C09シーン別・暮らし

水が苦手な猫と暮らす人が新幹線・飛行機で困ること、その手当て

公開日 2026年6月20日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床で、開いたキャリーの中に落ち着いて座っているクリーム色の猫
移動中に使える手は2つしかありません。席を立てないという条件から、先に決まります。写真:Francesco Ungaro/Pexels

2時間5分のうち、席を立てたのは1回だけでした。通路側の席で、足元にキャリーを置き、隣には知らない人が座っています。家であれば、落ち着かない様子が続いたときに部屋を替えたり、こちらが離れたり、時間を置いたりできます。新幹線ではそのどれもできません。そのうえ、水が嫌いな猫と暮らしていると、濡らした布で拭いて仕切り直すという手も最初から選べません。ペットを連れた移動でいちばん困るのは、猫の側に何かが起きることではなく、起きたときに人が動けないことのほうでした。ここでは、席に座ったままできることを7つの問答に分けて書きます。7つのうち1つは、やらなくていいことです。

キャリーの覆いは、全部かけてしまっていいのでしょうか

答えから書きます。3方向だけ覆って、こちらの足元に向いた1面は開けておきます。全部を覆うと中の様子が見えなくなり、確かめるたびに布をめくることになります。新幹線の席では、そのめくる動作も、隣に人がいる状態でやることになります。1面だけ開けておくのは、猫のためというより、人が動かずに済むようにするためです。ペットを連れた移動では、人の側の動作を減らしておくと、そのぶん猫の側に手が回ります。

覆う3方向は、通路の側、隣の席の側、上です。この3つが、家では起きない入り方をしてくる面になります。通路は人が通り、隣は人の視線と声が来て、上からは車内の照明と音が落ちてきます。猫にとっての新幹線は、狭いことよりも、知らないものが四方から一度に入ってくることのほうが大きい場所です。入ってくる面を3つ塞ぐと、残るのは見慣れたこちらの足だけになります。

布は、家で使っているものを持っていってください。洗いたてのタオルを新しく用意すると、その布そのものが知らないにおいになります。水が嫌いな猫は、洗剤や柔軟剤のにおいが残った布に対しても反応することがあります。いちばんいいのは、ふだん寝ている場所に敷いてある布です。洗わずにそのまま持っていきます。ペットの荷物としてもかさばりません。

Note通気の面は塞がないでください

3方向を覆うといっても、キャリーの通気口まで布で塞いでしまうと、中に熱と湿気がこもります。覆いは、光と視線を切るためのもので、空気を止めるためのものではありません。布は側面に垂らすだけにして、面に張りつけないこと。新幹線の車内は季節によっては乾いていますので、水が嫌いな猫でも、飲み水の器を降りた先ですぐ出せるようにしておくと安心です。

新幹線に乗っているあいだ、猫に声をかけていいですか

かけて構いません。ただし、同じ言葉を、同じ高さの声で、こちらが決めた区切りだけ。これが条件です。声をかけること自体ではなく、かけ方が決まっていないことのほうが問題になります。人は席から動けないので、猫の側に何かが起きたときに使える手が、声と手のひらの2つしかありません。手が2つしかない状況で、片方を無計画に使ってしまうのは、もったいないというより危ういところがあります。

区切りは、猫の反応ではなくこちらの側で決めます。停車したときに一度、それだけです。鳴くたびに声をかける形にすると、鳴いたら人の声がするという流れができてしまうことがあります。新幹線の中でそれが起きると、こちらは席から動けないので、途中で止め方がありません。家なら部屋を出て仕切り直せますが、ペットと乗っている車内ではその選択肢がないままです。

移動中に使える手と、その使い方の決めごと
手どう使うか決めておくこと
声低い高さで、同じ短い言葉を1回停車のたびに1回だけ
手のひら布の上から当てて、動かさない10秒で離す
覆いの1面開けている面を、いったん閉じる1回だけ試す
キャリーを開ける使いません降りるまで開けません
おやつ使いません着いてからにします
水で濡らす使いません水が嫌いな猫には逆になります

