C09シーン別・暮らし
引越しの前後、多頭飼いの人はどうしている?
引越しの当日、荷物を運び終えた夕方に、3頭を同時にケージから出しました。5分ももちませんでした。いちばん年上の子が部屋の隅を一巡して伏せたところへ、下の2頭が走ってきて、そのまま3頭とも立ったままになりました。前の家では、この子が伏せると他の子も伏せていました。多頭飼いの家で引越しがうまくいかないとき、原因は部屋の側ではなく、犬を出す順番のほうにあります。慣れる速さは頭数ぶんばらばらで、それが互いに伝わるからです。この記事は、その順番を作る手順です。
3頭を同時に出したら、先に伏せた子まで立ち上がった|引越し当日に多頭飼いの家で起きたこと
前の家では、順番を意識したことがありませんでした。扉を開ければ3頭がそれぞれの場所へ行って、それぞれの時間で伏せる。引越しの当日も同じつもりで、夕方にケージの扉を3つとも開けました。いちばん年上の子だけが、部屋の隅を一巡してから伏せました。残りの2頭は、部屋の真ん中で立ったままです。そこまでは、想定の範囲でした。
崩れたのはそのあとです。立っていた2頭が、伏せた子のところへ走っていきました。においを嗅いで、体をぶつけて、また離れる。3往復目で、伏せていた子が立ち上がりました。そこから3頭とも、どこにも落ち着かないまま1時間が過ぎました。前の家なら、この子が伏せた時点で他の2頭も自然に伏せていたはずです。逆のことが起きていました。
多頭飼いの家では、頭数ぶんの慣れる速さがあります。引越しのように部屋そのものが入れ替わる日は、その差がいちばん大きく開きます。そして厄介なのは、この差が互いに伝わることです。先に落ち着いた子は他の子を落ち着かせますが、まだ落ち着かない子は、落ち着いた子を引き戻します。同時に出すというのは、この2つの伝わり方のうち、どちらが勝つかを運に任せることでした。
- いちばん年上の子:新しい部屋でも15分ほどで伏せました。速い側です
- 真ん中の子:伏せるまでに40分ほど。年上の子が伏せていれば早くなります
- いちばん下の子:この日は最後まで伏せませんでした。いちばん遅い側です
- 3頭同時のとき:いちばん遅い子の落ち着かなさが、他の2頭へ移りました
- 前の家では:同じ差はありましたが、部屋のほうが先に落ち着いているので目立ちませんでした
- 引越しの日だけ:部屋の側に落ち着いた場所が1つもないので、差がそのまま出ます
いちばん遅い子が困った子だ、ということではありません。速さは順位でも性格の良し悪しでもなく、その子が部屋を確かめるのにかける時間の長さです。時間のかかる子は、そのぶんていねいに確かめているだけです。問題なのは、確かめている最中の子と、確かめ終わった子を同じ部屋に同時に置いてしまうことのほうです。引越しの日は、多頭飼いの家でここが唯一こちらの手で動かせるところでした。
落ち着いている犬から1頭ずつ出す|引越しの当日から数日かけてよい順番と手順
翌日から順番を変えました。全頭を同時に出すのをやめて、1頭ずつにします。順番は、前の家でいちばん早く伏せていた子からです。その子が新しい部屋で自分の定位置を決めるまで待って、決まってから次の子を出す。多頭飼いの引越しでは、この並べ方そのものが、慣れる速さを作っていました。以下が、実際にやった5つの手順です。
-
出す順番を、前の家での落ち着き方で決めておく
引越しの前に決めます。基準は年齢でも体格でもなく、前の家で「先に伏せていた子」です。夜にテレビを見ているとき、いちばん早く横になるのはどの子か。来客が帰ったあと、いちばん早くいつもの場所に戻るのはどの子か。この2つで、ほぼ決まります。多頭飼いの家では毎日見ている光景なので、思い出せば紙に書けます。順番は当日に決めないでください。当日は全員が落ち着かないので、判断できません。
-
いちばん落ち着いている犬を、1頭だけ先に出す
他の子はケージかキャリーに入れたまま、別の部屋か、同じ部屋の隅に置いておきます。出すのは1頭だけで、こちらも座って動きません。ついて歩かない、名前を呼ばない、片づけを続けない。その子が部屋を一巡して、においを取って、どこかで伏せるまで待ちます。引越しの当日にできるのは、たいていここまでです。1頭目で30分から1時間を見ておくと、焦らずに済みます。
-
定位置が決まるのを待つ。伏せた場所ではなく、戻ってくる場所を見る
1回伏せただけでは定位置ではありません。一度立って歩いて、また同じ場所へ戻ったら、そこが定位置です。2回目に同じ場所へ戻るまで待ちます。早い子なら1時間、時間のかかる子なら翌日になります。ここを待たずに次の子を出すと、1頭目の定位置がまだ無い状態で2頭目が入るので、当日の同時出しと同じことになります。多頭飼いの引越しで、いちばん省略したくなるのがこの手順です。
