C09シーン別・暮らし

高齢の飼い主を楽にする、シニア猫と暮らす人の毎日の習慣

公開日 2025年2月8日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、椅子のクッションの上に静かに丸くなっている淡い色の年老いた猫
動かしたのは、その子の側でも人の側でもなく、二人が同じ高さで会える場所のほうでした。写真:Cats Coming/Pexels

ブラシを持って床の前まで来て、そこで一度止まりました。16年めの冬の夜です。座るのをためらったのか、その子が来ないのを待っていたのか、自分でも分かりませんでした。結局その日は、椅子に座ったまま名前を呼んで、来なかったのでブラシを棚に戻しました。老猫の毛の流れが、背中の真ん中で寝たままになっているのは、その2週間前から気づいていました。高齢の飼い主と暮らす家では、その子が変わったのか、自分が変わったのかを、同じ日に切り分けられません。16年いっしょにいれば、人のほうも16年ぶん年を取っています。この記事は、切り分けるのをやめて、両方に合う場所へ1つずつ動かしていった話です。

かがむのがつらいのか、その子が動かないのか|16年めの高齢の飼い主と老猫の経験

その冬、家の中で変わったことを並べてみます。老猫が出窓に上がらなくなりました。夜に足元へ来る回数が減りました。背中の真ん中の被毛が、毛の流れに沿わずに寝たままになっていました。同じころ、こちらにも変わったことがあります。床に座ったあと、立ち上がるのに手すりを探すようになりました。そして、ブラシをかける時間が、夜から昼へ移っていました。夜は手元がよく見えないからです。

この2つの並びを見て、最初にやったのは切り分けようとすることでした。その子が来なくなったのか、こちらが呼ぶ回数を減らしたのか。毛の流れが寝ているのは、その子の毛づくろいが減ったからか、こちらのブラシが背中の真ん中まで届いていないからか。高齢の飼い主とペットが同じ家で年を重ねると、この問いが毎回出てきます。そして、毎回どちらとも決められません。

決められない理由は単純です。比べる相手が、自分たちしかいないからです。老猫の去年の様子を知っているのはこちらだけで、こちらの去年の姿勢を知っているのもこちらだけです。どちらの記憶も、同じ1年ぶん古くなっています。16年めの家では、変化を測る物差しの側も、いっしょに16年ぶん動いています。だから、切り分けようとするほど、何も決まらないまま夜が終わります。

6行とも、どちらにも読めます。そして、どちらであっても、次にやることは同じでした。これに気づくまでに、うちは半年かかりました。原因を決めてから手を動かそうとしていたので、決まらない半年のあいだ、毎日のケアの回数だけが静かに減っていました。高齢の飼い主とペットの暮らしで、いちばん時間を取られたのは、この切り分けの作業です。

Noteできなくなったこと、という数え方をしない

この時期に「自分ができなくなったこと」を数え始めると、手が止まります。実際に変わったのは、届く範囲と、その範囲がどの高さにあるか、という2つだけです。床に座って立ち上がりにくいのは、床という高さが合わなくなったという意味であって、ケアができなくなったという意味ではありません。老猫の側も同じで、出窓に上がらないのは、上がらない高さになったというだけです。高さの話に置き換えると、次に動かす場所が具体的に決まります。

同じ観察が、どちらの列にも置けてしまう背景|高齢の飼い主とペットが同じ年数を重ねること

切り分けられない背景を、もう少しだけ書きます。動物病院で老猫の話をするとき、こちらが持っていく情報は、家で見たことです。ところがその「見たこと」は、見る側の条件が変わっていない前提で成り立っています。去年より手元が見えにくくなっていれば、被毛の変化に気づく時期は遅れます。かがむ回数が減っていれば、腹側や後ろ足のつけ根を見る機会そのものが減ります。その結果、記録に残る変化は、その子の側の変化と、こちらの観察量の変化が混ざったものになります。

これは、記録が間違っているという話ではありません。高齢の飼い主とペットが同じ家で年を重ねる以上、混ざった記録しか作れない、というだけです。混ざっていることを分かったうえで使えば、記録は十分に役に立ちます。動物病院でも、「最近あまり見られていない場所はどこですか」と聞いてもらえれば、その前提のまま話が進みます。混ざりを消そうとするより、どこが混ざっているかを言えるほうが実際的でした。

