C01ブランド/開発ストーリー

父の会社と一つになった、2021年のこと

公開日 2024年6月9日|文=mofuwa編集部

明るくやわらかな光の入る淡い色の床で、灰色の猫と並んで静かに伏せている淡い金色の犬
会社の名前が変わっても、ボトルに入る水のつくり方は同じ装置から出ています。写真:Osman İçli/Pexels

グルーミングスプレーの裏面に刷ってある特許5253483は、2021年まではレドックスという別の会社の資産でした。レドックスは、創業者の父が1995年に立ち上げた会社です。2021年、ワンテンスはそのレドックスと経営を一つにし、特許を含む電解水の製造事業を引き受けました。引き継ぐという言葉はひと言で済みますが、実際に手元に来たものは、番号と装置と記録の3つに分かれていました。この記事では、レドックスの特許を引き継ぐときに何が動いて、何は動かせなかったのかを書きます。

1995年から確かめていた会社|レドックスが特許を持っていた背景

レドックスは1995年に始まった会社で、やっていたことは水の電気分解ひとつでした。当時の目的は医療の現場です。犬や猫のケア用品は、この時点では計画にも入っていません。売る商品を持たない会社だったので、時間の使い方はほとんど確かめる仕事に寄っていました。

レドックスからワンテンスへ、特許が動くまで 1995年のレドックス設立から、2019年のワンテンス設立、2021年の経営統合、その後の共同研究までを並べた年表 研究の相手先は20を超える大学・研究機関に及びます 1995年 レドックス設立 水の電気分解の研究が始まる 1997年 東京大学との共同研究 感染症対策と細胞の再生医療の領域へ 2019年 ワンテンス設立 研究と販売を、別の会社に置いたまま始める 2021年 経営を統合 特許5253483を含む製造事業を引き受ける 2023年 酪農学園大学との研究 感染症対策と動物再生医療。研究の側は続いている
番号が移ったのは2021年ですが、その前に26年ぶんの確かめる仕事が積まれています。

1997年に東京大学との共同研究が始まり、そこから枝が伸びます。細菌やウィルスへの対策、細胞の再生医療、そして創傷治癒。学会での発表も、2002年9月の創傷治癒世界会議、2003年3月の世界水フォーラムと残っています。2003年にはアレルギー科の小児科医院に電解水の製造システムが入り、そこでの検証は20年を超えて続いてきました。レドックスという会社の資産は、装置と、その装置で何が起きたかを書いた紙の束だったということです。

ワンテンスができたのは2019年2月です。mofuwa の事業はここから始まりますが、レドックスはそのまま残しました。特許5253483もレドックスの側にあり、ワンテンスは技術を使わせてもらう立場でした。この時期のワンテンスは、番号を製品の裏に刷ることはできても、その番号について自分の名前で答える立場ではありません。

Note父の会社、という言い方について

レドックスを父の会社と書いていますが、家業を継ぐという話とは少し違います。1995年から続いていたのは事業ではなく研究のほうで、売り上げのある会社を受け取ったわけではありません。引き継ぐ対象が商品ではなく確かめ方だった、という点が、この統合のいちばん変わっているところだと思います。

文面を読めても水は出てこない|レドックスの特許を引き継ぐ形になった理由

特許5253483の文面に書かれているのは、装置の形です。電解槽をカソード室、中間室、アノード室の3つに分け、中間室との境目にイオンだけを通す膜を置く。水は2方向から入れる。この形が新しいものとして登録されています。電解質を中間室に置けるので、電解質からくる不純物が、出てくる水の側に混ざりません。飲みものに当てる清涼飲料水の規格基準を持ち出して測れるのは、この部屋の分け方があるからです。

ただ、文面は誰でも読めます。特許は公開されるものなので、構造を知ること自体は誰にでもできます。それでも同じ水が出てくるとは言えません。同じ形の槽を組んでも、どの電解質をどれだけ入れるか、電気をどれだけ通せているか、水の流れをどう当てるかで、出てくるものの性質が変わります。図面が引き継げても、その図面から毎回同じ水が出ている状態は引き継げません。

特許の文面にあるものと、文面の外にあるもの
文面に書いてあること文面の外にあること
3室に分ける構造と膜の置き方電解質の選び方と入れる量
2方向から水を入れるという考え水流をどう当てると効率が落ちないか
還元水と酸化水が別の室に出ることどちらをどの製品の原料水にするか
登録されたのは装置の形だということその水を外部の検査機関でどう測ってきたか