-
次の子を出す。1頭目は出したままにしておく
2頭目を出すとき、1頭目は戻しません。定位置にいる1頭目がいるほうが、2頭目は早く落ち着きます。これが、順番を作る理由そのものです。2頭目が部屋を一巡するあいだ、1頭目が伏せたままでいられれば成功です。もし1頭目が立ち上がって、2頭とも歩き回り始めたら、次の手順に進みます。
-
崩れたら、あとから出した子を戻す。翌日にやり直してよい
戻すのは、必ずあとから出した子のほうです。先に落ち着いていた子を戻すと、その子が作った定位置がなくなります。2頭目をケージへ戻して、1頭目が伏せ直すのを待つ。その日はそこで終わりにして構いません。3頭目、4頭目は翌日でも、3日後でも遅くありません。引越しの当日に全頭を出しきる必要は、どこにもありませんでした。
| 出した頭数 | その日にできたこと | かかった時間 | |
|---|---|---|---|
| 当日(同時に出した日) | 3頭同時 | 1時間たっても誰も落ち着かなかった | 1時間で中止 |
| 2日目 | 1頭目だけ | 窓際に定位置が決まった | 約50分 |
| 3日目 | 1頭目+2頭目 | 2頭目は1頭目の隣で伏せた | 約30分 |
| 4日目 | 3頭とも | 3頭目が入っても、上の2頭は動かなかった | 約40分 |
| 5日目以降 | 3頭とも | 扉を開けたままにした。順番は自然に元へ戻った | 待たずに済んだ |
4日かかりました。多頭飼いの引越しで4日は長いように見えますが、当日に3頭同時で失敗した1時間と、そのあと数日続いた落ち着かなさを合わせると、こちらのほうが短く済んでいます。順番を守った日は、1頭あたりの待ち時間が30分から50分で、こちらは座っているだけでした。荷ほどきは、待っているあいだに同じ部屋でできる範囲だけ進めます。
多頭飼いの引越しでつまずくのは、待つ側のやり方です|3つの手を止める場所
手順そのものは単純です。ただ、実際にやってみると、待っているあいだにこちらが動いてしまいます。多頭飼いの家では、待つより手を出すほうが慣れているからです。頭数ぶんの世話を毎日回していると、止まっている時間が無駄に見えます。ここでつまずいた3か所を書いておきます。
| やってしまったこと | 何が起きたか | 代わりにどうしたか |
|---|---|---|
| 名前を呼んで様子を見た | 定位置を決めかけていた子が立った | 声を出さずに座って見る |
| 段ボールを開け続けた | 音のたびに全頭が同じ方向を向いた | その部屋の荷ほどきは翌日に回す |
| まだ出していない子をなだめに行った | 出している子のほうが人を追って歩き出した | ケージの前を通らない導線を先に決める |
| おやつで呼び戻した | 2頭目が来て、順番が入れ替わった | 食べるものはその日は使わない |
| 寝床を新しい場所へ動かした | 定位置と寝床が別々になった | その子が伏せた場所へ、あとから寝床を運ぶ |
5つのうち4つが、こちらから声や音を出したことでした。引越しの日に犬が見ているのは、部屋そのものより、人がどこで何をしているかです。多頭飼いの家では、人が動くと頭数ぶんの視線が同時に動きます。1頭の家なら小さな動作でも、3頭いれば3頭が反応して、その反応が互いに伝わっていきます。座って動かない時間は、待っているのではなく、順番を守るための作業でした。
もう一つ、寝床の扱いだけは順番が逆になります。先に置いてから出すのではなく、その子が伏せた場所へ、あとから寝床を運びます。こちらが決めた場所に寝床を置くと、その子が選んだ場所と2か所に分かれて、どちらも定位置になりません。前の家で使っていた布をそのまま使うと、多頭飼いの家では他の子のにおいも一緒に運ばれるので、次の子が来たときの手がかりにもなります。洗わずに持ってきておくのが、この日だけは役に立ちました。
2頭目を出して崩れたとき、戻すことに抵抗がありました。せっかく出したのに、と思ってしまうからです。ただ、戻す判断を早くするほど、翌日が短く済みました。崩れたまま1時間続けた日は、翌日の1頭目も落ち着くのに時間がかかっています。5分見て、2頭とも歩き回っているなら、その場で戻す。引越しの数日は、進めることより、崩れた状態を持ち越さないことのほうが効きます。多頭飼いでは、崩れは頭数ぶん翌日へ運ばれます。
全頭が出そろってから、毎日のケアを同じ並びで戻す|引越し後の犬のやり方
