C01ブランド/開発ストーリー

毎月、給料の半分を父に渡した|会社勤めのまま研究を支えた

公開日 2021年12月26日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床に落ち着いて伏せている犬
研究の速さを決めていたのは、技術よりも毎月の入金のほうでした。写真:3194556/Pixabay

毎月の給料を受け取ると、その半分をそのまま父に渡していました。研究資金の出どころは、息子の給与明細でした。外から投資を受けず、借入もしていません。株式会社ワンテンスができるのは、そこから15年後の2019年です。この記事では、電解水の開発を支えた研究資金をどう配分していたのか、そして勤め先を辞めなかったことが、いまの1本に何を残したのかを書きます。

給料の半分という研究資金の、背景にあった約束

電解水の技術は、父の代にできたものです。前身の株式会社レドックスで研究が始まったのが1995年で、目的は医療の現場で使える水をつくることでした。犬や猫のことは、この時点のどこにも入っていません。息子のほうが家業に関わると決めたとき、装置と、水のつくり方の見当はすでに揃っていました。これから開発するものがない状態から始まっています。ワンテンスという社名がつくのは、ここから24年あとのことです。

足りていなかったのは、それを外に向けて説明できる材料のほうです。自分の肌に使って手ざわりが変わったと感じたのが家業に関わるきっかけでしたが、感じたことは材料になりません。学生時代に友人へ配ってみて返ってきたのも、水道水との違いが分からないという反応でした。つくれていることと、つくれたと言えることは、同じ場所にありません。

そこで父と決めたのが、エビデンスが揃うまで事業にしないという線です。そのとき交わしたのが「少なくとも10年」という約束でした。研究資金の話は、この順番のあとに出てきます。10年以上もたない形で資金を用意してしまえば、資金が尽きた時点でこの約束のほうを折ることになります。

だから、先に金額を決めてその範囲で研究の期間を切る、という組み方をしていません。研究の期間を先に置いて、それがもつように資金の出し方を選んでいます。給料の半分という配分が出てくるのは、いちばん最後です。

Note「10年」は目標ではなく下限として置いた数字です

10年で仕上げるという約束ではありません。少なくとも10年は見込んでおく、という下限のほうです。実際に会社の形になったのは15年後でした。約束が下限だったので、5年ぶん延びても約束を破ったことにはなっていません。研究資金の設計も、期限ではなく下限に合わせてあります。

勤めを辞めなかった理由|研究資金に期限をつくらない

研究資金をつくる道は、当時いくつか並んでいました。息子も研究の側に入る。外から投資を受ける。勤めを続けて毎月送る。選んだのは3つ目です。

研究資金の出し方と、それぞれで先に来るもの
出し方手に入るものこの形で先に来るもの
二人とも研究に入る研究の速さ生活費と装置の費用の出どころが、どちらもなくなる
外から投資を受けるまとまった額返す時期。研究の区切りより先に、その日付が来る
勤め先の給料を半分渡す毎月決まった額額の小ささ。速さでは他の道に勝てない

投資を受ける形をとらなかった理由は、金額ではなく期限のほうにあります。出してもらった資金には返す時期があり、返す時期が決まると、そこがエビデンスの締め切りになります。資金の締め切りは、そのまま研究の締め切りとして効いてきます。まだ揃っていないものを、揃ったことにして先に出す圧力が生まれます。

給料は額が小さいぶん、毎月決まって入ります。翌月も同じ額が入ると分かっているので、研究を止めずに続けられます。研究資金にとって効いたのは、額の大きさより、途切れないことでした。装置を動かす費用、試薬、外に出す試験の代金。どれも一度に大きく使うものではなく、毎月少しずつ必要になるものです。

勤めを辞めなかった理由も、ここに揃います。辞めれば給料が止まり、給料が止まれば研究資金も止まります。父が研究を受け持ち、のちにワンテンスを立ち上げる側が勤め先で経営を覚えるという分け方にしたのは、資金の出どころを研究の外側に置いておくためでもありました。研究をしている人が資金の心配もしている状態を、15年続けるのは難しいと考えていました。