文面の外にあるものの中で、量がいちばん多いのは試験の記録でした。どの水を、何を相手に、何秒当てて、どこの検査機関で測ったのか。一般細菌なら30秒、エンベロープを持つウィルスなら60秒というように、試験条件は相手ごとに分かれています。結果はいずれも生菌が検出されなかったという書き方で、測ったのは江東微生物研究所や日本食品分析センターといった外部の機関です。秒数と相手と測った先のどれかを落とすと、この種の結果は意味が変わります。

浸透のほうも同じです。精製水と比べて35倍という数字は自社で測った検証値で、外部の検査機関が出したものとは分けて書く必要があります。どちらの数字も、水を相手にした条件の中で出たものです。犬や猫の体に何が起きるかを示すものではありません。こうした線の引き方まで含めて手元に来るので、レドックスの特許を引き継ぐときは、使用の許可をもらう形ではなく、事業ごと引き受ける形になりました。

引き継げたもの、引き継げなかったもの|レドックスの特許を引き継ぐときの考え方

2021年に動いたものを並べると、特許5253483の権利、電解水をつくる装置、神奈川県川崎市の工場、そして1995年からの試験の記録です。ここまでは書類の手続きで移ります。移らなかったのは、その装置を26年回してきた手のほうです。

だから父は、統合のあとも技術顧問という立場で関わっています。会社としては一つになりましたが、水をつくる側の判断は、そのまま同じ人のところに置かれました。研究のほうも止まっていません。2023年には酪農学園大学との研究が始まり、感染症への対策や動物の再生医療といった領域に広がっています。引き継ぐというより、走っている列車に別の車両をつないだ、というほうが実際に近いと思います。

Point順番のほうを引き継いだ

レドックスから受け取った考え方をひとつだけ挙げるなら、確かめ終わってから出す、という順番です。事業を始める前に、エビデンスが揃うまで売らないという約束を父と交わしていました。統合で研究と販売が同じ会社の中に並んだので、この順番はいまのほうが崩れやすくなっています。順番を明文で残しているのは、そのためです。

権利が増えた分だけ、続ける仕事も増えました。試験条件を更新し続ける仕事、規格基準に合っているかを製造のたびに確かめる仕事、検査機関に出し直す仕事。どれもレドックスの側でやっていたものです。特許を引き継ぐというのは、番号の持ち主が変わることよりも、こういう終わりのない仕事を引き受けることでした。

毎日吹く1本に出ていること|レドックスの特許を引き受けたあとの変化

飼い主の側から見ると、2021年に変わったものはほとんどありません。ボトルの中身も、番号も、つくっている工場も同じです。変わったのは、その中身について聞かれたときに誰が答えるか、という一点だけです。特許を引き継ぐというのは、この答える立場を引き継ぐことでもありました。いまは、グルーミングスプレーの裏に刷られた番号を、ワンテンスが自分の名前で説明します。

この1本が水だけでできているのは、毎日手を入れる前提から逆算した結果です。犬も猫も皮脂は毎日上がってきますし、外を歩けばその上に外の汚れが乗ります。それを湯で流せる日は、多い家でも週に1回、月に数回という家もあります。お湯に入ること自体が向かない子もいます。間の日をどう埋めるかを先に決めると、中身に足せるものは一気に減ります。残った選択肢が水だけになっても成り立ったのは、部屋を3つに分けた装置があったからです。

犬と猫は、自分の体についたものを舐めます。だから量を気にしながら吹くようなものにはできません。清涼飲料水に当てる規格基準で測れる中身にしておけば、根元まで届くまでたっぷり吹けます。ブラッシングの前に吹いておくと、静電気の起きにくい状態で梳かせます。グルーミングスプレーが毎日の道具になれるかどうかは、こういう地味な条件で決まっていました。

1995年に人の医療のために始まった研究が、犬と猫の毎日に回ってくるまでに26年かかりました。2021年の統合は、その経路をようやく1本の会社の中でつないだ手続きです。番号の話は飼い主の生活とは遠いところにありますが、毎日ためらわずに吹ける1本になっているのは、その遠いところで26年ぶん確かめてきた誰かがいたからです。

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本記事は商品の情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。掲載している検証データは特定条件下での試験結果であり、すべての環境で同じ結果を保証するものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。