C09シーン別・暮らし
シニア犬と暮らす人が保護犬・保護猫を迎えたで困ること、その手当て
推定11歳、体重9キロ、名前は預かり先で呼ばれていたものをそのまま使うことにしました。その保護犬がうちに来た日から、この家はシニア犬と暮らす家になりました。若い犬を迎えるつもりで準備していたので、寝床も器も低い位置に置き直すところから始まりました。困ったのは道具のほうではありません。残された時間が長くないと分かっているのに、慣らすのに何週間もかけていいのか、という迷いのほうでした。老犬の保護犬を迎えると、こちらの側に締め切りのような感覚が生まれます。この記事は、その感覚をどう扱うかを8つの問答に分けたものです。答えの軸は最初に書いておきます。残りの時間を理由に急がない、というのがこの1か月で出した結論でした。
推定11歳の保護犬を迎えると、慣らすのに何週間もかけていいのか知りたいのですが
かけていいと思います。むしろ、老犬のほうが、かける週数を先に決めておいたほうがうまくいきました。若い犬なら、慣れるまでの日数は結果として決まります。老犬の保護犬を迎える場合、こちらが「あと何年あるだろう」と数え始めるので、日数が結果ではなく我慢の量に変わってしまいます。我慢していると、途中で必ず一度、手が早く出ます。
うちでは、最初の4週間は触る範囲を広げないと決めました。決めたことで、3日目に「もう大丈夫かもしれない」と思った日も、10日目に何も進んでいないと感じた日も、同じ手順に戻れました。週数を決めるのは、進めるためではなく、迷った日に戻る場所を作るためです。保護犬を迎えるときにいちばん揺れるのは、その子ではなく人の側の判断でした。
その子が以前どんなふうに過ごしていたのかは分かりません。分からないまま迎えるのが前提なので、こちらにできるのは、これから先の毎日をどう組むかだけです。過去を推し量る時間を、今日その子が何を受け取ったかを見る時間に回すほうが、実際に手が進みます。老犬であってもそこは変わりません。
老犬の保護犬を迎えるとは、若い子を迎えるのと何が入れ替わることですか
入れ替わるのは、体力の総量ではなく「一日のうち、受け取れる時間帯の幅」です。若い犬なら、朝でも夜でも、こちらが手を伸ばせば応じられる時間帯が広くあります。老犬は、その幅が狭くなります。寝ている時間が長く、起きていても、立って支えていられる時間が短い。つまり、慣らすために使える時間帯そのものが、一日の中で限られています。
| 若い犬 | 老犬 | |
|---|---|---|
| 受け取れる時間帯 | 一日のうち広くある | 起きている短い時間に限られる |
| 1回の長さ | 長くしても続く | 短くしないと姿勢が保てない |
| 回数を増やしたとき | 慣れが早まることがある | 触られる回数そのものが負担になる |
| 失敗したとき | 翌日にやり直せる | その日の残りが使えなくなる |
| 人が代わる範囲 | 自分でやれる部分が多い | 背中や腰まわりに人の手が要る |
| 変化の出かた | 分かりやすく出る | ゆっくりで、後から気づく |
この表でいちばん効いてくるのが、4行目です。若い犬なら、強く触りすぎた日があっても翌日にやり直せます。老犬では、驚いた日の午後が丸ごと休養に変わることがありました。1回の失敗が、その日の残り時間から差し引かれます。保護犬を迎える家では、慣れていないぶん人の側の手も試行錯誤になりますが、老犬ではその試行錯誤の回数を減らす必要があります。
老犬の保護犬を迎えると、できないことのほうが先に目につきます。長く立てない、階段を上らない、呼んでも起きない。ただ、それは今日の条件であって、これから減っていく一方だと決まっているわけではありません。数えるのは、できないことではなく、今日その子が受け取った時間のほうにしてください。10秒でも受け取れたなら、その10秒は積み上がります。年齢は毎日のケアを組むときの条件のひとつで、結論ではありません。
残りの時間が短いなら、早く触ったほうがいいのではないですか|急がないほうがいいのはなぜか