5日目に扉を開けたままにしてから、ケアの順番も同じ並びに戻しました。前の家では、その日に手が空いた順にブラシをかけていましたが、新居ではしばらく、出した順と同じ順番でやることにしました。1頭目、2頭目、3頭目。理由は同じで、多頭飼いの家では、最初の1頭が落ち着いていると、待っている子も落ち着いて待てるからです。引越しの直後は、この効き方がいつもよりはっきり出ました。
- 順番を固定した期間:新居に入ってから2週間ほど。そのあとは自然に崩しました
- 1頭あたりの時間:前の家と同じ長さのまま。引越しを理由に増やしていません
- やる場所:1頭目の定位置の近く。場所を毎回変えないほうが早く終わりました
- 待たせ方:ケージに入れず、同じ部屋で自由にしておきました
- 水を使うケア:全身を洗うのは1週間おいて、玄関で前足だけの部分洗いにしました
- においの手がかり:前の家で使っていた布を、洗わずに1枚ずつ残しました
全身を洗うのを1週間おいたのは、多頭飼いの家では順番待ちが発生するからです。洗って乾かすと1頭あたりの時間が長くなり、待っている子の落ち着かなさが、洗い終わった子へ戻っていきます。引越しの直後は、乾かす時間そのものが、順番を崩す原因になりました。ただ、足の裏と指のあいだだけは、その子が自分では始末できません。段ボールの粉と、前の家から運ばれた砂が、犬3頭とも同じところに残っていました。玄関で使っているのは mofuwa 入浴シャンプーで、桶の湯に溶かすと、その湯が洗浄液になります。かき分けて擦らなくても地肌まで届き、すすぎも軽く済みます。引越しの数日は、桶を玄関に置いたままにして、家に入る前に前足だけを沈めました。1頭あたり2分ほどで終わるので、3頭でも順番が崩れません。
引越しから2週間ほどで、順番を意識しなくてよくなりました。扉を開けても3頭がそれぞれの場所へ行って、それぞれの時間で伏せる。前の家と同じ形に戻っただけですが、そこへ至る道が、順番でした。部屋のにおいを合わせることも、家具の位置を前と同じにすることもやっていません。やったのは、出す順番を決めて、定位置ができるまで待って、崩れたら戻すことだけです。多頭飼いの引越しで動かせるところは、思っていたより少なくて、そのぶん確実でした。
最後に、順番の話では説明がつかない範囲を書いておきます。2週間たっても食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、同じ場所をなめ続けている、他の子と急に距離を取るようになった、歩き方が前と違う。こうした変化は、引越しの慣れの話ではありません。多頭飼いの家では、1頭の変化が他の子との関係にも出るので、犬が3頭いれば見る場所も3か所になります。数日で戻らないときは、ケアの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。引越しの前後は環境の変化が重なるので、迷ったときは早いほうを選んで構いません。
Product
mofuwa 入浴シャンプー
400ml / 3,410円(税込)
浸かるだけで洗える入浴タイプ。「泡立て・ごしごし・すすぎ」の3手間を省けるので、高齢のペット・大型犬・多頭飼いのご家庭に向いています。
商品ページを見るよくある質問
- 4頭以上いる家でも、同じ順番でいいですか。
- 同じです。頭数が増えるほど、1日に出す頭数を減らしてください。3頭で4日かかったので、5頭なら1週間ほど見ておくと余裕があります。1日に2頭以上出そうとすると、途中で崩れたときに、どちらを戻せばよいか判断できなくなります。1日1頭ずつ増やすのが、いちばん迷いません。
- 犬と猫が一緒にいる家では、どちらを先に出せばいいですか。
- 前の家で先に落ち着いていたほうからで、種類は関係ありません。ただ、猫は部屋そのものを確かめるので、犬より時間がかかることが多いです。定位置が決まるまで待つという基準は同じで、待つ時間だけ長く見ておいてください。先に落ち着いた1頭がいる部屋のほうが、あとから出す子の時間は短くなります。
- 引越しの当日に、全頭を出しきれませんでした。大丈夫でしょうか。
- 問題ありません。3頭の家で4日かかっています。当日に出しきることに意味はなく、崩れた状態を翌日へ持ち越さないことのほうが効きます。その日はケージやキャリーの中で夜を越しても構いません。前の家で使っていた布を1枚入れておくと、待っている時間が短く感じられるようです。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