手のひらについて補足します。布の上から当てるだけで、なでません。動かすと、猫の側からは「何かが上を通っている」という別の刺激になります。当てて、10秒たったら離す。これだけです。ペットの移動で人ができることは驚くほど少ないのですが、少ないぶん、決めておけば迷いません。新幹線の2時間で、こちらが判断しなければならない回数を減らすことが目的です。

鳴きやまないとき、席に座ったままできることはありますか

あります。ただし3つだけで、順番も決まっています。①開けていた1面を閉じる、②布の上から手のひらを当てる、③そのまま何もしない。この順で、それぞれ1回ずつです。3つ全部をやっても変わらなければ、そこから先は増やしません。増やせる手がないからではなく、増やすと猫の側に入ってくるものが増えるからです。

順番を①からにしているのには理由があります。鳴き始める場面は、たいてい外側で何かが動いたあとです。通路を人が通った、隣の人が立った、車内の放送が入った、停車して扉が開いた。入ってきた面を1つ閉じるのが、いちばん元に近いところへの手当てになります。声や手から始めると、入ってくるものが1つ増えるだけで終わることがあります。

ここで水が嫌いな猫という条件が効いてきます。落ち着かない様子を見たとき、濡らした布で顔や前脚を拭いて仕切り直す、という手を使う方は多いと思います。水が嫌いな猫には、その手が最初から使えません。しかも新幹線の席では、水そのものを扱うのも現実的ではありません。使える手が2つに絞られるというのは、水が嫌いだからではなく、水が嫌いなことと席を立てないことが重なった結果です。

人が席から動けない時間帯 新幹線でペットと移動する日を、人の側が動けるかどうかで区切りました。動けない時間帯にできることを、先に決めておくための図です。 時間はおおよその目安です。混み具合によって前後します 乗る前 人が自由に動ける 覆いと布の準備は、ここで全部終わらせます 発車〜10分 動けない・いちばん鳴く 扉と放送と人の動きが、まとめて入ります 走行中 動けない・落ち着きやすい 音が一定になり、入ってくるものが減ります 停車のたび 動けない・短く戻る 扉が開くたびに、外の音と空気が入ります 降りた直後 人が動ける ここで初めて、中を見て手を入れられます
動けない区間が長いほど、決めごとの数を減らします。

図のとおり、鳴きやすいのは発車から10分と、停車のたびです。走行中はむしろ落ち着くことが多く、これは音が一定になるためだと思います。3つの手は、この2つの区間のために取っておきます。走行中に先に使ってしまうと、停車のときに残っていません。ペットと新幹線に乗る日は、人の手を「使う」より「取っておく」ほうの計画で組んだほうが、最後まで持ちます。

隣の席の人には、何と言っておけばいいですか

座った直後に、一言だけです。「猫が入っています。鳴くことがあります」。これで終わりにしてください。謝らない、事情を説明しない、名前や年齢を言わない。10秒以内に終わる長さにします。新幹線でペットと移動する日に、人の側がいちばん消耗するのはここだと思いますが、短くするほど、こちらも相手も楽になります。

最初に言うのには理由があります。人は席から動けませんが、隣の人は、まだ動けます。発車前なら、席を替わることも、車内で別の場所へ移ることも選べます。走り出してから鳴き始めて、そこで初めて伝えると、相手は選べる状態を過ぎています。家では起きないことの1つが「他人が同じ空間に数時間いる」ことなので、その他人の側にも、選ぶ余地を先に渡しておきます。

持ち込みそのものの条件は、交通機関ごとに案内が出ています。ここではその中身には触れませんので、乗る前にご自身で確認してください。この記事で扱っているのは、条件を満たして乗ったあと、席に座ってからの話です。飛行機でも、座ってしまえば人が動けないという点は同じでした。動けない時間の長さが違うだけです。

降りてから最初にやることは、どれですか

キャリーを床に置いて、こちらが1分動かないことです。拭くことでも、中を確かめることでもありません。人は数時間動けなかったので、降りた直後はどうしても動きすぎます。荷物を持ち直し、改札を探し、地図を見て、電話をかける。その全部が、キャリーの中から見ると揺れとして届きます。ホームや改札の中ではなく、人の流れから外れた場所まで出てから、いったん置きます。

