C01ブランド/開発ストーリー

15年ぶんのエビデンスを、そのままは書けない

公開日 2023年10月29日|文=mofuwa編集部

明るい窓のそばで静かに座っている淡い色の犬
揃っていることと、そのまま書けることは別でした。写真:SLZ/Pexels

2019年に事業を始めた直後、電解水のエビデンスをそのまま公開できないと分かりました。父が15年かけて積んだ記録は手元にあります。大学との共同研究も、医院での長期の使用試験も、学会での発表もあります。それでも、集めた材料をそのまま並べることは、ペット用のケア用品を売る側にはできません。この記事では、何が揃っていて、どこから先を公開できないのかを書きます。

電解水のエビデンスを公開できないと分かった背景

株式会社ワンテンスが事業を始めたのは2019年2月です。それまでの15年、父は電解水の研究を続けていて、外に出せる記録を積むことを仕事にしていました。事業を始めるときに足りていないと思っていたのは、記録の量ではありません。むしろ、揃った記録をどう出すかの段になって、想定していなかった壁にぶつかりました。

ペット用のケア用品は雑貨です。人の医薬品や医薬部外品のように、効き目を審査して認める仕組みがありません。審査の仕組みがないということは、効き目を示す言い方そのものが使えないということでもあります。手元にある記録のうち、いちばん強い部分が、いちばん公開しにくい部分でした。

Noteこの壁は、記録の質の話ではありません

審査の仕組みがない区分で売っているので、どれだけ確かな記録があっても、効き目として書くことはできません。逆に言えば、記録が薄い製品でも同じ制約の中にいます。だから「書いていない」ことは「持っていない」ことの証明にも、その反対の証明にもなりません。

このときに決めたのが、公開の範囲を先に決めてから記事や説明を書くという順番です。書きたいことから始めると、毎回ぎりぎりの線を探すことになります。逆に、公開できるものの一覧を先につくれば、そこから外れたものは自動的に落ちます。この記事も、その一覧の中だけで書いています。

15年ぶんのエビデンスを並べ直したときの経験

まず、何があるのかを並べ直しました。電解水の研究が始まったのは1995年で、前身の株式会社レドックスでのことです。目的は医療の現場で使える水をつくることでした。そこから15年をかけて、研究の相手は20を超える大学・研究機関に広がっています。

公開できる出来事だけを並べた、電解水の15年 年と出来事は事実として書けます。そこで何がどれだけ良かったかという部分は、この表には入れていません。並べられるのは、いつ・誰と・どの分野でという骨格までです。 記事の日付より後の出来事は載せていません 1995 レドックスで電解水の研究が始まる 目的は医療の現場で使える水をつくること 1997 東京大学との共同研究が始まる 細菌やウィルス、細胞の再生医療の分野で 2002〜2003 創傷治癒世界会議と世界水フォーラム 研究の内容が学会で発表された年 2003 小児科の医院に製造システムが入る 以後20年以上、同じ水が使われ続けている 2019 ワンテンスが事業を始める 揃っているのに公開できないと分かった年 年と相手は公開できます。そこで測られた数値のほうが、公開できない側に残ります
この表に入っているのは、年と相手と分野だけです。結果の数値は入りません。

この15年でいちばん長い記録は、渡辺一彦小児科医院での使用試験です。年間1万人以上の化学物質過敏症・アレルギーの患者を診ている医院に、2003年から電解水の製造システムが入っています。20年以上、同じ水が同じ現場で使われ続けているという記録は、一度きりの試験では代わりになりません。使い続けたときに何が起きるのか、あるいは何も起きないのかが、その期間の長さでしか見えないからです。

並べ直して分かったのは、記録が2種類に分かれるということでした。経緯・相手・条件を書いた部分と、そこで測られた数値の部分です。前者は公開できます。後者のうち、人の体で測ったものは公開できません。同じ1つの研究の中に、公開できる部分とできない部分が混ざっていました。

同じ研究の中で、公開できる部分と公開しない部分
記録の中身公開の扱い
1997年に東京大学との共同研究が始まったという事実公開できる。年と相手と分野まで
その研究で人の体について測られた数値公開しない。製品の効き目として読まれる
創傷治癒の研究が、現場の気づきから派生したという流れ公開できる。研究の向きが変わった経緯として
電解槽を3室に分けた構造と、特許5253483という番号公開できる。製品のつくり方の説明として
試験条件と検査機関を添えた、物や環境への試験の結果公開できる。条件とセットにする限りで