これがこの記事でいちばん書きたかったところです。急ぐと、残りの時間そのものは伸びませんが、その中身のほうは減ります。早く触ろうとすると、その子が受け取れる幅を超えた触り方になります。超えた日は、その子がこちらから離れる時間が長くなります。離れている時間は、残りの時間から引かれたのと同じことです。
具体的に書きます。うちでは9日目に一度、急ぎました。背中に手が届くようになったので、そのまま腰まで滑らせたのです。その子は立ち上がって、部屋の隅へ移動しました。そのあと3日間、背中にも手が届かなくなりました。9日かけて進んだ場所が、1回で戻りました。取り戻すのに、また5日かかっています。合わせて8日ぶん、触れない日が増えたことになります。
つまり、急ぐことで得られるのは数分で、失うのは日数です。老犬を迎えた家で残りの時間を気にするなら、いちばん割に合わないのが「一度でも早く進めようとすること」でした。保護犬を迎える側は、その子の許容の位置を知りません。知らないまま急ぐと、位置を確かめる工程を飛ばすことになります。飛ばした分は、あとで日数として返ってきます。
| できていたこと | 日数 | |
|---|---|---|
| 1〜9日目 | 肩から背中の前半分まで、1回10秒 | 9日かけて進んだ |
| 9日目の夜 | 腰まで手を滑らせた | その場から離れた |
| 10〜12日目 | 背中にも手が届かない | 3日 |
| 13〜17日目 | 肩まで戻す | 5日 |
| 18日目 | 9日目と同じ位置に戻った | 差し引き8日 |
この8日は、記録を取っていたから見えました。取っていなければ「なんとなく進まない1か月」で終わっていたと思います。保護犬を迎える最初の1か月は、進んだ日より戻った日のほうが情報を持っています。戻った日に何をしたかが分かると、二度目を避けられます。老犬では、その二度目を避けられるかどうかが、そのまま触れる範囲の広さになりました。
最初に触るのは、今日触れる場所と来月も触れる場所のどちらですか
来月も触れるほうを選んでください。今日いちばん触りやすい場所と、1か月後も同じように触れる場所は、別のことがあります。うちの子は、来た初日から頭の上には触らせてくれました。ただ、頭は立って支える姿勢が必要な場所で、老犬には翌週から負担になりました。逆に、伏せたまま触れる肩のあたりは、初日には届きませんでしたが、いまも毎日届きます。
- 伏せたまま届く場所:肩、背中の前半分、首の横。姿勢を変えずに済みます
- 立たないと届かない場所:腹、内股、後ろ足のつけ根。老犬には後回しでかまいません
- 顔に近い場所:受け入れる子は多いのですが、こちらの手が視界に入る時間が長くなります
- 足の先:いちばん最後で足ります。歩くたびに使う場所なので、驚かせると影響が残ります
- 尾のつけ根:体をひねる姿勢が要るので、その子が自分から向きを変えた日に
選び方の基準はひとつです。その子が姿勢を変えずに済む場所から始める。老犬は、触られること自体より、その姿勢を保つことのほうに体力を使います。伏せたままでいられるなら、1回の時間が短くても負担が積み上がりません。保護犬を迎えるときは触られることに慣れていない前提で組みますが、老犬ではそこに姿勢という条件が重なります。
皮膚や被毛の状態を確かめたい気持ちは、後ろに回してかまいません。見るだけなら、触らなくてもかなりのことが分かります。寝ている場所に敷いた布に落ちた毛の量、毛の向きが寝たままになっている面、地肌が見えている場所。毎日1回、布のほうを見る習慣にしておくと、被毛に手が届かない時期でも記録は残ります。
老犬の保護犬に、1日に何回、1回に何分が目安になりますか
1回10秒を、1日2回から始めました。分ではなく秒です。老犬では、1回を長くするより回数を分けるほうが、姿勢の負担が小さくなります。ただし回数もむやみに増やしません。触られる回数そのものが条件になるので、2回で始めて、その子が自分から寄ってきた日にだけ3回めを足す形にしました。
| 週 | 1回の長さ | 1日の回数 | その週にやったこと |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 10秒 | 2回 | 肩に手を置くだけ。動かさない |