同じ1つの観察を、2つの列に置いてみる 16年めの家で気づいたことを、その子の側の変化と、人の側の変化に分けて並べようとしました。どの行も、両方の列に置けてしまいます。 同じ冬に、同じ家で見えていたことです その子が変わった 出窓に上がらなくなった 夜に足元へ来ない 背中の毛が寝たまま 呼んでも来ない 触ると体をよじる 自分が変わった 床から立ちにくくなった 就寝の時刻が早まった 背中の真ん中に届かない 声を張らなくなった 指の力が均一でない 物差しの側も、同じ16年ぶん動いています
どちらの列に置いても、次にやることは変わりませんでした。

この図をつくってから、考え方が変わりました。左の列に手を入れる方法と、右の列に手を入れる方法は、実はほとんど同じだったのです。出窓に上がらないのなら、日の当たる場所を低いところに作る。床から立ちにくいのなら、座る場所を椅子にする。どちらの理由でも、動くのは「二人が同じ高さで会える場所」です。原因が左か右かを決めなくても、その場所は動かせます。

原因を決めずに、動かせる場所だけを並べる
気づいたこと左の列の読み方右の列の読み方どちらでも動かす場所
出窓へ来ない脚の力呼ぶ回数日の当たる場所の高さ
背中の毛が寝る毛づくろいの範囲手の届く範囲ケアをする台の高さ
夜に来ない生活時刻就寝時刻ケアの時刻そのもの
体をよじる皮膚の感じ方指の力1回あたりの長さ
水の減りが遅い飲む量見る回数器を置く場所

右端の列だけが、こちらで動かせるものです。左の2列は読み方であって、作業ではありません。高齢の飼い主とペットの毎日で、読み方に時間をかけるほど、右端の作業が後ろへ倒れます。うちは、左の2列を紙に書いてから、その紙を裏返して右端だけ見るようにしました。裏返すのは物理的な作業なので、迷っている時間が実際に短くなります。

二人が同じ高さで会える場所を、1か月に1つ動かす考え方|老猫のケアと人の手を同じ台で受ける

ここからが、実際に変えたことです。原則は1つだけにしました。その子の居場所も、人の姿勢も動かさない。動かすのは、二人が会う場所のほうだけ。老猫に新しい場所を覚えてもらうのは負担が大きく、こちらが無理な姿勢を続けるのも長く持ちません。会う場所を1つ動かせば、両方が少しずつ楽になります。1か月に1か所、と決めて始めました。

1か月に1か所だけ動かす。3か月で変えた場所と、変えなかったもの
月動かした場所前あと
1か月めケアをする場所居間の床ソファの座面に薄い座布団
2か月め日の当たる寝床出窓の上同じ窓の下の椅子の座面
3か月め水の器台所の床その子が通る廊下の低い台
変えないトイレの場所洗面所洗面所のまま
変えないごはんの時刻朝7時と夜6時朝7時と夜6時のまま
変えない寝るときの場所寝室の足元寝室の足元のまま

1か月めのソファの座面が、いちばん大きく効きました。こちらは床に座らずに済み、その子は飛び上がらずに済む高さです。ソファの座面は床から40センチほどで、老猫が前脚をかけて上がれます。人は座ったまま、背中の真ん中まで手が届きます。それまで届いていなかったのが、こちらの腕の長さの問題ではなく、床に座ったときの体のひねり方の問題だったことも、このとき分かりました。

変えなかったものも、同じくらい大事です。トイレ、ごはんの時刻、寝る場所。この3つは動かしませんでした。老猫にとって、1か月に2つ以上変わると、どれに反応しているのかが分からなくなります。こちらも同じで、変えたものが多いと、うまくいった理由を特定できません。1か月に1か所、というのは、その子のためであると同時に、こちらが結果を読むための決まりでもあります。

Point動かす順番は、ケアの場所から

3か所を動かすなら、いちばん先にケアの場所を動かしてください。寝床や水の器は、その子が自分で選び直す時間が要ります。ケアの場所は、こちらが座る位置を変えるだけなので、その日から変えられます。高齢の飼い主とペットの毎日で、最初の1か月に手応えがあるかどうかは、そのあと続くかどうかにそのまま効いてきます。すぐ結果が出る場所から始めるほうが、3か月続きます。

