C05犬種・猫種別ケア
オーストラリアンシェパードはなぜ毛玉が起きやすいのか。ダブルコートから考える
オーストラリアンシェパードがボールを追いかけて急に止まるとき、後ろ脚を体の下へ深く入れ、腰を落として向きを変えます。止まる、ひねる、また出る。この一連の動きが、公園にいる30分のあいだに何十回もくり返されます。その夜、ブラシが最初に止まるのは、たいてい腰の上か、後ろ脚の付け根です。毛玉のできる場所は、体じゅうに散らばっているわけではありません。その子がいちばんよく使う動きの場所に、寄っています。この記事は、オーストラリアンシェパードの毛玉が同じ2か所に戻ってくる理由を、この犬種が担っていた仕事までさかのぼって読む話です。
腰と後ろ脚の付け根|オーストラリアンシェパードの毛玉を見つけた人の経験が重なる場所
オーストラリアンシェパードと暮らしている方に、毛玉が最初にできる場所を聞くと、答えがそろいます。腰の上、後ろ脚の付け根、ズボンと呼ばれる飾り毛のいちばん上。耳の後ろや脇の下を挙げる人は、そのあとに出てきます。飼い主どうしの経験がここまで重なる犬種は、そう多くありません。同じ場所に同じものができるなら、そこには体の作りか、暮らし方か、どちらかの理由があります。
実際に手を入れてみると、場所の輪郭がもっとはっきりします。背中の中央にブラシを当てると、抵抗なく毛先まで抜けます。そのまま腰へ下ろしていくと、尾の付け根の少し手前で、歯が引っかかる。毛の表面ではなく、根元から2センチほど上がったあたりに、指でつまめる小さな塊があります。まだ固まってはいないけれど、毛が互いをまたいで、面のはじまりになっている。オーストラリアンシェパードの毛玉は、この段階から始まります。
後ろ脚の付け根も同じです。太ももの外側から内側へ手を回すと、脚の付け根に近づくほど毛が長くなり、密度が上がります。飾り毛が体幹の毛と合流する場所で、2つの方向から来た毛が、そこで向きを変えています。方向が変わる場所は、毛が重なる場所でもあります。ここに指を沈めると、根元がふわりとしているのに、少し上で毛が寄り集まっているのが分かります。
夕方の散歩から帰った日と、雨で家にいた日で、この2か所の手ざわりは変わります。よく走った日ほど、腰の毛が寄っています。走らなかった日には、同じ場所を触っても引っかかりません。毛玉が動きと結びついていることは、続けて触っていれば数日で分かります。オーストラリアンシェパードの毛玉を、季節や体質の話にする前に、この差を確かめてみてください。
- 腰の上:尾の付け根の手前。背中から下ってきた毛が向きを変える場所です
- 後ろ脚の付け根:飾り毛と体幹の毛が合流し、長さも密度も変わります
- 太ももの内側:脚を体の下へ入れると、左右の毛が触れ合います
- 尾の付け根の下側:座るときに床につき、走るときに持ち上がります
- 脇の下と耳の後ろ:どの犬種でも起きる場所。ここは順番としては後ろです
オーストラリアンシェパードの被毛には量があります。ただ、量だけが理由なら、いちばん毛の厚い背中の中央に最初の毛玉ができるはずです。実際にできるのは腰と後ろ脚の付け根で、そこは毛の量ではなく、毛の向きが1歩ごとに変わっている場所です。毛の量を理由にしてしまうと、打てる手は「ブラシを当てる時間を延ばす」しか出てきません。動きを理由にすると、打てる手は「今日どこに指を入れるか」に変わります。
牧場で体を低くして走っていた背景|ダブルコートとひねる動きが重なるところ
オーストラリアンシェパードは、名前と違ってアメリカ西部の牧場で育った犬種です。羊の群れを動かす仕事をしていました。群れの前へ回り込み、急に止まり、体を低くして進路をふさぐ。羊が向きを変えれば、こちらも同じ速さで向きを変える。まっすぐ長く走る仕事ではなく、止まって、ひねって、また出る仕事でした。この背景が、体の使い方にそのまま残っています。
止まるときの姿勢を思い出してください。前脚で踏ん張るのではなく、後ろ脚を体の下へ入れて、腰を落として減速します。体重が腰にかかり、背骨が横へたわみ、後ろ脚の付け根が大きく折りたたまれる。この動きが、この犬種のいちばん得意な動きです。公園でボールを追うときも、家の中で呼ばれて振り向くときも、同じ場所が同じように折りたたまれています。