  1. 人の流れから外れた場所で、キャリーを床に置く

    ベンチの上や膝の上ではなく、床です。揺れが止まったことが、いちばん先に伝わります。1分だけ、こちらも動かずに立っています。新幹線を降りてすぐの数分が、その日の中でいちばん人が急いでいる時間帯です。

  2. 開けている1面から、中を見るだけ

    扉は開けません。見るのは、体の向きと、呼吸の速さと、口が開いているかどうかの3つ。この3つは布越しでは分からないので、面を1つ開けておいた意味がここで出ます。ペットの移動で、人がいちばん最初に受け取れる情報です。

  3. 宿や家に着いてから、水の器を先に出す

    飲まなくて構いません。置いておくことが目的です。移動のあいだ、水が嫌いな猫でも飲み水は減っていることがあります。器はいつも使っているものを持っていくと、見た目で分かります。出す場所は、人が通らない側の壁ぎわにします。

  4. 落ち着いてから、口の周りと前脚のつけ根だけ

    着いてすぐではありません。自分からキャリーを出て、部屋の中を一周してからです。猫用 mofuwa グルーミングウォーターを柔らかい布に含ませ、口の周りと前脚のつけ根を一往復させます。この容器は押し出して使う形で、噴射の音が出ません。壁の薄い宿や、夜遅くに着いた部屋では、その音がその日の最後の刺激になってしまいます。水が嫌いな猫は、移動の直後に濡らされると、その日ぜんぶが嫌な記憶としてまとまることがあります。先に布へ含ませてから当てる形にしておくと、移動の記憶と切り離せます。

順番を決めているのは、降りた直後の判断が鈍るからです。新幹線に2時間座っていたあとは、人の側も疲れています。その状態で「まず何をしよう」と考えると、たいてい人の用事のほうが先になります。4つに固定しておけば、考えずに動けます。ペットを連れた移動では、着いてからの30分をどう使うかで、その夜の落ち着き方が変わりました。

水が嫌いな猫の場合、やらなくていいのはどれですか

ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。やることを足すより、やらないと決めるほうが、席に座ったままの2時間には向いています。やらないと決めてあると、迷っている時間が消えます。人が動けない状況でいちばん消耗するのは、実際の作業ではなく、どうしようかと考え続けている時間のほうでした。

新幹線でペットと移動する日に、やらなくていいこと
やらない理由代わりに
移動中にキャリーを開ける席では人が受け止められません1面を開けて、見るだけにします
移動中に体を拭く布も手も、猫から見れば入ってくるものです着いてからにします
着いた日に洗う移動と洗うことが同じ日に重なります翌日以降に別で立てます
鳴くたびに声をかけるこちらが止められなくなります停車のたびに1回だけ
隣の人に繰り返し謝る最初の一言で足りています黙っていて構いません
乗る前日に新しいものを増やす変化が2つ重なりますいつもの布と器だけ持ちます

移動中に拭かない、という点だけ補足します。においが気になる場面はあります。ただ、水が嫌いな猫にとって、湿った布が近づいてくること自体が、家でも受け入れていない動作です。それを、逃げ場のないキャリーの中で、人が動けない席の上でやることになります。においに手を入れたいのなら、乗る前の朝、家でやっておくほうが確実です。当日の朝に、グルーミングウォーターを含ませた布で口の周りと前脚を一往復しておけば、新幹線の中で手を出す理由が1つ減ります。もともとこの容器は、スプレーの音を嫌がる猫がいるという声を受けて、中身を変えずに形だけ替えたものです。出発の朝は人のほうが慌てているので、音が出ないことはここでも効きます。まだ寝ている子を起こさずに済みます。

Pointやらないことを、乗る前に声に出して決めておく

車内で決めようとすると、たいてい決まりません。「今日は開けない、拭かない、謝らない」と、改札を通る前に一度言っておいてください。言葉にしてあると、鳴き声が続いたときにも、やれていないという気持ちが残りません。ペットと新幹線に乗る日にいちばん減らしたいのは、猫の側の負担と、人の側の後悔の両方です。