毎月渡し続けた15年の経験から言えること

給料の半分という配分は、15年のあいだ動かしていません。残った半分で暮らすということなので、暮らしの側の水準は上げないまま止まっています。配分を毎年見直していたら、そのたびに研究の進みぐあいを言い訳の材料にしていたと思います。半分という数字を固定したのは、判断を毎月しないためでもありました。

20を超える大学と研究機関との研究が積み上がったのは、ワンテンスができるより前の、この15年のあいだです。分野は医学から歯学、農学、工学まで散らばっていて、一本の計画表に沿って進んだものではありません。散らばったまま積める形でいられたのは、資金の側に急ぐ理由がなかったからです。

経験として残ったことを1つだけ挙げるなら、お金の出どころが、書ける言葉の範囲をそのまま決めるということです。急いで回収しなければならない資金が入っていれば、その時点で言えること以上を言わなければならなくなります。研究資金を給料から出したというのは、言い方を大きくしなくて済む場所に自分を置いたということでした。

電解水のつくり方を説明できるようになったのも、この積み上がりのあとです。3室ダブルイン型の電解槽(特許5253483)は、槽を3つの部屋に分けて、電解質から出る不純物が水の側に残らないようにした構造です。2方向から水を入れることで効率を上げています。カソード側には還元水、アノード側には酸化水ができるという、装置の形と出てくる水の対応まで、番号と条件をつけて書けるようになりました。

そして2019年2月、株式会社ワンテンスができます。約束した10年の、1.5倍の時間が経っていました。

その研究資金の出し方が、ワンテンスの1本に残した変化

研究資金の出し方が、ワンテンスの製品の側に残したものは2つあります。1つは、売れ行きと中身を切り離しておけること。もう1つは、書く範囲を自分たちで決められることです。

中身を動かさずにいられるのは、開発にかかる費用を発売の前に払い終えているからです。ワンテンスは販売開始からしばらく、製品がほとんど売れない時期を通っています。それでも中身を薄くして値段を下げる、という動き方をしていません。売れない理由を中身の側に探さずにいられたのは、売れ行きから返済の予定が動く形になっていなかったからです。

mofuwa グルーミングスプレーは、その水がそのまま入っている1本です。犬や猫の体は毎日脂を出しています。前の日にきれいにしても、翌朝には同じところが汚れている。外へ出れば、そこに土やほこりも乗ります。それでも毎日シャンプーをするのは手間がかかりますし、サロンへ毎日通うこともできません。毎日きれいにしてあげたいと思っても、毎日やれる手段のほうが足りていません。そこを埋めるためのものです。

グルーミングスプレーを吹いた場所は、その子がそのまま舐めます。だから中身は電解水で、飲みものに使える水と同じ規格基準に照らして確かめられたものだけを入れています。量を数えながら使う必要がないのは、そのためです。梳かす前に吹いておけば、静電気が起きにくい状態のまま毛を通せます。シニアの子や、湯につかること自体が負担になる子は、洗う日と洗う日のあいだを長めにとっても手当てが途切れません。

研究資金の側で決めたことと、製品の側に残ったこと
研究資金の側で決めたこと製品の側に残ったこと
外から投資を入れず、返す期限をつくらなかったエビデンスが揃うまで売らないという線を、15年ぶん守りきれた
給料の半分という、毎月途切れない形にした分野の違う相手先と、順番を気にせず試験を積み重ねられた
額が小さくなることを受け入れた開発の費用を払い終えた状態で、発売の日を迎えられた
結論:研究資金に締め切りを置かなかった結論:書ける範囲を、売れ行きに合わせて広げる必要がなくなった

給料の半分という配分は、うちの子の毛のもつれとは何の関係もない話です。それでも書き残しておきたいのは、研究資金の出どころが、製品の説明に書ける範囲をそのまま決めていたからです。ワンテンスが15年かけて集めたのは、水そのものよりも、その水について書ける材料のほうでした。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。