす、水気を含ませてなでつける、より目の細かい道具に替える。どれも一時的には整いますが、数時間で同じ帯が立ちます。戻らないものを戻そうとしているので、回数だけが増えていきます。
シニア期の毛のパサつきで手を減らすには、目的を入れ替えます。戻すのをやめて、立てないほうへ。一度立った毛は戻らない。だとすれば、これから立つ毛を減らすことに手を使ったほうが、同じ労力で先に進みます。やることは3つだけです。
| 変えるもの | いまの状態 | 変え方 |
|---|---|---|
| 触る向き | 気づいたときに、その場の向きでなでている | 頭から尾へ、根元から毛先へ。座る位置を毎回同じ側にすると、向きが自然にそろいます |
| 寝床の面 | 起毛のマットや毛足の長い毛布に、直接寝ている | 毛を起こしにくい平らな面に替える。折り目や縁の段差が体に当たらない置き方にする |
| 抱き方 | 毎回同じ位置に腕を通し、同じ場所が押される | 腕を通す位置を日ごとに少しずらす。脇の下と腰、支える場所を交互にする |
3つのうち、いちばん効いてくるのは寝床です。1日のうち十数時間、同じ面に同じ向きで押しつけられているのですから、当たり前といえば当たり前です。起毛の面は、毛を逆立てる方向に働きます。毛足の長い毛布に寝かせている場合、寝返りのたびに毛が起こされ、そのまま戻らないまま朝を迎えます。平らで目のつまった面に替えるだけで、朝の帯の出方が変わります。
触る向きは、家族で決めておいてください。ひとりが頭から尾へなで、もうひとりが尾から頭へなでていると、境目で毛がぶつかって立ちます。ブラッシングのときだけの話ではありません。日常でなでる手のほうが回数は多く、そちらのほうが被毛への影響は大きくなります。
換毛期については、期待の持ち方を変えておくほうが落ち着きます。若い頃は、換毛期が来れば立った毛ごと入れ替わりました。シニア期は入れ替わる本数が減るので、春や秋を待っても、帯がひとりでに消えるとは限りません。季節に任せる代わりに、日々の向きをそろえておく。これがシニア期の考え方です。
シニア期は、洗う日と、洗う日のあいだの日を分けて組みます。洗う日はmofuwa モイストシャンプーで地肌まで洗い、あいだの日は、mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて、毛の流れに沿って頭から尾へ一方向に拭き取る。この2つで、毎日さわる向きをそろえていきます。グルーミングスプレーの原料の水は清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口が届く前足や腹側でも、布を湿らせる量を気にせず使えます。湯を使わないので、お風呂そのものが負担になってきた子でも、毎日の1回として組み込めます。布は往復させず、一方向に。同じ面を使い回さず、区画ごとに面を替えます。パサついて見える帯の上も、同じ向きで1回だけ通します。
1〜2週間のうちに急に毛が抜けて地肌が見えてきた、毛が抜けた場所が左右対称に広がっている、皮膚に赤みやかさぶたがある、においが強くなった、さわると痛がる、水を飲む量や体重が変わった、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、シニア期の毛のパサつきとして様子を見る話ではありません。動物病院にご相談ください。年齢による毛の変化は、月の単位でゆっくり進みます。週の単位で動いたものは、年齢では説明がつきません。
最後にひとつ。毛の向きがそろわないことと、その子が困っていることは、必ずしも同じではありません。本人が気持ちよさそうにしていて、皮膚に変わりがないなら、見た目の帯は急いで消さなくて構いません。3日つづけて同じ場所に出る帯だけを見つけて、当たっているものを1つ替える。シニア期にできることは、それで足ります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