被毛のほうも見ておきます。オーストラリアンシェパードはダブルコートで、外側にまっすぐか、ゆるく波打った上毛があり、その内側に細かく密な下毛があります。山間部の牧場は、朝晩の冷え込みと日中の日差しの差が大きい。下毛が空気をためて体温を保ち、上毛が日差しと雨を受け止める。二層そろって一つの作りです。そして、この犬種には飾り毛があります。後ろ脚のズボン、胸のフリル、尾。走る仕事に必要な体幹の毛は短いままで、飾り毛だけが長く伸びています。
ここで、2つの条件が同じ場所で出会います。いちばんよく折りたたまれる場所と、いちばん毛が長い場所が、腰から後ろ脚にかけて重なっている。背中の中央は毛が厚くても、走っているあいだ、ほとんど形が変わりません。腰と後ろ脚の付け根は、1歩ごとに角度が変わり、そこに長い飾り毛が生えています。オーストラリアンシェパードの毛玉が集まる場所は、この重なりで説明がつきます。
| 場所 | 走るときの動き | 毛の長さ | 毛玉の順番 |
|---|---|---|---|
| 背中の中央 | ほとんど形が変わらない | 中くらい | 遅い |
| 腰の上 | 1歩ごとに大きくたわむ | 長くなりはじめる | いちばん早い |
| 後ろ脚の付け根 | 深く折りたたまれる | 飾り毛で長い | 早い |
| 太ももの内側 | 左右が触れ合う | 長い | 早い |
| 胸のフリル | 前脚の動きで揺れる | 長い | 中くらい |
| 脇の下 | 前脚の付け根がこすれる | 短い | 遅い |
牧羊犬としての作りは、いまも変わっていません。家庭で暮らしていても、この犬種は止まってひねる動きを一日に何度もします。玄関のチャイムで振り向く、階段を駆け上がって上で止まる、庭で犬を見つけて向きを変える。牧場にいなくても、体は同じ使い方をします。だからオーストラリアンシェパードの毛玉は、運動量の多い子にだけ起きるものではありません。動きの回数が減っても、使う場所は変わらないからです。
同じオーストラリアンシェパードでも、ボール遊びが好きな子は急停止の回数が多く、腰の上に出ます。坂道や階段をよく使う子は後ろ脚の付け根が深く折りたたまれ、そちらに出ます。まっすぐ走るのが好きな子は、意外にも毛玉の出はじめが遅い。その子の毛玉がどこに出るかは、その子が何をして遊んでいるかとつながっています。他の子と同じ場所とは限りません。
なぜ同じ2か所に戻るのか|オーストラリアンシェパードの毛玉が腰に集まる理由
場所が決まっている理由まで来ました。ここからは、その場所で毛に何が起きているかを見ます。毛玉のはじまりは、毛が絡むことではなく、毛の向きが交差することです。まっすぐ立って歩いているとき、オーストラリアンシェパードの腰の毛は、背中から尾へ向かって一方向に流れています。この状態では、隣り合う毛どうしは平行に並んでいるだけで、またぎ合いません。
急停止して腰を落とすと、背骨がたわみ、皮膚が縮みます。皮膚が縮めば、そこに生えている毛は根元が寄って、毛先が広がります。広がった毛先どうしが、隣の毛の上を通ります。次の1歩でまた伸びると、通ったままの状態で毛が戻る。これが1回の交差です。1回ならほどけますが、30分の遊びのあいだに何十回もくり返されると、交差はほどけずに積み上がります。
ここに、この犬種の下毛が加わります。換毛期に抜けた下毛は、細くて短く、自分では外へ出られません。上毛のあいだを通って落ちる必要があります。交差した上毛は、その通り道をふさいでいます。抜けた下毛は交差の下に留まり、留まったまま次の交差が重なる。オーストラリアンシェパードの毛玉が、換毛期にまとめて増えるのはこの順番です。動きが毛玉の形をつくり、下毛が中身を詰めます。
乾いた季節には、静電気がもうひとつ足されます。毛どうしが反発して広がり、広がった毛先が隣の毛へ乗りやすくなる。同じ回数だけ走っても、冬のほうが交差が増えます。そして毛のうるおいが減っていると、毛先の表面がざらついて、いちど乗った毛が滑って戻れません。夏に指で払えばほどけた場所が、冬には指が止まるようになる。オーストラリアンシェパードの毛玉が、秋の終わりから急に扱いにくくなるのは、この2つが同時に来るからです。
