C01ブランド/開発ストーリー
専門用語ではなく、飼い主の言葉で書くと決めた
mofuwaの説明文には、専門用語がほとんど出てきません。技術の話をする会社なので、書こうと思えばいくらでも書けます。それでも使わないのは、専門用語は、書く側にとって楽な逃げ道になるからでした。この記事では、言葉の決め方について書きます。
難しく書くほうが、実は楽です
最初に、身も蓋もないことを書きます。専門用語で書くほうが、書く側にとっては簡単です。
「高機能性電解還元水による皮脂の選択的乳化」と書けば、それで文が終わります。ところが「油汚れを、こすらずに動かせる状態にする」と書こうとすると、自分が本当に理解しているかどうかが試されます。
やさしく書き直そうとすると、途中で必ず手が止まります。「動かせる状態」とは何が動いているのか。こすらずに済むのはなぜか。専門用語のなかにまとめて放り込んでいた部分が、ひとつずつ質問として返ってくるからです。1文を書き換えるのに資料を読み直すことも珍しくありません。
専門用語は、意味を確かめずに並べても文章の形になります。読む人には分からず、書く人も分かっていないという状態が成立してしまうのが、いちばん危ないところです。
実際に、こう言い換えています
mofuwaで使っている言い換えを、いくつか出します。
| 専門用語 | 使っている言い方 |
|---|---|
| 選択的乳化 | 落としたい油だけを動かして、残したい成分は残す |
| 電解効率 | 通した水のうち、どれだけが実際に電気分解されたか |
| イオン交換膜 | +のイオンだけ、−のイオンだけを通す仕切り |
| 浸透力35倍 | 毛の奥まで届きやすい(※精製水と比べた試験値です) |
| pH緩衝性 | 他のものと混ざっても、性質が変わりにくい |
| 脂漏症 | 背中や体がベタベタして、においも出やすくなっている状態 |
| 流涙症 | 涙が多く、目の下の毛が湿ったまま色づいてしまう状態 |
右の列は、長くなります。それは避けられません。短くしたいなら専門用語、伝えたいなら長い説明という関係があり、どちらを取るかという話です。mofuwaの記事は読む速さを競うものではないので、迷ったら長いほうを選んでいます。
言い換えを作るときのコツがひとつあります。その言葉を使わずに説明してみて、詰まったところが理解の穴です。詰まったら調べ直す。この作業を挟むと、記事の正確さが上がります。手間はかかりますが、書いた本人がいちばん学べる方法でもあります。言い換えが一度で決まることはほとんどなく、たいてい三度か四度書き直します。最初の案は説明が足りず、次の案は長すぎる。ちょうどよいところに落ちるまで削るので、短い一文ほど時間がかかっています。
いちばん書き直したのは、mofuwa グルーミングスプレーの説明文でした。最初の原稿は「高機能性電解還元水による皮脂の選択的乳化」から始まっていて、誰のための道具なのかが1行も書かれていませんでした。飼い主の言葉に置き直すと、こうなります。毎日散歩に行く子ほど、毎日きれいにしてあげたくなる。でもペットは体から脂を出すので、昨日きれいにしても今日また汚れる。だから、毎日やれる形がいる。言い換えたほうが長いのに、こちらでないと、何を解こうとした商品なのかが伝わりませんでした。
言い換えてはいけない場面もある
ただし、何でもやわらかくすればよいわけではありません。次の3つは、そのまま書きます。
-
試験の条件
「30秒で生菌検出されず」の30秒を「すぐに」と言い換えると、意味が変わります。「すぐに」には条件がないので、どんな場面にも当てはまるように読めてしまうからです。数字と条件は、読みにくくてもそのままにします。
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検査機関と特許の番号
江東微生物研究所、特許5253483。固有名詞は、読む人が確かめるための手がかりです。省略すると検証できなくなります。「第三者機関で試験済み」とだけ書けば文は短くなりますが、その一行では誰も追いかけられません。
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できないこと・分からないこと