数値を持っていても公開しないという考え方

公開しない側に置いた数値のうち、いちばん大きいのは人の医療の現場で測られたものです。これを出さない理由は、規制に触れるからというだけではありません。読む側が、製品の効き目と結びつけて読んでしまうからです。犬や猫のケア用品の記事に人の治療の数値が並べば、読んだ人はその数字を製品の効き目として受け取ります。

こちらが「これは製品の話ではありません」と書き添えても、その読み方は止まりません。数値のほうが注記より強いからです。だから注記を足すのではなく、数値そのものを置かないという処理にしています。公開できるものの一覧から外す、というのはこういう意味です。

同じ考え方で落としているのが、比較の言い方です。たとえば アルコールに匹敵する除菌力 という書き方は、試験条件とセットでなければ成立しません。一般的な化粧品より優れた浸透力 も、何と何をどう比べたかが抜けています。持っている数値は、精製水と比べたときの浸透が35倍という自社の試験値です。比べた相手と出どころを書けるほうだけを残します。

残したものの書き方は、条件を先に置く形になります。一般細菌は30秒、エンベロープを持つウィルスは60秒、ノンエンベロープのウィルスは15秒から10分という条件で検体を採り、いずれも生菌は検出されませんでした。検査は江東微生物研究所、日本食品分析センターなど外の機関に出しています。条件と機関名を外すと、同じ数値が公開できないものに変わります。ここは書き方の好みではなく、公開できるかどうかの線そのものです。

Caution試験の条件は、家で使う場面と同じではありません

上の秒数は、容器の中で条件を揃えて測った記録です。毛の根元や、部屋の布の上で同じことが起きるとは書けません。公開できるのは、測った条件の中で言えることまでです。ここを広げて読まれないように、条件を必ず一緒に置いています。

公開できる形に書き換えてから起きた変化

公開の範囲を決めたあと、書ける分量は明らかに減りました。15年ぶんの記録のうち、記事に出せるのは骨格と条件つきの数値だけです。それでも、読む側が出どころをたどれる形になりました。特許の番号、検査機関の名前、試験の秒数。どれも、読んだ人がこちらの手を離れて確かめられるものです。

もうひとつの変化は、製品の説明が「何をしているか」の側でできるようになったことです。効き目を書けないので、代わりに水の側で起きていることを書くしかありません。グルーミングスプレーに入っているのは高機能性電解還元水で、アルカリ側の水です。この水は油と乳化します。だから、余分な皮脂と、そこに乗った汚れが浮いて落ちます。体が必要としているぶんの皮脂まで持っていく設計にはなっていません。

つくり方の側も同じです。電解槽は、カソード室・中間室・アノード室の3つに分かれていて、あいだがイオン交換膜で仕切られています。真ん中の部屋に電解質を置き、両側へ通すのはイオンだけにしてあるので、取り出した水に電解質の残りが混ざりません。還元水はカソード側から、酸化水はアノード側から出てきます。この構造があるから、清涼飲料水の規格基準に照らして確かめることができます。

その基準で確かめられていることが、使う場面の側にも効いています。犬や猫は体から毎日脂を出しますし、散歩に出ればそこに土やほこりも乗ります。とはいえ、毎日湯を使うには人の側の手が足りませんし、サロンの予約も毎日は取れません。グルーミングスプレーが吹くだけの形になっているのは、その毎日を成り立たせるためです。吹いた場所はその子がそのまま舐めるので、量を加減しながら使う必要がありません。湯につかること自体が負担になる子なら、洗う日と洗う日のあいだが長くなっても手当てが続きます。

15年ぶんのエビデンスをそのまま公開できないという事実は、いまも変わっていません。公開できないものが減ったわけでもありません。変わったのは、公開できるものだけで製品を説明しきる形をつくったことです。書けないことが多いぶん、書いたことの出どころは全部たどれるようにしてあります。

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本記事は商品の情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。掲載している検証データは特定条件下での試験結果であり、すべての環境で同じ結果を保証するものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。