| 条件 | 何が起きるか | 変えられるか |
|---|---|---|
| ひねる動き | 毛の向きが交差する | 変えられない。その子の得意な動きです |
| 飾り毛の長さ | 交差の幅が大きくなる | 変えられない。犬種の作りです |
| 換毛期の下毛 | 交差の下に留まって詰まる | 抜けるのは止められない |
| 静電気 | 毛先が広がり、乗りやすくなる | 触れているものの素材で変わります |
| 毛先のうるおい | 乗った毛が戻れるかが決まる | 変えられます |
| 触るまでの日数 | 交差が積み上がる時間 | いちばん変えられる条件です |
6つのうち、変えられるのは下の3つです。そしてそのうち、いちばん大きく効くのは最後のひとつ、触るまでの日数です。交差は、できた当日ならほどけます。指で毛を左右に分けるだけで、乗っていた毛が元の向きへ戻る。2日置くと、そのあいだに新しい交差が重なって、指では分けられなくなります。1週間置くと、道具を使っても根元まで届きません。オーストラリアンシェパードの毛玉で差がつくのは、道具の性能ではなく、この日数のほうです。
見え方にも触れておきます。この犬種の毛色には、まだら模様の入る子がいます。色が混ざっていると、毛が寄っている場所が外から分かりません。腰の上に交差ができていても、上から見るかぎり毛並みは整って見えます。目で探すのをあきらめて、手で探してください。毛玉は見つけるものではなく、触れて気づくものです。
得意な動きの場所から手を入れる|オーストラリアンシェパードの毛玉とつきあう考え方
ここまでを、毎日の話に落とします。考え方はひとつだけです。全身を回すのをやめて、その子の得意な動きの場所を先に触る。オーストラリアンシェパードは体が大きく、飾り毛もあるので、全身のブラッシングは一度で終わりません。終わらない前提で組むと、毎回同じところで時間切れになり、いちばん交差の多い場所が最後まで残ります。順番を逆にしてください。
まず、その子の得意な動きを決めます。難しく考える必要はありません。今日いちばん多くやったことを、ひとつ思い出すだけです。ボールを追って何度も急停止したなら腰の上。坂道や階段を上り下りしたなら後ろ脚の付け根。他の犬と追いかけっこをして向きを変え続けたなら、太ももの内側まで。走らなかった日は、腰を1回確かめて終わりで構いません。毎日同じ場所をやる必要はありません。
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立たせたまま、指で毛を左右に分ける
道具より先に指です。腰の上に指を沈めて、毛の流れと直角に開きます。根元まで一度で開けば、その日はそこで終わりです。途中で指が止まったら、そこが今日の場所になります。オーストラリアンシェパードは体高があるので、立たせたままのほうが腰と後ろ脚に手が届きます。
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止まった場所を、外側から少しずつ削る
毛玉の真ん中に道具を入れないでください。交差は外側の縁からほどけます。縁の毛を1本ずつ外へ逃がすつもりで、短いストロークで。根元を指で押さえて、皮膚が引っぱられないようにします。縁が1周ぶん外れたら、その日はそこで手を離してください。
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ほどけた場所に、毛の流れを戻す
交差がほどけても、毛の向きはばらばらのままです。毛の流れに沿って長く1回通して、向きをそろえてから終わります。ここを省くと、次に走ったときに同じ場所で交差が始まります。毛先まで抜けるかどうかで、その日の仕上がりが分かります。
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翌日、同じ場所にもう一度だけ指を入れる