「長期のデータはありません」を「これから充実させていきます」と書き換えると、印象が変わってしまいます。ここはむしろ、そっけなく書きます。
読みやすさのために正確さを削ると、それは言い換えではなく改ざんになります。境目はここです。
飼い主は「症状名」で検索していない
もうひとつ、実際的な理由があります。困っている人は、専門用語で検索していません。
- 「脂漏症」ではなく「犬 背中 ベタベタ」
- 「流涙症」ではなく「涙やけ 茶色 取れない」
- 「静電気による毛玉形成」ではなく「冬 毛が絡まる」
- 「口腔内由来の口臭」ではなく「犬 口 くさい 急に」
検索する言葉は、症状の名前ではなく見えている様子です。だから記事の見出しも、その言葉に合わせています。専門用語は、記事の中で補足として一度だけ出します。名前を先に知っている人は、そもそも困っていないことが多い。名前が分からないまま検索している人のほうが、記事を必要としています。
商品の説明も同じです。「静電気による毛玉形成の抑制」と書いても、冬に毛が絡まって困っている人の言葉とは重なりません。mofuwa グルーミングスプレーの説明では、ブラッシングの前にひと吹きしておくと毛が立たないぶん指が奥まで入る、という言い方をしています。使う場面と、そのときに手に返ってくる感触で書く。専門用語を先に置くと、この2つが消えます。
先に名前を出すと、読む人は自分の話だと気づけません。見えている様子から入り、そのあとで名前を出す。この順番にすると、必要な人に届きやすくなります。
言葉づかいは、態度の表れでもある
最後に、少し違う角度から書きます。
専門用語をたくさん並べると、詳しそうに見えます。詳しそうに見えると、信用されやすくなります。この効果を目的に使うことが、いちばん避けたいことでした。
犬と猫のケア用品は、効き目が審査されない世界です。だからこそ、難しそうな言葉で読む人を黙らせないことが、書き手の側の作法だと考えています。分からない言葉が並んでいると、読む人は「自分が知らないだけかもしれない」と思って質問をのみこみます。その沈黙は、書いた側にとって都合がよすぎます。
分かる言葉で書けば、間違っているときに間違っていると言ってもらえます。それが、いちばんありがたいことです。
この方針には、はっきりした弱点もあります。言葉がやわらかいぶん、内容まで薄く見えてしまうことです。技術の話をしているのに、そう読んでもらえないことがあります。
そのため記事の中では、やさしい説明のあとに必ず、条件つきの数字と検査機関名を置くようにしています。入口はやさしく、根拠は硬く。この2層構造にすると、詳しく知りたい方にも、そうでない方にも同じ記事で応えられます。
2,000本を超える記事を書き続けるにあたって、この決めごとがいちばん役に立っています。文体で迷わなくなるからです。書き出しをどうするか、どこまで説明するか、どの語を残すか。判断の材料が「飼い主が実際に使う言葉かどうか」の一点に絞られるので、迷う時間がほとんどなくなりました。長く続けるための決めごとは、格好よさより、迷わなくなることのほうが大事だと思っています。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- mofuwaのコラムはなぜ専門用語が少ないのですか?
- 専門用語は書く側にとって楽な逃げ道になるためです。やさしい言葉に言い換えようとすると、自分が本当に理解しているかどうかが試されます。読む人にも書く人にも分かっていない状態を避けたいと考えています。
- 数字や検査機関名は言い換えないのですか?
- はい。試験の条件、検査機関名、特許番号、そして「分からない」という記述は、そのまま書きます。読みやすさのために正確さを削ると、言い換えではなく改ざんになってしまいます。
- 記事の見出しが症状名でないのはなぜですか?
- 困っている飼い主は、症状名ではなく見えている様子で検索するためです。「脂漏症」より「犬 背中 ベタベタ」のほうが実際に使われる言葉です。見えている様子から入り、そのあとで名前を出す順番にしています。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