| 2週目 | 10秒 | 2回 | 肩から背中の前半分へ、一往復 |
| 3週目 | 20秒 | 2回 | 同じ範囲を、布を持った手で |
| 4週目 | 20秒 | 2〜3回 | 3回めは、その子が寄ってきた日だけ |
時刻も決めておくと、その子の側から予定が読めるようになります。うちは朝の支度の前と、夕食の後にしました。寝ているところを起こしてまでやらない、というのを唯一の例外なしのルールにしています。老犬は眠っている時間が長く、その時間は体を戻すのに使われています。起こして触ると、回数を増やしたつもりが、休む時間を削っただけになります。
水を使う日の話も、この時期は先に決めておくと楽でした。保護犬を迎えて最初の1か月は、体を洗うところまで進みません。触れる範囲が肩から背中の前半分しかないので、1回20秒のあいだに当てるものが、この時期のケアの全部になります。使うものを mofuwa スキンケアミストにしたのは、範囲が広がったときに道具を替えなくて済むからです。中身は電解水で、地肌に当てても、耳のまわりや口の近くへ回っても、場所ごとに持ち替える理由がありません。老犬の保護犬では、来週その子がどこまで触らせてくれるかが読めません。読めない側に合わせて、先に1本だけにしておきました。布を湿らせて、肩から背中の前半分を毛の流れに沿って一往復。手のひらを直接当てるより、布1枚を挟むほうが、その子が驚く回数が減りました。においを取ることが目的ではなく、触れる範囲を毎日同じにしておくための手順です。
1か月たっても被毛に手が届きません。このままで大丈夫でしょうか
手が届いていないこと自体は、そのままで構いません。ただ、大丈夫かどうかを決めるのは、届いた範囲ではなく、その子の側の数字のほうです。食べる量、水の減り方、寝ている場所、眠っている時間の長さ。この4つが迎えた週から変わっていないなら、触れないまま1か月が過ぎても、進んでいないわけではありません。
- 食べる量:迎えた週の量と比べます。数日単位のばらつきは幅のうちです
- 水の減り方:器を同じものにしておくと、目盛りがなくても比べられます
- 寝ている場所:同じ場所で寝るようになったら、それは進んだしるしです
- 眠っている時間:老犬は長くて当たり前です。急に短くなったほうを見ます
- 人が部屋に入ったときの向き:こちらへ顔を向けるかどうかだけで足ります
5つめの「顔を向けるかどうか」は、触れない時期にいちばん動く項目でした。うちの子は、2週目までこちらが入ると顔を伏せていました。3週目に一度、目だけ動かしました。4週目には顔を上げるようになりました。被毛に手が届く前に、こちらを見る回数のほうが先に増えます。保護犬を迎える家では、この順番を知っておくと、触れない日々を待てるようになります。
逆に、大丈夫かどうかを家では決められない場合もあります。食べる量が3日以上戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、同じ場所をなめ続けている、皮膚の一部だけ赤い、被毛が左右でちがう減り方をしている、立ち上がるときに時間がかかるようになった。こうした変化があるときは、触れるようになるのを待たずに動物病院にご相談ください。老犬では、慣れていないことによる緊張と、体の側の変化が同じように見えることがあります。迎えた日からの記録を持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
老犬を迎えた最初の1か月に、やらなくていいのはどれですか
3つあります。体を洗うこと、道具を新しく買いそろえること、来客に会わせることです。やらないと決めておくと、迷う回数が減ります。老犬の保護犬を迎える家では、やることを足すより、やらないものを先に決めるほうが、1か月を同じ手順で通せました。
| 内容 | そう決めた理由 | |
|---|---|---|
| やらない | 体を洗う | 立っている時間と乾かす時間が、老犬には長すぎます |
| やらない | 道具を新しくそろえる | その子が受け入れる形が分かってから選べば足ります |