昨日ほどいた場所が、今日また寄っているかを見ます。寄っていれば、そこがその子のいちばん動く場所です。寄っていなければ、別の場所を探してください。2日続けて確かめると、その子の得意な動きの場所が決まります。あとはその場所だけを回してください。
換毛期には、これに1つ足します。交差の下に留まった下毛を、外へ出す作業です。ただし順番は変えません。指で分けて、交差をほどいて、流れを戻す。そのあとで下毛を出す道具を入れます。交差が残ったまま細かい歯の道具を入れると、下毛に届く前に上毛につかまります。つかまったまま力をかけるので、抜けた下毛は出てこないのに、上毛だけが減っていく。オーストラリアンシェパードで毛玉と換毛期が重なる時期は、この順番だけを守ってください。
乾いた季節には、静電気とうるおいの側に手を入れます。ブラシを当てる前に、毛先が広がっていないかを見てください。広がっていれば、力で通そうとしないこと。毛先がざらついたまま道具を通すと、交差はほどけても毛先が傷みます。触れているものの素材を入れ替えるのも手です。寝床の敷物、抱き上げるときの服、車のシート。腰と後ろ脚が毎日こすれている素材を、1つずつ替えてみてください。
6つの条件のうち、毛先のうるおいの行をここで受け持ちます。mofuwa 毛玉予防ジェルは、5プッシュほどを手のひらに広げて全身に伸ばし、ブラッシングでなじませて使います。2〜3日に1回で足ります。被毛が1本ずつコーティングされるので、走って毛が交差しても、毛先が滑って元の向きへ戻りやすい状態が続きます。オーストラリアンシェパードは面が広いので、時間の取れない日は腰の上と後ろ脚の付け根、この2か所だけでも構いません。乾いた季節に毛先が広がって戻らなくなる時期こそ、塗る日の間隔を詰めてください。
縁から削っても毛が滑らず、根元まで指が入らない日もあります。腰の上で何日も積み上がった交差は、乾いたまま外そうとすると、ほどける前に縁の毛から切れていきます。毛玉予防ジェルは、もともと「絡まったらはさみで切るしかない」という状態を減らすためにつくられた1本なので、固まってしまった場所に直接なじませる使い方もできます。ほぐしたい塊がしっとり濡れる程度までもみこんで、毛が動くようになってから、ブラシを外周の毛先に置いてください。ゆるんでこないときは、同じ場所に mofuwa グルーミングスプレーを足してもみこむと、よりほぐれやすくなります。
固まった毛玉に、根元からハサミを入れるのは避けてください。毛玉の中には皮膚が引き込まれていることがあり、外から見えている輪郭より、皮膚が近い場所にあります。ほどききれない大きさになったときは、その日は触らずに、トリミングサロンか動物病院に相談してください。無理にほどこうとして痛い思いをすると、次から腰を触らせてもらえなくなります。触らせてもらえることのほうが、その日にほどけることより大事です。
最後に、動きでは説明のつかない変化を書いておきます。走っていない週なのに同じ場所が固まる、片側だけに戻る、毛玉を取ったあとの地肌が赤い、においがある、その場所をなめたりかんだりしている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、触ると痛がる。こうした変化が1つでも出たら、ブラッシングの時間を足す方向ではなく、動物病院で地肌を見てもらう方向へ切り替えてください。持って行くのは、毛玉ができる場所、いつからか、その週にどんな遊び方をしたか、この3つのメモです。被毛の条件で説明がつくかどうかを、その場で切り分けてもらえます。
オーストラリアンシェパードと暮らすうえで、毛玉ができること自体はなくなりません。止まって、ひねって、また出る。その動きは牧場で羊を動かすためにそなえた作りで、家の中でも同じように使われているからです。減らせるのは毛玉の数ではなく、交差ができてから人が気づくまでの日数のほうです。今日いちばん多くやった動きを思い出して、その場所に指を沈める。オーストラリアンシェパードの毛玉とのつきあい方は、そこから決まります。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