次にペットと新幹線へ乗るために、記録しておくことはありますか

3つだけです。鳴き始めた時刻、止まった時刻、そのとき何をしたか。これをその場でメモしておきます。スマートフォンのメモに「10:12鳴く/10:19止まる/面を閉じた」と打つだけで足ります。人は席から動けないので、この記録だけは席に座ったままできる数少ない作業になります。

3回ぶんの記録から見えてきたこと
鳴き始め止まるまでそのとき何をしたか
1回目発車の直後14分声をかけ続けた
1回目・停車時扉が開いた直後6分手のひらを当てた
2回目発車の直後9分面を閉じた
2回目・停車時扉が開いた直後4分面を閉じた
3回目発車の直後7分面を閉じて、10秒手を当てた
3回目・停車時鳴かなかった-何もしなかった

並べて分かったのは、鳴く場面が毎回同じだということでした。発車の直後と、扉が開いたときです。この2つ以外では、ほとんど鳴いていません。分かってしまえば、こちらの構え方が変わります。走行中は何もしないでよく、扉が開く前だけ手を用意しておけばいい。ペットと新幹線に乗る日の2時間が、ずっと気を張り続ける2時間ではなくなりました。

もう1つ、記録しておいてよかったのは、降りてから、自分でキャリーを出るまでにかかった時間です。1回目は40分、3回目は12分でした。これは慣れの話かもしれませんし、着いた先の部屋の違いかもしれません。断定はできませんが、次に乗るときの目安にはなります。水が嫌いな猫の場合、この時間が短いほど、そのあとのケアも短く済みました。

人が動けない時間帯から先に埋める|新幹線とペットの猫で最後に残る疑問

最後に、7つの答えを時間の順に並べ直します。並べる軸は、猫の側ではなく人が動けるかどうかにしました。動ける時間帯にやることと、動けない時間帯にやることを分けておくと、当日に迷いません。

乗る前から着いたあとまでを、人が動けるかどうかで並べる
いつ人はやること
前日動けるいつもの布と器を、洗わずに袋へ入れる
当日の朝動ける家でグルーミングウォーターを一往復。水で流す工程はありません
乗る直前動ける3方向を覆い、足元の1面だけ開ける
座った直後動ける隣の人に10秒の一言
発車〜10分動けない面を閉じる→手のひら→何もしない
走行中動けない何もしません。手を取っておきます
停車のたび動けない同じ3つを、1回ずつ
降りた直後動ける床に置いて1分。見るだけ
着いてから動ける水の器を出し、落ち着いてから2か所を拭く

この表に入らなかったものが、やらなくていいことです。移動中にキャリーを開けること、移動中に体を拭くこと、着いた日に洗うこと。価値がないから落とすのではなく、人が動けない時間帯に置き場所がないから落とす、という決め方をしています。水が嫌いな猫と暮らしていると、水を使う手が最初から1つ減っているぶん、残った手をどこに置くかがそのまま計画になります。

最後に残る疑問は、たいてい「移動で疲れたのか、別の理由があるのか」というところだと思います。目安として見ているのは、水を飲む量と、食べた量が、3日で移動前の幅に戻るかどうかです。戻るなら、移動と場所の変化のほうです。3日たっても食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、同じ場所をなめ続けている、口を開けた呼吸が続く、耳を振る回数が増えた、地肌が赤い。こうした変化があるときは、ケアの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。乗った日と、乗っていた時間と、鳴いた区間をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

新幹線でペットと移動する日に、猫の側で起きることは、たぶんどの家でもそれほど変わりません。違うのは、そのときに人が何を持っているかのほうです。席を立てない、水が使えない。この2つが重なると、残る手は声と手のひらと覆いの3つだけになります。3つしかないと分かってしまえば、当日に考えることはなくなります。水が嫌いな猫と暮らしていると、選べる手が少ないことを不利に感じますが、少ないほうが決めやすいという場面も確かにありました。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。