| やらない | 来客に会わせる | 人が増えると、触れる範囲を確かめる工程が止まります |
| 続ける | 1日2回、10秒 | 回数と時刻が同じであることが、いちばん効きました |
| 続ける | 布に落ちた毛を見る | 触らなくても、被毛と皮膚の情報が残ります |
| 続ける | 食べた量を書く | 大丈夫かどうかを決める数字になります |
| 続ける | 寝ている場所を書く | 同じ場所で寝始めた日が、いちばん分かりやすい変化です |
体を洗わないと決めることに、抵抗があるかもしれません。1か月やらないだけです。その1か月は、水を使わない日のケアで足ります。布に含ませて一往復、という形なら、老犬が姿勢を変えずに済みます。洗うのは、その子が伏せたまま背中の全体に手を通させてくれるようになってからで間に合います。保護犬を迎える順番として、洗うのはかなり後ろです。
一人で決めていると、家族が良かれと思って先に進めてしまうことがあります。老犬の保護犬を迎えると、家族それぞれが早く仲良くなりたいと思うので、それ自体は自然なことです。「今月は洗わない」「今月は人を呼ばない」と最初に言葉にしておいてください。言葉になっていれば、迷った日に戻る場所が家の中で共有されます。決め直す回数が減るほど、その子の側から見た毎日が同じ形になります。
急がないと決めた1か月に、実際に残ったのは何でしたか
1か月の終わりに手元に残ったのは、触れる範囲が肩から背中の前半分まで、という一行だけでした。全身には届いていません。それでも、9日目に急いだときのような戻り方は、あれ以降一度もありませんでした。範囲は狭いままですが、その範囲の中では毎日確実に手が届きます。老犬と暮らすうえで意味があったのは、広さより確実さのほうでした。
| 時期 | 決めておくこと | 見るところ |
|---|---|---|
| 迎える前日 | 最初の4週間は範囲を広げないと決める | 寝床と器の高さを下げておく |
| 1週目 | 1回10秒を1日2回。時刻を固定する | 食べた量と水の減り方 |
| 2週目 | 伏せたまま届く場所だけにする | こちらを見る回数 |
| 3週目 | 布を1枚挟んで、同じ範囲を一往復 | 布に落ちた毛の量 |
| 4週目 | 寄ってきた日だけ3回めを足す | 寝ている場所が同じになったか |
| 1か月後 | 洗うかどうかをここで初めて考える | 背中の全体に手が通るか |
| いつでも | やらない3つは変えない | 家族で同じことを言えているか |
この表に入っていないものが、この1か月にやらなかったことです。入れる場所がなかったから落とした、という決め方でかまいません。老犬の保護犬を迎えると、やってあげたいことが先に増えます。増えたぶんを全部やろうとすると、その子が受け取れる時間帯の狭さに必ずぶつかります。落とす基準を先に持っておくほうが、結果として続きました。
最後に、相談の線をもう一度書きます。食べる量が3日以上戻らない、水を飲む量が変わったまま、同じ場所をなめ続けている、皮膚に赤みが出ている、被毛の減り方が左右でちがう、立ち上がりに時間がかかる、呼んでも起きない時間が急に長くなった。いずれかが重なっているときは、慣れるのを待たずに動物病院にご相談ください。保護犬を迎えて日が浅いと、その子にとって何が普通なのかがこちらに分かりません。分からないときほど、早く相談するほうが短く済みます。迎えた日からの記録と、推定の年齢を書いた紙を持っていくと役に立ちます。
残りの時間が長くないと分かっている相手を迎えると、こちらは急ぎたくなります。ただ、この1か月でいちばんはっきりしたのは、急いでも時間は伸びず、急いだ日のぶんだけ、その子と過ごせる時間の中身が減るということでした。老犬を迎える家でできるのは、範囲を広げることではなく、狭くても毎日同じ手が届く形を作ることです。保護犬を迎えるという選び方は、年齢が分かっていても取り下げなくていい選択肢だと思っています。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