ケアの中身も、この時期に組み直しました。背中の真ん中は、老猫の毛づくろいでも、こちらの手でも、いちばん最後まで届かなくなる場所です。毛の流れが寝たままになっていたのは、まさにそこでした。ここは人が代わるしかない場所です。洗う日に使っているのは mofuwa 入浴シャンプー で、お湯に溶かして、浸かるだけの形にしています。被毛をかき分けて泡を届かせるのではなく、湯そのものが洗浄液になるので、擦る手が要りません。老猫は、押さえられている時間そのものが体力を使います。擦る工程がないぶん、その時間がいちばん短く済みます。全身が難しい日は、桶にお湯を張って、背中と尾のつけ根だけにしても構いません。ふだんの日は、布を軽く湿らせて、ソファの座面に座らせたまま、背中の真ん中とあごの下を毛の流れに沿って一往復。1回30秒で終わります。

中身についても書いておきます。mofuwaは、特許5253483(3室ダブルイン型電解システム)でつくる電解水を使っています。電解槽が3室に分かれる構造により、電解質由来の不純物が電解水に含まれません。そのため、清涼飲料水の規格基準をクリアした成分でつくられています。各種の試験条件下では、30〜60秒後に生菌が検出されなかったという結果が出ています(江東微生物研究所ほか調べ)。浸透については、精製水の35倍という測定があります。毛づくろいで口が届く老猫の体に使うものなので、こちらとしては、根拠を1つ持っていられるほうが落ち着きました。

1か月で3か所だけ動かす|高齢の飼い主とペットに出た変化

3か月やってみて、数字で変わったことを書きます。ケアをした日数が、月に9日から24日になりました。1回あたりの時間は、5分から1分に減っています。背中の真ん中の被毛は、毛の流れに沿うようになりました。老猫が出窓に上がる回数は増えていません。その代わり、窓の下の椅子で日なたにいる時間が、以前の出窓と同じくらいになりました。

回数が増えた理由は、たぶん1つです。こちらが「座って始められる」ようになったからです。床に座る必要があった時期は、始めるまでに気持ちの助走が要りました。ソファに座るだけなら、助走がありません。高齢の飼い主とペットの毎日のケアで、回数を決めているのは、やる気ではなく、始めるまでにかかる手数のほうでした。手数が1つ減ると、月の日数がそのまま増えます。

最後の1行が、動物病院で役に立ちました。「この3か月、腹側はほとんど見られていません」と先に言えると、そこから診てもらえます。家で見た範囲を正確に伝えるほうが、見た気になっている範囲を広く伝えるより、話が早く進みます。高齢の飼い主とペットの記録は、混ざっているのが前提です。混ざりを隠さずに渡すのが、いちばん実際的でした。

Caution年齢のせいにして待たない変化は、動物病院にご相談ください

老猫の側に出る変化のうち、体重が続けて落ちている、水を飲む量が急に増えた、食べる量が戻らない、トイレの回数や量が変わった、同じ場所をなめ続けている、触ると声を出す、歩き方が変わった、口のにおいが強くなった。こうしたものは、家では原因を切り分けられません。年齢のせいと考えて様子を見ずに、動物病院にご相談ください。記録の3行と、動かした場所の日付を持っていくと、その場で話が早く進みます。迷ったときは早いほうを選んでください。皮膚や被毛の様子も、毎日のケアで見えた範囲を、そのまま伝えて大丈夫です。

この3か月でいちばん変わったのは、たぶん考え方のほうです。どちらが年を取ったのかを決めなくても、毎日は動かせる。その子が変わったのか、自分が変わったのかを切り分けようとしていた半年は、答えが出ないまま、ケアの回数だけが減っていきました。切り分けをやめて、二人が会う場所を1か月に1つ動かし始めてから、回数が戻りました。高齢の飼い主と老猫の暮らしで動かせるのは、原因ではなく場所のほうです。

16年めの冬に止まったブラシは、いまソファの肘掛けに置いてあります。取りに行かなくていい場所に置く、というのも、動かした場所の1つです。次に動かすなら、たぶん爪を切る場所です。その子が寝ている椅子の高さで、こちらが座ったまま前脚に届くかどうかを、いま測っているところです。1か月に1つずつなら、この先も続けられます。高齢の飼い主とペットの毎日は、そうやって少しずつ場所が入れ替わっていくものなのだと思います。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。